女子能力開発研究所
二次元世界の調教師:作

■ 13

 さっそく次の休日、約束通り研究所からきちんと背広を着た2人の男が我が家に派遣された。一見平凡なビジネスマンに見える彼らはしかし所長と同様鋭い眼光をしており、こんな男たちにわが娘を連行させることに俺の胸は痛んだ。だがもう後戻りは出来ない。和田さんのように、俺も勇気を出してかわいい娘を矯正してもらうのだ。

 さっそく彼らを彩美のこもる部屋に案内する。何も知らされていなかった彩美はいつも通り何もせずベッドに腰掛けていたが、知らない男2人の姿を見てもチラリと入り口を振り返っただけで、一言も発せず生気のないボロボロに破れた人形のような姿はいつもと同じだった。

「薬を使ってもよろしいでしょうか?」

 男の1人が小声で俺に聞く。

「薬?」
「すぐに昏睡させる、強力な睡眠薬です。ちゃんとアフターケアしますから、健康上の心配はありません」
「……どうぞ」

 さすがにためらった俺だが、今さら拒否しても仕方ない。2人の男と一緒に彩美の近くに行き、相変わらず魂を抜かれたような娘の取り扱いを見守った。

「お嬢さん、腕を貸してください」
「注射しますよ、いいですか?」

――彩美! お前、そんなことされても黙ってるのか?

 彩美は俺以外の人間には完全に心を閉ざしており、何を聞かれても、何をされても死んだようにじっとして無反応なのだが、何の説明もされず自分の体を痛める注射にさえ反応しない娘に、俺は愕然とした。下手したらレイプされたっておかしくない状況なのだ。彩美の心の病が自分の思っていた以上に深刻であることを思い知らされた俺は、ここはやはり研究所に賭けてみるよりない、と改めて決意を固めた。

「……パパ……」

 だが、死んだようだった彩美が、1人に腕を押さえられもう1人に注射を打たれた瞬間、俺の方に怯えた表情で視線を送り呟くようにそう言った時、俺は愛娘に自分がやろうとしていることの罪深さに胸が潰れるような思いになった。

――すまない、彩美。でもこれはお前を救うためなんだ

 彩美が言葉を発したのも束の間、あっと言う間に効き始めた薬の効果で目がトロンとなり、男の腕の中にもたれるように倒れてしまう間、俺は自己弁護のように心の中で言い聞かせていた。だが、もう1人の俺も問いかけて来る。

――彩美のためだって? 嘘をつけ。お前は実の娘とヤリたいと言うとんでもない願望を実現するために、いかがわしい施設に彼女を引き渡す、鬼畜のような変態親父じゃないか……

 だが後悔しても後の祭り。こうした少女の「拉致」に慣れているらしき男たちは、こともなげに昏睡した彩美の肥満になり掛けの体を車の中に運び込むと、さっさと走り去って行ってしまった。

 それから1ヵ月。俺は彩美のことが気になって仕事もまともに手に着かず、落ち着かない日々を過ごしていた。休日に伸々塾に行ってみても、受付嬢が首をかしげるばかりで全くとりあってくれないのである。俺は休日の講義で出入りしている大勢の学生の中に、快楽装置を体に取り着けられて密かに悶絶しているミニスカの少女がいやしないかとジロジロ眺めてしまったが、ハッと気付いてやめた。これではアブないロリコン変態男である。いや実際そう言われても仕方ないのだけれど。

 本当にこの大きな学習塾のビルの地下に、男のよこしまな妄想をそのまま形にしたような矯正施設「女子能力開発研究所」が存在しているのだろうか?そして俺の指図で強制的に施設に収容された彩美は、身も心も丸裸に晒け出されて女子としての能力に磨きをかける淫らな「矯正教育」に汗を流しているのだろうか? 俺は正直な所、あの日の出来事はまやかしで、彩美は本当にヤバい男たちに拉致され連行されて、二度と戻って来ないでないのではないか、と言う大きな不安にかられていた。

 だが、和田さんが「自分のときもそうでした」と教えてくれたので気が楽になった。どうやら研究所はその秘密を厳守するため、保護者であっても新規の顧客を案内するとき以外は、外部から人を入れないらしい。確かにあんな素晴らしい「見学」がたった1万円で出来るとなれば、希望者が殺到して収拾が付かなくなるだろう。

 娘の身を案じる俺はしかし、和田さんに誘われるままに足繁く彼のマンションを訪れ、奈津子さんとの3Pを楽しんでいたのだから、我ながら仕方のないエロ親父だと思う。だが奈津子さんの素晴らしく鍛えられた口唇や、発展途上だが感度抜群の乳房、そしてまだ狭小な上に驚くほど良く締まるアソコや尻穴と言った若い肉体を堪能し劣情を吐き出しながら、俺は見事な成果を上げた研究所の矯正教育を信頼し、彩美が生まれ変わって帰って来る日を心待ちにしていたのである。

 そして研修期間の1月が明ける日の前夜、それまで音沙汰なしだった研究所の柳沢所長からじきじきに、待ちに待った電話連絡があった。

「彩美さんの矯正教育は完璧に成功しました。何も問題もなく復学され、まじめに学校生活を送られることでしょう」
「ありがとうございます! 何とお礼を言ったら良いか……

 俺は所長の自信に満ちた口ぶりに思わずガッツポーズを取り、恥ずかしいくらい声を弾ませてしまった。だが所長は続けて言う。

「ただ申し上げにくいのですが、彩美さんは実の父親であるあなたに、道ならぬ感情を抱いているご様子です」

――ようし! 来た〜っっ!!

 俺は今度は心の中でガッツポーズをとっていた。

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