Stranger
リバイアサン:作

■ 2

「お疲れ。今日はもう帰っていい。もう遅刻するなよ。」そう言うと松下はみんなには内緒だからなと缶ジュースをくれた。

 あたりはもう真っ暗だった。他の部員はもうとっくに帰ったようだ。

「みんな冷たいなぁ」

そうぶつぶつ言いながら、着替えて帰ることにした。

「もう、イヤ。何でこんな目に会わなきゃいけないの」

彩夏はそうぶつぶつ言いながら、暗い夜道を一人歩いていた。幸い彩夏の家は学校から歩いて二十分くらい。彩夏の中学は全員、徒歩通学が義務付けられていたので、この距離なら割と近いほうだった。しかし、今日はすでに八時を回っていた。九時から毎週欠かさず見ているドラマを見るため、普段なら決して通らないこの近道に行くことにした。

「あ〜あ、こんなことなら録画しとけばよかった。」

この近道は公園の中にあって、この道を抜けていくと彩夏のマンションに五分ほどで着く。逆にこの道を使わず遠回りをしていけば、十分ほどかかるのだが彩夏はいままでこの近道を使ったことはなかった。なぜならこの道は以前から悪いうわさが耐えなかったからである。痴漢が出たとか、露出狂が出たとか、襲われそうになったとか、そんなうわさばかりだ。公園の入り口にも「チカン注意」の文字と、いかにもオタクっぽい男の顔が札に書かれている。しかし、彩夏はひるむわけには行かなかった。ドラマを見るため、彩夏はこの薄暗い近道を行くことにした。 

とはいえ、外灯の少ないこの薄暗く不気味な道は、中学生の女の子には嫌なものである。

彩夏の歩くスピードが上がる。あと少し、あともう少し。一歩一歩近づく危険からの脱出に彩夏はだんだん気が緩んできた。

「なんだぁ、なんてことないじゃん。楽勝楽勝。」

そう思っていると突然、後ろから口を布状のものでふさがれた。と同時に、急激な眠気に襲われた。意識が朦朧とする。そして彩夏は気を失った。

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