イカせ屋
二次元世界の調教師:作
■ 7
「マサキチさん!
起きて下さい、マサキチさーん!」
どんどんと遠慮のないノックと、そんな俺の名を呼ぶ声でハッと目覚めると、山田組事務所内の仮眠室ですっかり眠りこけてしまっていた。
どうやら俺はサヨさんの最後の調教で中出し射精に疲れ果て、昼飯も食わずここで意識を失っていたようだ。
「何でえ、うるせーな!」
寝起きで不機嫌な俺が中から開けてやると、息せき切ってユウイチが入って来た。
「俺に何か用か?」
「はい!
ぜひともマサキチさんに助けて頂きたい事がありまして……」
俺は「イカせ屋」だ。仕事の性質上、そんなに一刻を争うような急用があるはずはないのだが、何をわざわざユウイチは俺を起こしにやって来たのだろう。
「女の調教を手伝って頂きたいんですが。」
単刀直入にそう切り出して来たユウイチを俺はいぶかしんだ。それは確かに「イカせ屋」の仕事だが、今日は朝っぱらからサヨさんの調教と言う一仕事をこなした所だ。これ以上仕事があるとは聞いていない。
そうそうひっきりなしに次々と調教する女が現れるものではないし、飛び込みにしても俺のイチモツは今日はもう使えねえ。ユウイチもそれはわかっているはずなのだが。
「いや、それが……」
と言う言葉で始まったユウイチの話は、始め俺にとってあまり興味をそそられるものではなかった。
ユウイチはサヨさんにさらに3発も精を搾り取られたが、その後昼食の弁当を買いに出掛けて、コンビニの駐車場で1人で座っていた女をナンパして連れ帰ったのだと言う。全く元気がいいというか、見境がないと言うか……
しかし良く聞いてみると声を掛けて来たのは女の方で、いわゆる「逆ナン」されたと言うのだ。
「で、その女をここに連れ込んだわけだな。」
「いえ、それが、どちらかと言えば勝手に付いて来たという感じでして……」
よくわからないが、積極的な女の子らしい。が、それはユウイチのプライベートな話だ。ワケありの女に因果を含めて性調教するのとはわけが違うぞ。
「この女、どうやら家出娘らしくて、俺に今晩泊めてくれないかと言うのです。」
「そりゃオメーの家に泊めてやりゃいいだろう。
相手がその気なら遠慮はいらねえ、やっちまいな。」
女とヤリたくてヤリたくてしようのないユウイチには願ってもない話ではないか。ユウイチは安アパートを借りて組の近所に住んでいるが、そこに泊めて楽しんだらいい。
一見優男だが、猿みたいに女とヤルのが生き甲斐の男に声を掛けてしまったその娘は哀れだが、ガキじゃあるまい。男の家に泊めてもらえばただじゃすまない事くらい覚悟しているはずだ。
「いえ、まだ陽も高いし、弁当買って帰る所でしたから、とりあえずここへ連れて来たんです。
金もなくて腹を空かせてると言うんで、一緒に弁当を買ってやったら喜んで付いて来ちゃいまして。」
「そりゃやっぱ勝手に付いて来たんじゃねえよ。
オメエが連れ込んだのと同じじゃねえか!」
どうもユウイチは頭のネジが1本飛んでいるような所がある。弁当を買ってやるからとたぶらかして、暴力団の事務所に家出娘を連れ込むなんて、やってる事は誘拐犯と同じだ。
「そしたらその女を連れてる所をケンジ親分に見られちまいまして。」
「それがどうした?」
どうも話が見えない。
「女を部屋に上げて弁当を食わせている間に、親分に呼ばれまして、家出娘らしいと話すと、じゃあすぐに調教して俺に抱かせろ、と言われるんです。」
「ケンジが?
それは又急な話だな……」
胡散臭い。ケンジは無類の女好きだが、それなりの分別もあり、何より仁義を重んじる人間だ。ユウイチのような三下が連れ込んだ、よく正体のわからない女にいきなり手を出すような軽々な行動をするような男ではないはずだが。
俺が信じられない、と言った顔をすると、ユウイチは弁解するかのように言った。
「実はこの女、スッゲエ美形なんです。
親分さんもそこを見込まれたのだと思います。
この女、金になる、とおっしゃいまして。」
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