下着泥棒
二次元世界の調教師:作
■ 2
高三の私より高二の妹の方が頼りにされるのも情けないが、仕方ないと私は思う。私達のパパは大きな病院の院長先生。男の子がいないので、長女の私は小さい頃から将来立派な医者をおムコさんにもらって跡取りとする事を義務付けられてるのだ。
そのために医者は無理にしてもせめて薬剤師の免許を取れと言われ、高校も進学校に進んで勉学に明け暮れる毎日である。家のお手伝いより、とにかく勉強。そう育てられて来た。
対照的に次女の沙織は放任されて、私の目からはずいぶんとお気楽に高校生活をエンジョイしてるようだ。男女ともに友達付き合いも活発で、最近はバンドに参加して男の子達の中で1人女性ボーカルなんだそうだ。
でも私達のきょうだい仲はとても良い。お互いに正反対で、比べられたり争う所がないからだと思う。外見もママに似て色白で背が高く、自分で言うのも何だが美人タイプの私に対して、沙織はパパに似て色が浅黒くて背が低く、ずいぶん幼い感じの子だ。
こうして夏休みに入った始めの、親のいない私と妹の沙織だけの3日間が始まった。沙織は朝からウキウキしてたけど、私は1日中予備校の夏期講習だ。
「お姉ちゃん、頑張って来てね。
アタシ、夜腕によりを掛けてお姉ちゃんの好きな物作ったげるから。」
沙織はバンド仲間と練習するんだとか言ってた。 あ〜あ。アタシは正直気が重かったけど、沙織の言葉が楽しみで、今日ばかりはコイツに感謝する気持ちになった。彼女は本当に料理が上手だし、私のために腕によりをかけて作ってくれると言う気持ちが嬉しかったのだ。
ところがその夜夏期講習を終え疲れて帰って来ると、とんでもない事になっていた。たぶんバンドのメンバーなのだろう。沙織が男の子を2人連れ込んでたのだ。
「こんばんわ。」
「おじゃましてます。」
帰って来た私にすぐそう挨拶して来た男の子達は、ごく普通っぽい感じで悪い印象ではなかったが、私は嫌な胸騒ぎがして、バンドのメンバーだと紹介して来た沙織に、もう夜だし帰ってもらうようにと言った。
が沙織はそんな気はさらさらないようだった。
「え〜っ、お姉ちゃんが帰って来たら一緒にパーティーのつもりだったのにー。」
と言い、そのために準備して来たのであろう4人前の料理やらケーキやらをテーブルに並べ始めたのだ。そして男の子達はこんな話を沙織に仕掛けた。
「ねえ、お姉さんは何て名前?」
「かなえ。
香りに植物の苗って書くの。」
「沙織ちゃんの言ってた通りだ、すごい美人……」
「でしょ、アタシと大違いなんだから。」
ずいぶん露骨だけど、ホメられて悪い気はしなかった。更に沙織が、私が難関大学をめざして受験勉強してる事までしゃべってしまうと、ますます男の子達は感心した様子だ。
私が着てたセーラー服がこの子達の高校よりずっと偏差値が上の進学校のものでもあるし、スゲー、尊敬します、などと言われてはむげに帰らせるのもはばかられてしまった。
「お姉ちゃん、今日だけだから。
たまには息抜き、いいでしょ?」
結局私は沙織に押し切られてしまった。男の子達は話してみても感じの良い子達で、人見知りの私も他愛のない話で意外と簡単にうち解ける事が出来た。それに沙織が腕によりを掛けた料理は絶品だし、連日の受験勉強に疲れていた私は、つい気を緩めてしまったのだった。
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