支配の小屋
しろくま:作

■ 12

 どうやら美紀もイッたみたいだった。
美紀(なぜ感じてしまうの? また、操作されてたの?)
 美紀は、感じているのは操られているからだ、と自分に言い聞かせた。いや、操られていなければ、感じるはずなどはないと思いたかった。
美紀(あたしは、この男を恨んでいるのよ?)
 美紀の心は複雑だった。和輝のことを憎んでいたはずなのに・・・
 そのまた翌日も和輝は美紀を呼び出しレイプした。いや、美紀はまったく抵抗しなかったのでレイプと呼べるのだろうか。
 しかし、もう嫌がってこそいないものの、美紀は和輝を好きになったわけではない。
 心が読まれてしまう。身体の自由も、感情すらも操作されてしまう。これは普通に脅迫されているだけの状態のものとは根本的に違っていた。
 いったい、どこまでが本当の自分の気持ちなのか、本当の自分の感情なのか・・・
 和輝も、これで美紀とヤるのは4回目。しかし何かが足りなかった。
 実際、この2回は美紀のことを何も操作していない。ただ、心だけは読める。いくら感じていても、美紀は和輝のことを思っていない・・・純愛を望んでいたわけではないが・・・

 一方その頃、裕之は、帰宅途中の由香のもとを訪れていた。お互いが話しをするのはこれが初めてだった。
由香「何か御用ですか?」
 何も知らない由香は普通に質問した。しかし、裕之の話しを聞くと由香の顔色が変わった。
裕之「あなた・・・あの《小屋》で一体何をされたんですか?」
由香「なっ!・・・なんのことですか?」
 由香は知らないふりをしようとした。
由香「し、失礼します」
 そして、由香は慌てて逃げようとしたが、裕之に腕をつかまれてしまった。
裕之「待ってください。実は・・・」
 この時、裕之の口から出た言葉は驚くべきものであった。
裕之「実は、僕もあの男に強請られているんです。そして、あなたを犯して来いと命令されたんですよ。」
 《あの男》とはもちろん和輝のことである。
 普段の裕之からは考えられない発言であった。これが彼の本性なのか?
裕之「抵抗しないで下さい。明日、あの《小屋》で待ってます。絶対逃げないで下さい。いいですね? あなたも弱みを握られているんですから・・・」
 ほとんど脅迫に近い裕之の要求を、由香に拒否することは出来なかった。
 裕之がこのような強行手段を取ったのか、それには理由があった。彼にとって由香は憧れの存在。その由香が和輝に汚された、このことが一番大きい。和輝への復讐心のようなものが生まれたのか・・・
 とにかく、これ以上由香が汚される前に自分が、そう思ったのであろう。しかし、彼はすぐには決行できなかった。臆病な彼には心の準備が必要だったのである。なぜ、彼があの《小屋を》選んだのかは不明だ。
 由香と別れた裕之は、内心ドキドキしていたものの、満足そうな顔をしていた。
 しかし、由香を汚した和輝をどうしても許すことが出来なかった。別に自分の所有物でもないであろうに・・・そして、その後裕之は、人の獲物を横取りした和輝を恨むようになっていった。

 和輝は自分が影で裕之に恨まれているなど知る由もなかった。そして和輝は、今日のことを裕之に相談しようと電話をかけた。
和輝「なぁ裕之、俺、最近少し変なんだよ・・・」
裕之「・・・何が?」
 裕之はあくまで普通に応対する。
和輝「実は、今日も美紀とヤッたんだけど・・・なんか違うんだよ! わかんねーんだ」
裕之「さぁ、僕はエッチなんてしたことないから・・・」
和輝「そうか・・・」
 そして、和輝が思い出したように言った。
和輝「そういえば・・・お前由香のこと好きだったのか?」
裕之「!!!・・・な、何のこと?」
和輝「あ、いや。違うんならいいや!」
裕之「う、うん。でも何でそんなこと聞くの?」
和輝「いや、この前少し様子が変だったから聞いただけだ。気にするな」
裕之「ところで、由香って娘はまだ犯さないの?」
和輝「さぁな! 暇だったら犯るかもな?」
 そういって電話を切った。和輝は冗談半分で言ったつもりだったが、それを聞いた裕之の怒りは高まるばかりだった。
和輝(それにしても、何人もの女を犯す予定だったのにな。結構時間がたったけど、まだ美紀一人だけとはな・・・)
 そう考えてはいたものの、この一週間程度の短い期間だったが、和輝の気持ちは少し変化していったようだ。やはり、理想と現実は違うものなのか・・・
 次に和輝は、美紀にも電話をかけた。もちろん電話番号は聞きだしていたのだが・・・
美紀「・・・もしもし?」
 美紀の声は以外にも普通だった。怒ったり、軽蔑したりという感じは伝わらない。
和輝「実は・・・明日、また来てくれねーか? 話しがあるんだ・・・」
美紀「・・・分かったわ。どうせ断れないだろうし・・・」
美紀「でも、お願いしてくるなんて意外ね? 前は命令だったじゃない!」
和輝「・・・いいから来いよ。」
 そう言って電話を切った。

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