狂った果実
二次元世界の調教師:作

■ 5

 高校に入学して5月の連休明けくらいから、俺たちのいじめは始まっていた。慣れない人間関係や進学校のプレッシャーで、皆いわゆる「5月病」に掛かろうとしていた頃だ。そんな時、成績は良いが人付き合いが出来ず、おまけに気弱で何をされても無抵抗な翔太は、俺たちのストレスのはけ口として絶好の獲物だったのだ。何度でも言おう。実際に手を下したのは今床に転がされている俺たち数名のいじめグループだが、無関心を装いシカトを決め込んでいた連中だって、無意識に翔太をスケープゴートにしていじめを楽しんでいたに違いないのだ。だから全員同罪だ。

 それから夏休みを挟んで今は9月。休みの間も俺たちは時々翔太を呼び出して「制裁」と言う名のストレス発散に興じていたのだから、こいつが憎悪を膨らませて、俺たち、いやこの腐ったクラス全体に復讐を企てるには十分な時間があったのだ。

 そして思春期の俺たちの「制裁」は暴力的なものよりも、性的な辱めが中心だった。その過程で文江の進学校の女子高生とは思えないえっちな本性に驚かされ、さらには隣ですすり泣いている香奈子まで醜悪な性格の悪さを見せて、俺は密かに女性不信に陥っていたところだ。

――や、ヤバイ……一体、何を考えてるんだ、俺……

 そこまで考えた時、両隣でシクシクと泣きじゃくっている美女たちの声に刺激を受け、ついつい横目でそれぞれの魅力的な全裸をチラ見してしまっていた俺は、不謹慎な股間の反応を覚え困ってしまった。これでは恐らく性的な復讐を考えているであろう翔太の「制裁」の、格好の標的にされてしまう。だが、一度ムクムクと頭をもたげ始めた肉塊は、極限状況の中で異様な興奮に襲われていた俺にはもうどうにも鎮めることは出来なかった。

――香奈子……オメエが一番悪いんだぜ

 俺は自分のことは棚に上げ、隣で全裸の体を人の字に拘束されたクラス一のカワイコちゃんに恨み言を述べたい気持ちで視線をやった。翔太に気のありそうな素振りで勘違いさせラブレターを書かせた挙げ句、掌を返したようにいじめ側に回ってやつの純情を土足で踏みにじったのだ。しかもそのいじめは、下半身を露出させて男性器をなぶるという、男のプライドを粉々に打ち砕く残酷なもので、想い人に裏切られた翔太が地獄の底に突き落とされたような気分を味わったであろうことは想像するにあまりある。

――意外とデカいな、香奈子……

 かく言う俺も、クラスのアイドル的存在だった彼女を狙っていたクチだが、あの豹変ぶりを見せ付けられてはとても付き合おうなどと言う気は起こらない。だが、そうであるが故に今極限状態で異常な興奮に陥った俺は、ヤケになった気分で香奈子の惨めに拘束された白い裸身を堂々と見てやっていた。もしも彼女の本性を知る前ならば、翔太の狂気の犠牲者になった彼女の裸を見るなんてかわいそうなことは出来なかっただろう。だが、こうなれば香奈子も同じ穴のムジナだ。こんな冷酷な女に何を遠慮することがある?

 こうして倒錯した心理状態に陥った俺は、隣で泣きじゃくるばかりの香奈子の裸を見つめ、思ったより豊かな胸の膨らみや先端でツンと形良く尖った乳首の眺めに、どうしようもなく興奮した。彼女が身も世もあらずと言う感じで惨めに嗚咽する姿が不謹慎にも俺の性欲を刺激してやまず、ペニスがどんどん固く大きくそそり勃っていった。

 警察の説得は根気よく長々と続けられて、時間の経過を知る術のない俺は気が遠くなりそうだった。だが翔太の意志も頑強で、まるで折れるような気配はない。下半身の暴走が高まって、痛いほどの勃起になった俺は、今度は反対側ですすり上げているアッコTの方が気になって目線を移していた。

――先生……

 先生は最も哀れで同情すべき存在だった。察するに、翔太は一縷の望みを持って、頼りない担任の先生にいじめられていることを告発したのではないか。それが、先生のいじめに関する問い掛けに誰1人正直に告白しないと言う、あのていたらくだ。先生が「いじめはない」と言った時の、翔太の落胆ぶりはいかばかりのものだったろう。正に神も仏もあるものかと言う心境になったに違いない。そしてついに堪忍袋の緒が切れた翔太は、この恐怖の報復を実行に移したのだ。

――先生は良くやったぜ……

 この春俺たちと一緒に教師になったばかりの新米なのだ。彼女なりに一生懸命努力して、それでもクラスのいじめを見抜けなかったことを責めるのは酷ではないか。その上、翔太の銃弾に晒される危険を冒してまで説得しようと試みた、あの勇気に俺は素直に頭が下がる思いだ。だが暴走する翔太を抑えることは誰にも出来ないし、やつが先生に制裁を加えるのも無理からぬことではあるのだ。

――く、くそっ! 俺ってやつは……

 歳を重ねるに連れて性欲の高まる女性と違い、男性はハイティーンの頃に性欲のピークを迎えると、聞いたことがある。今こんな状態なのに俺の股間の張り切り具合は爆発しそうなくらいに強烈で、いつも想像して自慰に耽っていた美形でナイスバディーな先生の全裸が隣に晒されているのに、目線がどうしても行ってしまう。そしてやはり先生の体は意外に豊満と思った香奈子よりずっと迫力があり、その巨乳は先生が選ぶ職業を間違えたのではないかと思ってしまう見事な大きさと美しい形である。絞ったら先端の大きなピンクの実から乳が出てしまいそうだと思った俺も、股間に触れられたらいきなり出してしまいそうな勃起具合になっていた。

「うるさいいっっ!!」

 警察とのあてどない交渉に焦れたような翔太が一際大きくそう吠えると同時に銃撃を響かせると、それきり外からの呼びかけは聞かれなくなった。教室内には結局何の進展もなかったことに落胆ムードが漂う。俺は半年ばかり前に、外国で銃を持って人質をとり建物の中に立てこもる事件があったのを思い出していた。その事件は警官隊が犠牲者を覚悟で突入し、犯人は射殺されたが巻き添えを喰って何人もの死者が出るショッキングな結末を迎えたはずだ。

――そんなことはねえよな……

 さすがに日本でそんな手荒な解決は図られないだろうが、ではこれから一体どうなるのか?考えられるのは、翔太が疲れた頃を計算して再度説得に掛かり、それでも駄目なら、慎重に犠牲者を出さぬよう警官隊の突入だろうか。教室の中には食料も水もないのだから、それで恐らく翔太は御用となるのだろう。

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