ハルナさんのご乱心
二次元世界の調教師:作

■ 3

「宇宙人さんはね、グニャグニャの触手みたいな手足で立ってるんだよ」
「触手だって!?」
「うん、触手だよ。とっても器用なの……」

――ゲーッ!

 一旦興奮が治まっていた僕は、ハルナさんがなぜだか真っ赤になって羞ずかしそうに「触手」について語るのを聞き、再びムラムラと込み上げて来るものを感じていた。

「触手が器用って……」
「ヤダ。羞ずかしい……」

 ハルナさんの色白の頬がポッと染まってメチャクチャに色っぽい。僕はあこがれの彼女のこんな姿を見せられて、マジで血管が切れそうなくらい興奮してしまった。何を隠そう、僕はいわゆる「オタク」で、カワイコちゃんが「触手」責めにあってるイラストだの小説だのはいつものズリネタなのだ。ハルナさんが触手にまとわりつかれてアヘアヘ悶えてるアブない想像で、シコシコしてしまったことも何度かある。

――まさか、ハルナさんも……

 僕と同じように「触手」責め願望を持ってる女の子なんだろうか。いくら何でも都合良過ぎる想像だが、目の前で紅生姜みたいに真っ赤になったハルナさんを見てると、どうしても彼女がタコ型宇宙人の触手になぶられている姿が頭に浮かんでしまう。そしてハルナさんが、僕の願望をそのまま形にしたような言葉を口にするに至って、僕の理性は完全に崩壊した。

「それでね、宇宙人さんの触手で、体中をイジられて……」

 そんな言葉を、口を利くのもはばかられたあこがれのカワイコちゃんが話しているなんて。あり得ない。これは夢に違いない。それにしては、ズキズキと痛みさえ覚える股間の強烈な張り切りぶりがやけに生々しい。この分では小学校の頃以来の「夢精」をやらかしてしまうかも知れないな……などと思っていると、ハルナさんがさらにとんでもないことを言い出したので、僕はマジでぶっ倒れそうになった。

「私、とてもイヤらしい女の子に改造されちゃったの。吉田君、お願い、私とえっちしてくれない?」

――ヒョエ〜ッッ!! いきなり、そっちですか……

 密かに期待していた、ハルナさんにコクられるのでは、と言う予想をはるかに上回る破壊力満点の告白だ。僕は、夢なら覚めないでくれ、と言う古典的なセリフが頭に浮かんでいた。

「私羞ずかしいんだけど、男の子とえっちしたくてたまらないの。アソコが疼いて、気が狂いそうなのよ……」

 ハルナさんは、そんなエロ小説みたいなあり得ない言葉を口走りながら、スックと立ち上がった。と、次の瞬間僕は彼女に押し倒されていた。

「吉田君っ!」

 情けないけど完全に受け身となり、なす術もなく仰向けに押し倒された僕の上に馬乗りになったハルナさんは、ぶちゅ〜っと唇を合わせて来た。うう、これでは男と女がまるきり逆ではないか。だが、僕はウットリと目を閉じ、彼女さんが差し入れて来た舌を受け入れると舌と舌を絡め合わせて、ハルナさんにすっかり身を任せてしまっていた。

「女の子とえっちするの、初めてでしょ?」
「え!? う、うん……」

 唇を外したハルナさんがニッコリ笑ってそんなことを聞いて来た。すっかり彼女の迫力に圧倒されてた僕は、素直に白状するよりない気分に陥っていた。

「良かった。私も初めてなんだ、男の子とえっちするの……」

 うう。何てオイシイ展開なんだ。「ご乱心」しているとしか思えないハルナさんだったが、僕は彼女もバージンに違いないと勝手に思ってたのだ。いや僕だけではない。こんな絵に描いたような美少女だけに彼女のファンはたくさんいて、男連中の間ではよくあることないこと噂されてるのだ。校内に彼氏はいないようだけど、大学生の彼氏がいるらしい、とか、実はレズらしい、とか。彼女にコクって撃沈したやつが何人もいて、そんな根も歯もない噂を流してるのだ。そしてそういう噂話の時皆の意見が決まって一致するのは、ハルナさんは絶対に処女だ、というものだ。彼女は男ならどうしてもそう思いたくなるような、清純そのものの美少女なわけだ。

 そんな時僕は黙って聞き耳を立てるだけで、決して彼女に対する思いを口にすることはない。ただ校内に彼氏はおらず、バージンに違いない、という勝手な噂を信じ、密かに僕にもチャンスがあるかも、なんてあり得ない期待を抱いていただけなのだ。まるで初めから宝くじを買いもせず、当たることを期待してるようなものだ。そんなチキンな僕に幸運などめぐって来ないことも良くわかっていた。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊