セレブ欲情調教
影山有在義:作

■ 幻惑1

 11月に入り急に寒さを感じるようになってきた。
庭の木々も紅葉とまでは行かないものの色づき始めた。

部屋の中は床暖房が張り巡らされ寒さを覚えることはなかった。
しかし、外の風景をみているだけで、冷たい空気が身体の中に刺してきそうだった。

のり佳の生活は平穏を戻していた。
源蔵からはまったく何も反応がなかった。
あれから、約一ヶ月がたとうとしていた。
すべてが元に戻ったのだ。
のり佳は頭でそう理解しているのだが、なぜか不安な気持ちになるのであった。
義男があんな姿にされたのに何もしてやれない、そんな気持ちが働いているのだろう。
スポーツクラブもとても行く気になれなかった。

「どうしたのだね、最近元気がないじゃないか。何か悩み事でもあるのかね」
突然、後ろから夫の正樹に肩をたたかれてビクッと肩をあげた。
正樹は優しく笑っていた。
 まさかこの人は私があんな痴態を晒していたとは夢にも思ってないだろう。
夫の優しそうな笑顔を見ていると、急に悲しさと安堵感がやってきた。のり佳は涙を浮かべて、夫を見た。

「何かあったのかね?」
正樹はびっくりして心配そうにのり佳の顔を覗きこんだ。
そのとき初めて今日が日曜日であったことにのり佳は気がついた。

「何だか寂しくなっちゃって。でも、何でもないの」
「何か気晴らしにでも行ってきたらどうだね」
「そうね。でも今日は寒そうだし、家に居ることに致しますわ。そう、久しぶりに、お茶のお師匠さんをお呼びしてご教授いただこうかしら」
 のり佳は元気を取り戻した様に明るく答えた。

 一時期、茶の湯に熱心になったことがあった。
毎日のように通って来てもらったものだが、最近はすっかりご無沙汰であった。

たまたま今日の夕刻ならよろしいとの返事をもらい、到着を待つこととなった。
3時ころお師匠さんが見えられ、茶室にお通しした。

 特に名だたる先生ではないものの、その立ち居振舞いはまったく無駄な動きがなかった。
すべての動作に切れと区切りがあった。
さりげない動きにすべて意味がこめられているようだった。
久しぶりの茶の場に、のり佳は緊張を持って臨んでいた。

師匠のすばやく動く手元を見ていた。
「随分とご無沙汰いたしておりました。お元気そうでなによりでございます」
30歳を超えたぐらいの感じだが決して言葉がくだけることがなかった。
いつでも初対面からまったく変わらず、凛としていた。
のり佳はかすかに好意を抱いていた。

「本当にご無沙汰していました。何かと雑用にかまけまして。まったくもって不徳のなすところでございます」
「ますます、お綺麗になられましたようで」
 今まで、あまりその手のお世辞を使ったことのない人から面と向かって言われたことにのり佳は顔を赤くした。

「それでは」
すばやく茶を点てはじめた。
以外に大きな手だなぁ、とのり佳は見ていた。
先が大きく開いた茶せんですばやく茶を攪拌する。
その手元を見ていたとき、突然その手がどこかで見たことがあることに気がついた。
初めて源蔵の地下室に入ったとき、あの節くれだった大きな手がシェービングクリームを刷毛でといていたときだ。

 のり佳の脳裏がフラッシュバックを起こしていた。
ねっとりとした白いクリームをたっぷりと塗りつけた刷毛が乳首に迫ってくる。
ぬらぬらとした、生暖かな感触とざらざらした刷毛が、コリコリになった乳首を刷いてゆく。
のり佳は深いため息をついた。

無造作に鷲掴みにされ、指の間から飛び出した痛々しく硬くなった乳首にも刷毛があてられた。
クリームにまみれた乳房の小豆を節くれだった指がいいように、いじくりまわす。
のり佳は下唇を舐めた。

「奥様、いかがなされましたか?」
突然の声で薄く眠りから覚めかけた。
「大丈夫です」
焦点の定まらない眼で必死で茶の器を見ようとした。
茶せんが相変わらすばやい回転をみせている。

剥き出しにされたアヌス、刷毛の毛が刺さる感覚。
指で大きく広げられたバギナに、クリームを盛ってポッテリと膨らんだ刷毛が挿し込まれる。
攪拌するように中から躊躇なく、無慈悲にまわされる。
むちゃくちゃな振る舞いに、思いっきり淫らではしたない狂態のお返しをする。
後ろ手にされたまま、仰向けで、足を大きく開いて爪先立ちになって尻をふていた。

私の高貴な振る舞いに、折檻を加えるような激しい接合。
ねじ込まれていく肉棒。軋むひだ。容赦のない突き上げ。
いやがおうにも、湧き上がる淫汁、汗。
やがて感情さえも支配され、思ってもみない、痴態や言葉を発してしまう。

「奥様、どうされました!」
突然の声に目が覚まされた。
しばらく、周りを見回してい、やっと自体が飲み込め、あわてて襟をただし座りなおした。

使用人の誰かが、夫を呼びに行ったのか、慌てた様子で正樹が駆けつけた。
「大丈夫か、のり佳」
夫は驚いた様子でのぞきこんだ。
「はい、だいじょうぶです、あの、何か、急にぼおっとしちゃって」
しどろもどろに答えた。
「今日はこのまま、ゆっくり寝ていなさい。無理は禁物だぞ」

 のり佳は自分の寝室で寝かされた。
しかし、横になっても身体の火照りは消えることがなかった。
何とか別のことを考えようとすればするほど、淫らな想像が浮かんでくるのであった。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊