支配の小屋
しろくま:作

■ 13

 美紀は和輝からの電話を受けた後、由香に電話をかけた。
美紀「ねぇ由香。もう大丈夫? おちついた?」
 由香はあの日から学校に来ていない。そして、心配だったので家の前までは行っても、中に入ることは出来なかったのだ。
由香「・・・うん。もう平気」
 あれから三日。由香もショックから立ち直り始めていた。
美紀「あの日以来、何もされてない?」
由香「うん・・・美紀ちゃんは?」
美紀「・・・・・」
美紀は答えられなかった。
由香「美紀ちゃん。私はあの男を絶対に許さないわ!」
由香「美紀ちゃんも本当は、あれから酷いことされたてたんでしょ?」
 美紀はふと疑問に思った。実際その後三回、レイプされていることにこそ変わりないが、それほど酷いことはされていない。
 もしかしたら、操作されているのかもしれないが、美紀自身も気持ちいいと思ってしまっている。
美紀「そ、そんなことないよ?」
 美紀は由香に心配をかけさせないためにも、そう答えた。
美紀「でも、由香が元気そうで良かった! じゃあね!」
 そう言って電話を切る。
 由香も裕之のことは話さなかった。お互いに相手のことを心配しあっていたのだ。

 今日はそれぞれの約束が重なった日。
 和輝たちより先に、裕之と由香はあの《小屋》に来ていた。
裕之「よく来てくれたね。逃げ出すかと思ってたよ」
由香「・・・あなた・・・本当に脅されているの?」
 由香の鋭い質問に、早速裕之はボロを出してしまった。
裕之「お、脅されてはいないさ。でも、撮影したものを持っているのは本当だよ」
 そう言って裕之はビデオのコピーを見せた。これは和輝が保険のため裕之に渡しておいたものである。中身の確認は出来ないが・・・
由香「・・・もう・・・どうでも、いいわ・・・」
 由香にしては投げ遣りな態度である。
 それには理由があった。由香は自分の処女を奪った和輝を、心の底から恨んでいた。
 彼女は裕福な家庭の、箱入り娘として育てられた。それゆえ世間知らずでもあったのだが、彼女は《処女》というものに、普通の女性以上に執着があった。
 恐らく、美形で優しい、それこそ少女漫画の主人公のような男性と、甘いムードのうちにロストバージン。そんなことを夢見ていたのだ。それなのにあんな・・・・
 はっきり言って、その甘い幻想を打ち砕いた和輝に犯されるくらいなら、と考えたのだろう。裕之の言葉に素直に従った。
 別に、裕之に犯されたからといって、和輝が手を出さないという確証はないであろうに。しかし、由香にはそれ以上のことを考えるほど余裕はなかった。

 ちょうどその頃、和輝と美紀は偶然、まったく同じ時間に、《小屋》の入り口近くで顔をあわした。そして二人は無言のまま《小屋》の中に入ろうとドアを開けた。
美紀「由香!? 何でこんなところに?」
和輝「裕之? お前、ここで何やってんだ?」
 二人はほぼ同時に言葉を発した。もちろん、何が行われようとしていたのか、二人ともすぐに察知した。
美紀「あなたは誰なの? 由香に何をするつもり?」
 美紀は裕之のことを知らない。いや、覚えていないだけかもしれないが・・・
裕之「和輝・・・由香は僕が犯すよ! 邪魔しないでくれ!」
和輝「いや・・邪魔はしねーけど・・・」
 やる気のない答えだ。
美紀「もう、何言ってるの? 由香!! あなたも、あなたよ! 何やってるのよ!」
 由香は口を開いた・・・
由香「美紀こそ何言ってるの? 悪いのはすべてその男よ?・・・どうせ犯されるよ、そんな奴に汚されるくらいなら・・・」
 もっともな話しだが・・・由香は自暴自棄になりかけている。それにしても、どうも裕之の様子がおかしい。表情も、口調も。美紀は裕之が危険な人物であることを敏感に察知していた。世間知らずのお嬢様は、まだ気づいていないようだが・・・
裕之「由香ちゃんもこう言ってるんだ、二人とも出ていってくれ!」
 美紀が説得をするが由香の心は変わらない。二人は仕方がなく《小屋》の外へ出て行った。この時、無理矢理にでも裕之を止めていれば・・・・・

 和輝と美紀は《小屋》の外に座って、二人の行為が終わるのを待っていた。
和輝「裕之はおとなしい奴だから、あまり乱暴なことはしないと思うけど・・・」
美紀「何言ってるの? あの目は尋常じゃないわ。無理にでも止めるべきだったのよ」
 生憎、《小屋》は内側から鍵がかけられた。備えつきの鍵で、中からは簡単に開けられるのだが・・・
和輝「それにしても由香には嫌われたもんだ。お前も俺のこと恨んでんだろ?」
美紀「当たり前じゃない! 写真さえなければ、ぶん殴っているわよ!」
 ぶん殴る・・・少し温いようにも聞こえる。殺すほどには憎んでいないのか・・・
和輝「そうだよな・・・」
 和輝が妙に素直なので、美紀は不思議そうな顔をしていた。

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