寝取られ男の復讐
二次元世界の調教師:作

■ 18

 再会してからと言うもの、ニヤけて優美ちゃんとイチャイチャしてる所しか見たことがなかったが、ヤツも暴力団の端くれなのだ。俺は初めて目にした貫太の暴力に度肝を抜かれながらも、愛華先生に乱暴を働いたことに抗議の視線を送る。すると貫太は軽く、すまん、と言う感じで手を上げたが、この後彼女に掛けた言葉が振るっていた。

「実の姉さんの旦那と不倫してる女が、どの面下げてそんな生意気な態度を取ってやがるんだ! 大人しく縛られて、コイツに抱かれてりゃいいんだよ!」

 愛華先生はショックでしばらく転がったままだったが、顔を上げて全裸の百貫デブの無様な姿を見ると、口を開いた。

「一体、どなたですか?」
「俺はな、興信所の者だが、田島信一とは幼馴染の親友なんだ。お嬢さん、アンタはどういうつもりだか知らないが、コイツはリストラされてアンタにふられたショックで、自殺しちまう所だったんだぞ! なのに、アンタと来たら自分のことばかりで、コイツの気持ちなんざちっとも考えてやらねえ……俺はそれが許せねえんだよ!」

――勝手な嘘を付くなよ……

 実の所実家で食べさせてもらっている気楽さで、自殺するだなんてこれっぽっちも考えてはいなかったのだが、そんな貫太の作り話が応えたのか、愛華先生は複雑な表情で俺の方をうかがった。よし、良心は痛むが、ここは貫太に任せて自殺寸前まで思いつめていたフリをすることにしよう。俺が好きになった、勝気で正義感が強いが優しい彼女なら、もう俺を邪険に扱うことは出来なくなるに違いない。

「コイツから相談を受けた俺は、アンタと山川理事長の素行を調べさせてもらった。そしたら案の定出来てやがる……付き合ってた男をソデにして、義理の兄との不倫に走るとは、一体どういう了見なんだ!」
「……違うんです……」
「うるせえっ! 言い訳は後で聞いてやるから、大人しく縛らせろ!」

 愛華先生はボソリと抗議を口にしたが、ヤクザの本性を現した貫太は再び暴力的な態度に出た。かわいそうにすっかり怯えている彼女の体を押し倒すと、用意していた白い縄をキリキリと掛け始めたのだ!

――縄って、こんな簡単に掛けられるものか……

 さすがはその道のプロと言うべきか、ショックで再び泣き始めグッタリとなった愛華先生の体に、貫太が掛けていく縄捌きは見事なもので、あっと言う間に上半身が網の目のように雁字搦めにされていく様子に、俺は感心してしまった。衝撃的な写真だった理事長が彼女を緊縛していた縄掛けより、明らかに数段上のプロの業だ。とりわけ芸術的だとさえ思ったのは、格子掛けの厳しい緊縛なのに、愛華先生の小柄な体に似合わぬふくよかな胸の膨らみには一切縄が掛けられず、根元を締めキレイに括り出すように縄が絡んで、より一層豊満な乳房となってニュッと突き出ていたことだ。そして理事長が使っていたケバ立ちの目立つ痛そうな縄と違って、縛ればそれなりに痛いだろうが、貫太の白い縄はどういう素材なのか肌に優しそうで、行動は制限しても愛華先生の体を痛めるものではなかった。そしてなぜか俺の嵌めた手錠は外され、下半身も自由な状態で、貫太は彼女に言った。

「観念して、信一に抱かれてくれるんだな、先生」

 手足は自由だがもう抵抗を諦めたような愛華先生はコクリとうなずいてくれた。貫太の作り話が効いたのだろうか? それとも上半身だけでも貫太のツボを心得た厳しい緊縛が、彼女の抵抗力を奪っているのだろうか? いずれにしろ俺は貫太に感謝して、愛華先生の素晴らしい涎のこぼれそうなボディーに目を釘付けにされていた。

「あ、あの……違うんです。話を聞いて下さい……」

 すると観念した様子だった愛華先生が、手遅れのようにそんなことを言い出した。

「何でい、理事長との不倫のことか?」
「……無理矢理なんです」
「強姦されたとでも、言いたいのか?」
「ええ……内密な仕事の話があるからとだまされて、いかがわしいホテルに入ってしまいましたた。そしたら、いきなり……裸にされて、縛られて、乱暴されました……写真を撮られて、バラまかれたくなかったら、黙って言うことを聞け、と……」
「ひでえ野郎だな!」

 貫太は声を荒げたが、写真を撮って脅迫と言う同じ手口なので、俺はやや気が引けてしまった。彼女に理事長と同じ鬼畜な人間だと見られてしまうのは辛い。

――だから彼女は縛られることに抵抗があったのか……

 俺は愛華先生も辛い立場だったのだと思うと、彼女に掛けてやる言葉が見つからなかった。だが持つべきものは親友で、貫太がそんな俺の気持ちを察して聞いてくれたのだ。

「それじゃ、コイツと別れさせられたのも、理事長のためなんだな?」
「はい……信一さんが嫌いになったわけでは、ありません」

――愛華先生っ!

 俺はそう呼び掛けて抱きしめてやりたい気分になったが、続いて彼女の口から語られた真実は意外でかつ俺にとっては辛いものだった。

「お義兄さんは、私の結婚相手を勝手に決めて見合いするよう、うるさく言って来てたのです。だから私があなたとお付き合いしていることを知って、お義兄さんはあんなひどいことを……あなたのことを忘れさせてやる、と言って乱暴されました……」
「屁理屈もいいところだ! ただ自分の嫁さんのキレイな妹を犯りたかっただけじゃねえか、この鬼畜などスケベ野郎め!」

 貫太が激怒しているのはもっともだったが、俺の頭の中にはそれより、愛華先生が理事長に強姦されたのは自分のせいだったのか、と言う慙愧の念が渦巻いていた。そこでその素直な気持ちがそのまま俺の口から出る。

「すみません、僕のせいだったんですね、こんなことになったのは……」
「あなたのせいではありません!」
「そうだぜ、信一。よく考えるんだ、悪いのは理事長じゃないか! お前が謝ることは何もねえぞ……」

――愛華先生を、理事長と同じ手口で縛ってしまった……

 何と言うことだ。結局俺は憎むべき悪漢の理事長と同じことを愛華先生にしようとしているのではないか! 急速に気持ちが冷え込み、萎えかけた俺をしかし、驚くべきことに当の愛華先生が救ってくれたのである。

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