少女の性
横尾茂明:作
■ 誘惑2
愛美は幸福感に包まれていた・・何処を歩いているのもおぼろげに・・。
「ベンチに座ろうか?」
気が付くとあのホームレスのおじさんがいたあの公園に来ていた
強烈な印象のあの土管も見える・・。
ベンチに座り・・誠の右手は自然に愛美の肩に置かれた。
「愛美・・僕・・愛美にどうしても告白したくて・・」
「・・・・・」
「僕・・勇気が無くて・・いままでずーと言えなかったんだ」
「中学に入る前から愛美のことが好きで・・大好きで・・」
「来年高校に進学すると・・もう逢えなくなってしまうような気がして・・」
「愛美の気持をどうしても聞きたくて・・唐突に誘ってゴメンネ」
「愛美・・僕のこと・・スキになってくれる?」
「・・・・・・・・・」
「やっぱ・・僕じゃダメ・・かな・・」
「・・・・・・・・・」
愛美の視野が揺れた・・涙が湧いて出るのがわかった・・
「・・・・・・」
「誠君・・私も・・誠君のことが・・好き・・」
「泣きたくなるくらいに・・スキなの・・」
誠は愛美が泣いているのに驚いた・・また愛美のその涙を至福と感じた。
誠は愛美の顎に優しく触れ・・ハンカチで涙を拭った。
「愛美・・ありがとう」
そして周囲を見・・中学生らしく人気の無いのを確認してからそっと愛美の頬に口づけした。
「愛美・・僕・・嬉しくて・・もう死んでもいいくらいだよ」
「愛美も・・誠君の心が分かった今ならもう死んでもいい」
「誠君・・愛美の・・愛美の口にキスして!」
誠は愛美の透けるように白い頬に手をそえ・・震える唇を愛美の唇にそっとかさねた、涙が次から次へと湧き出しキスがしょっぱい味に変わっていった。
忘我の中で誠の舌が愛美の舌を追い求めた。
愛美は舌をそっと出し・・誠の舌に少し触れさせてみた・・頭の中で星が弾け、もっともっと誠の肉体の中に浸透したくなって行った。
しかし・・それとは裏腹に誠の口づけは離れ・・肩で大きくあえぐ誠は「きょうは嬉しかった・・これで思い残すことなく高校に行けるヨ」
「・・・・・・・」
「さぁ雨が降りそうだからもう帰ろう」
誠は愛美の手を取りベンチから立ち上がった、愛美もつられるように立ち上がり・・水をさされた思いが虚しくて俯き加減で涙を拭きながら引っぱられるように歩き出した。
(あーん・・もっと誠君と一緒にいたいよー)
(もうお家に着いちゃうよー)
愛美は焦った・・彼に何か言わねば・・誠は今日のことを中学時代のいい思い出として・・幕を引いてしまう、そんな不安が愛美の頭をよぎったから。
公園を抜けたところで俄に大粒の雨が道路を叩きだした、
「うわーすごい雨!・・愛美走るぞ」
雨はすぐに土砂降りに変わり、二人は雨宿りを捜して彷徨した。
「誠君・・私の家はすぐそこだから雨が止むまで寄っていって」
「わかった!それにしてもすごい雨だなー」
二人は長い塀に小さく掲げられた箏曲教授の看板横の門柱を曲がり玄関上に張り出した庇の下に飛び込んだ。
「フーずぶ濡れになっちゃったね、誠君・・シャツが肌にくっついちゃってるよー」
「まいったなーパンツまでぐっしょり濡れちゃったよ」
「誠君・・乾燥機が有るから乾かしていけば?」
「うーん・・でも・・お母さんがいるでしょ」
「ううん・・きょうはお母さんもお婆ちゃんも出かけているの」
「でも・・留守中に家に上がるのはチョットまずいんじゃないかなー」
「いいのよそんな遠慮は!・・二人とも8時までは帰ってこないもの」
「・・・・・・じゃ・・ちょっとだけネ・・」
愛美は玄関の鍵を開け・・外を少し見て「さっ入って!」と誠の背を押した。
玄関を入った時・・華やかな薫りが誠の鼻を擽った・・。
愛美の薫り・・愛美と二人だけの世界・・
恋の震え・・愛美の唇・・愛美と同じ空間でいま息をしてる・・。
「誠君すぐにタオル持ってくるからそこに座っててネ」
愛美は愛らしく誠を見つめ奥に急いで走って行った。
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