トライアングル
二次元世界の調教師:作

■ 7

 そして恭子さんは、相変わらず礼儀正しい態度を崩さず彼の異常な頼みに答えました。

「わかりました。少々お待ち下さいね、麻美さん」

 私は唖然として何も言えず、茶菓子を置いた恭子さんがそそくさと部屋を出て行くのをただ見送るばかりでした。

「又気をやったのか、姉貴の前で。お前は本当に、どうしようもない淫乱だ」
「正彦くん、ひどい人……」
「麻美がイッたのを隠す顔は最高だな」
「どうして下着なんか……」

 お姉さんの前で女の恥を晒させてしまう正彦君に恨み言を述べたつもりでしたが、私の声は甘くしゃがれており、嫌らしい女の媚態のように聞こえてしまったでしょう。そして彼に「イキ顔」をほめられると、ますます胸がキュンとなってしまいます。恭子さんにショーツの替えを頼んでしまう破廉恥さを問い質そうとしても、彼ははぐらかして何も答えてくれず、お姉さんのことを話し始めました。

「姉貴はさ、出戻りなんだよ。離婚して、この間からうちに帰って薬局の手伝いをやっている」
「お姉さん、凄い美人ね」
「ははは、妬いてるのか、麻美」

 妬いてるのか、と言う正彦くんの言葉はただの冗談ではなさそうでした。どうして彼はそんなことを言うのでしょう。実のお姉さんに私が嫉妬する理由などないではありませんか。

――やっぱり正彦くん、お姉さんと……

 頭脳明晰でクールな正彦くんは、男女のことになると、常人にはうかがい知れない人です。皆から羨望の目で見られる人並み外れた容姿の私を冷たくあしらい、かえって彼から離れられなくしてしまった正彦くんなら、実のお姉さんと男女の関係を持ってしまうことも、ありそうなことに思われるのです。いえ、間違いありません。わざわざガールフレンドを連れ込んでいる自分の部屋に顔を出させ、下着の話などを平気で持ち出すやり方からして、彼と恭子さんはきっと道ならぬ関係にあるのです。

――私に妬かせようとしてるんだ……恐ろしい人……

 私だけではありません。反対に恭子さんにも私のことを意識させて、実のお姉さんに嫉妬の炎を燃やさせようとしているのです。三角関係にある女同士の気持ちを弄んでしまおうと言う正彦くんは、天性の女泣かせなのでしょうか。そんな正彦くんの思惑がわかっても、彼の魅力に取り憑かれた私には、恭子さんに敵愾心を持ってしまうのをどうしようもありませんでした。

「お待たせしました。このような物でよろしければ、どうぞお使い下さい、麻美さん」

――一体、どういうつもり? そんなパンツ、あり得ない……

 恭子さんが持って来たのは、和風美人の彼女のものとは信じられない、下品なショッキングピンクのTバックショーツでした。人工的な感じのする微笑みを浮かべた恭子さんが、まるで私に話し掛けて来ているような気がしました。

――そんなえっちなミニスカをはいてるエロ娘には、こんなパンツがお似合いよ……

「姉貴がこんなTバックを持ってたとはな。驚いたよ……」

――正彦くん、もうお姉さんのことなんか話さないで!

 恭子さんがピンクのTバックを渡す替わりに、私の汚れショーツを持って部屋を出ていくと、正彦さんはそのヒモだけのように見える下着を手に取って言いました。彼は和風美女のお姉さんがそれを身に着けている姿を想像しているのでしょうか。悔しいけど、私も恭子さんのピンクTバック姿が脳裏に浮かんで、さぞかし魅力的であろうと思ってしまいました。

「お前に似合うかな」
「ううん。私なんか……」

 私は心にもないことを口にしました。和風で清楚な美女の恭子さんも、はしたない下着とのギャップが映えると思いますが、彼女に負けない色白で大柄の、よくフランス人形みたいだと褒められる私には、もっと良く似合うと思うのです。

――ミニスカの下にピンクのTバック……

 今私がはいてるセーラー服の超ミニスカートで、ピンクのヒモみたいな下着をチラつかせたら、きっと物凄くえっちでしょう。今日露出のアブない快感に目覚めてしまった私は、そんな妄想をたくましくしてしまう有様でした。でもそんな妄想に耽っていると、私は忘れていた激しい感覚に突き上げられて、恭子さんが部屋を去るなり必死で口走りました。

「正彦くんっ!」
「何だ?」
「痒いの……もう我慢出来ない、何とかして!」
「どこが?」
「お、オシリ……」

 私は顔を熱くしながらその部分を口にしました。他の性感帯を刺激されて何度も極めてしまい、その辛さを忘れることが出来ていましたが、改めて意識するとズキンズキンと猛烈な痒みが背筋を突き上げて来て、もういても立ってもいられない、という表現がピッタリでした。なのにピッチリと分厚くきついゴムパンツにガードされて手の施しようがないのです。

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