寝取られ男の復讐
二次元世界の調教師:作

■ 3

 貫太から突っ込んだ身の上話を聞かされ、今から調教師としての仕事現場まで見せてくれることになって、俺も昔のようにコイツに心を開く気になり、情けない人生と今置かれた状況を包み隠さず語っていった。貫太も相槌を打ちながら熱心に聞いてくれ、一通りのことを聞き終えると言った。

「そうか。エライ目に遭ったわけだ。で、その女とよりを戻したいんだな? 俺が手伝ってやるよ」
「いや、そこまで考えちゃいないよ」
「どうして? このままじゃお前、ただの負け犬だぞ」
「別に彼女と婚約してたわけじゃない」
「プロポーズするつもりだったんだろ?」
「受けてくれるかどうか、わからないし」
「煮え切らないヤツだな! 悔しくないのか、寝取られたようなもんじゃないか」
「い、いや、その……」

 寝取られ、という言葉に俺は動揺を隠せなかった。頭の中の妄想では幾度となく愛華さんを犯しているが、現実にはキスをしたことすらないのだ。なのに俺は、何度かデートを重ねただけで、愛華さんも俺を愛しているに違いないし、プロポーズすれば受け入れてくれるだろうと勝手に考えていたのだ。はたから冷静な目で見れば、とんだピエロではないか。

「まさか、その女を抱いてもない、と言うんじゃないだろうな?」
「いや、そのまさかだ。笑うなよ、俺は童貞だからな」
「そうか……」

 俺は自己嫌悪に陥って、童貞だと言う恥まで告白したのだが、意外にも貫太は笑ったりせず、逆に真剣な表情になった。俺は昔の親友が、俺のことを思いやって傷付けないようそういう態度を取ってくれたのを感じ、胸が熱くなる。やっぱり持つべき物は親友だ。

「じゃあ、俺がお前にその女を抱かせてやるよ。晴れて童貞卒業だ」
「……無理だろ」
「任せなよ。ダテにこんな仕事やってるわけじゃない」

 そこまで話したところで、ヤツの仕事場だと言う、老朽化したアパートにたどり着いた。

「こんな所に住んでるのか?」
「まあな。だが、女とねんごろになってかわいがってやるには、このくらいでちょうど良い」

 俺はヤツの金回りの良さからして、ここはただの仕事場に過ぎないのかと思ったのだが、意外にも貫太はこんなオンボロアパートに暮らし、女を囲って調教しているのだと言う。

「と言うことはお前も独身か?」
「当たり前だろ。1人の女とずっと一緒に暮らすなんて、今さらそんなバカらしいことが出来るか」

 愚問だった。いろんな女の調教を手掛ける「調教師」が、まともに1人の女と所帯を持つことなど出来るわけがない。ヤツはともかく、女性の方が耐えられないだろう。だが、未だに童貞で愛華さんとの結婚を夢見ていた俺と、貫太の暮らす世界のいかにかけ離れていることか。昔からコイツとは何もかも正反対だったよな、と俺が下らない感慨に耽っていると、貫太は玄関を静かに開けて上がるように身振りで合図した。何しろ真夜中だから、さすがに近所迷惑も考えなければいけない。そして上がってすぐのふすまをやはり静かに開けた貫太は、真っ暗な中に向かって言ったのである。

「帰ったぞ、優美」

 そしてヤツが明かりをパッと点けると、「優美」と呼ばれた女性ーいや少女と呼ぶ方がふさわしいだろうかーが、しどけなく横座りで転がっていたのだが……

――何い!? 女子高生なのか?……まさか……

 が、そのまさかだったのだ。調教中のためだろうか、全身に縄掛けされて転がっていた少女は、何と見紛うはずもない山川女子高校の制服を着ているのだ。オーソドックスな赤いリボンがブラウスの胸元に着いたセーラー服だが、薄い夏服の上からギリギリと縄掛けされているのが、何とも痛々しく見える。こんな夜中なのに少女はまだ眠ってはおらず、後ろ手に縛られた体を仕切りとモゾモゾ蠢かせていたが、貫太は少女を乱暴に起こして座らせた。

「オラ! 正座しておけと言っただろうが!」
「だって……」

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊