羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第一章9

★ ゲーム5

電話が鳴った。
早紀「間に合ったようね。おめでと。写真は、体育館更衣室の入口ドアにあるわよ。後5分位で終業ベルが鳴るから。急いで、音楽室に着替えに行った方がいいんじゃない。今の姿を皆に見せたいのなら別だけど。」
貴子は、今の格好を思い出し自分の姿を見る。バストの谷間にびっしりと汗を掻いており、何故か乳首が尖って立っている。慌ててバストを庇い、水着を直し、体育館更衣室に急いだ。
そこには、A4サイズの写真が貼り付けてあった。最初ここに来た時にはなかったのに。写真を剥がし、下着を取るために更衣室に入った。『無い!』ハンガーに掛けた筈の下着がそこには無かった。机やロッカーなど探してみたが見つからない。ふと、時計を見ると後2分程で授業が終わる。下着はあとで捜す事にして、音楽室に向かうことを優先した。鍵が開いているか心配だったが行くより他に道が無い。音楽準備室の前に着き、扉に手を掛けた。扉が開く。『よかった。』中に入ろうとした時、終業を知らせるチャイムが鳴った。扉に鍵を掛け、ロッカーを開けた。中には制服と一通の手紙があった。おそらく写真の在りかを記したメモだと思い、開いて読んだ。


お疲れ様でした。
最後の写真は、運動場の端にある男子トイレの中にあるよ。一番奥の個室のドアの内側に貼ってあります。あの写真だけだと誰か分かりにくいので、学年とクラスと名前を書いておきました。私って、親切でしょ。
また、遊びましょうね。
 そうそう、水着は畳んでロッカーに返してくださいね。
それと、今日最後の命令です。6時限目は、最初からちゃんと出席するんですよ。


暫し、呆然と立ち尽くしていた。
ゆっくり時計を見る。次の授業まで、5分も無かった。貴子は、涙目になって唇を噛み締め急いで着替えた。水着を脱ぎ捨て全裸になってからスカートとブラウスを着ていく。ブレザーを着て、鏡に自分の姿を映して見た。目を赤くした貴子が、いつもの姿で写っている。素肌に直接ブラウスを着ている為、バストの先の乳首が擦れてしまうが、外見からでは分からない。
―― よかった。下着を着てないのが分からないかも ――
今すぐ、運動場の端にあるトイレに行きたかったが、もし、命令に逆らって授業に遅れたら、それこそどんな目に会うか。さっきまでの事を思うと怖くて逆らえない。写真と手紙をスカートのポケットに仕舞い、貴子は、ミニスカートが捲くれないよう、手で押さえながら自分の教室に急いだ。バストが大きく揺れている。両手で庇っているが止められない。スカートの裾も気にしながら階段を駆け下りた。
1分前に教室に着く。友達が駆け寄ってきて、
奈々「貴子、何処に行ってたのよ。心配するじゃない。大丈夫?」
貴子「ごめんね、心配かけちゃって。ちょっと気分が悪かったから、保健室に行ってたの。もう大丈夫だから。」
奈々「それならいいけど、あまり無理したら駄目だよ。」
貴子「ありがと。」
始業のチャイムが鳴った

英語の授業だったが、全く先生の話が入ってこない。時計を見るが中々時間が過ぎていかない。貴子の席は、窓側の一番後ろだが、ここから外に顔を出してもトイレの位置すら確認できない。ましてや、授業中である。そんな事が出来るはずもない。男子トイレにある写真が気がかりなのだ。
―― 早く終わってくれないかな。写真大丈夫かな? ――
ソワソワしていると、先生に叱られた。大人しく、じっと時間が過ぎるのを待った。

ようやく終業を告げるチャイムがなった。貴子は、急いで教室を飛び出し、靴に履き替えて、運動場の端にある男子トイレに向かった。運動場ではどこのクラスも授業が無かったらしく静まり返っていた。男子トイレの前に来て、ゆっくり中の様子を伺った。誰もいないようだ。勇気を持って中に入り一番奥の個室へ向かった。鼻を付く独特の臭いも今の貴子には、気にならなかった。個室のドアを開け内側に目を向けた。
『1年2組 貴子です。私の恥ずかしいおトイレ姿を見てください。』
貴子は、一瞬眩暈がしたが、写真を剥がし、ポケットに入っている写真と手紙も一緒に破りトイレに流した。
ふと、貴子は、ある事に気付いた。写真の枚数が少ない事に。さっきトイレに流したのは、体育館更衣室で見つけた最初の写真と更衣室の入口にあった写真、最後にここで見つけた写真の3枚しかない。下駄箱で見つけた写真が無いのだ。貴子は、顔面蒼白になって、思い返してみる。確か、バスケットボールを取るために体育館へ行く。その後、広場で、シュートをした。
―― あるとしたら、体育館か広場。とにかく行ってみよう。 ――
―― せっかく見つけた写真なのに、これじゃ意味が無い! ――
貴子は、急いで広場に向かった。広場には、これからクラブ活動をしようと部室に人が集まってきている。
―― やばい、早く探さないと。 ――
その時、後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。
「貴子?」
ビクッ! として後ろを振り返った。
貴子「おねぇちゃん。」
智子「あんた、何してるの? こんな所で。」
貴子「えっ、別に………」
智子「あんた、クラブに入ってなかったんじゃないの?」
貴子「あー、っと、なにか良いクラブないかなぁなんて思って。」
智子「あら、珍しい。運動が大嫌いなあんたが、クラブに入るの?」
貴子「いいじゃん、別に!」
「智子〜、遅れるわよ。おいて行くよ〜。」
智子「ちょっと待ってよ〜、直ぐ行くから〜。」
智子「貴子、今日も帰り少し遅くなるから、先にご飯食べといて。もうすぐ試合が近いからさぁ」
貴子「わかってるよ。頑張ってね。」
智子「じゃね、バイバイ。」
貴子は、ホッとして写真探しを再開した。

―― 思い出した! なくならない様にって樹の植え込みの下に石で重石をして置いておいたんだった。 ――
貴子は、樹の植え込みを見てみた。置いた時と同じ、そのままで置いてあった。写真を握り締めると、何も無かったかのように教室に向かった。教室では、
奈々「貴子、大丈夫?」
貴子「えっ?」
奈々「だって、いきなり教室飛び出していくから…」
貴子「あっ、大丈夫。でも、ちょっと気分悪いから、家に帰るわ。」
奈々「ほんと、無理しちゃ駄目だよ。」
貴子「ありがと。じゃあね。バイバイ。」

貴子は、自転車に乗れない。ノーパンがばれる可能性があるからだ。でも、いつまでもこんな格好ではいたくない。ここは、学校ではない。ゆっくり慎重に家路を急いだ。時折、車が勢いよく貴子の横を通り過ぎていく。すかさず、スカートの裾を押さえる。
なんとか、家に着いた貴子は、2階の自分の部屋に行き、制服を脱ぎ、新しい下着を着けて部屋着に着替えベッドの中に潜り込んだ。今日一日の出来事が信じられない。悔しくて、悔しくて涙が止まらなかった。

ようやく泣き止み、ベッドから出たら、もう辺りは真っ暗だった。母親は、私が帰ってきている事に気付いていなかったらしく、置手紙を残して仕事に行ったみたいだ。

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