羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章9

やがて泣き止んだ。
麻衣「貴子、これからどうする?」
貴子「どうしよう。どうしよう。」
麻衣「もし貴子がいいなら警察に行く? もちろん写真はネットで半永久的に流れる事になるし、私たちも警察に捕まるかもしれない。でも、今の貴子の為なら仕方ないし。いいでしょ、美紀、美香、警察に捕まっても」
美紀、美香「仕方ないよね。」
貴子は、冷静になって今の状況を考えた。
――もし、警察に行けば、麻衣が言っていたようになるだろう。しかも、私の事を心配してくれているこの3人を犯罪者にしてしまう事にもなる。そんな事は出来ない。3人が良いって言っても出来るはずが無い。私が我慢すれば、それで皆は助かるのなら――
貴子以外の3人は、ジッと貴子の出方を待った。正直、ここが正念場なのだ。今後の貴子への対応が大きく変わってしまう。
貴子が口を開いた。
貴子「大丈夫、我慢する。     ごめんね、皆を巻き込んでしまって。ごめん。」
そう云うと、また泣き出してしまった。
――よし! 勝った〜〜!――
麻衣・美香・美紀は、内心ガッツポーズをとった。
麻衣は、抱きしめる手を強くして、
麻衣「貴子、いいの? ほんとに? 従うの?」
貴子「うん、大丈夫! だって皆にこれ以上迷惑掛けれないもん。大丈夫だよ、これ位」
貴子が、初めて強がって見せた。目は、泣いて腫らしているが作り笑顔を見せた。貴子の中で、私の事を本気で心配してくれる人がいてくれているだけで、逆にこの人たちを守ってあげないと、という気持ちになれたのかもしれない。
麻衣「ありがと、じゃあ、下着、持って行くよ。」
貴子「うん、その引き出しに入っているから。」
貴子は寂しそうな声で言う。麻衣は、美紀にタンスの引き出しを開けさせ、下着を取り出し近くにあった紙袋に入れていく。
美香は、封筒の中の物をすべて出した。中には、3種類入っていて、1つ目は、真っ赤な下着が2枚。殆どがレースでできており布面積が極めて少なく、透け透けのもので、およそ生理パンツとして使用するものではない。このパンティに『生理用パンツ』とメモ紙が貼ってある。
2つ目は、黒いアイマスク。見た目はかなり丈夫そうで布面積が大きく、鼻の頭位から眉毛の上まで、内側もしっかりサポートがついている。付ければきっと全く光を遮断出来るのだろう。メモには、『常に持ち歩く事』と書いてある。
3つ目は、ピンク色の卵型バイブレーターだった。貴子は、これが何か分からない。メモには、『決め事4の8に使いなさい。常に持ち歩く事』と書いてある。決め事4とは、『メールの指示には絶対である事』8とは、『オナニーをする』である。美香は、バイブを貴子に渡し、スイッチを入れる。と、卵型のところが、ブ〜ンっと音を立てながら掌で動き回った。貴子は、ビックリして掌からバイブを放り投げた。経験がない貴子でも、これを何に使うかは想像がついた。昔、中学生のとき友達が自慢げに話しているのを思い出したのだ。
麻衣「美香! 止めなさい。こんな時にそんな悪戯をするのは!」
美香「は〜い」
麻衣は、貴子の頭を自分の胸で抱え背中を撫でながら落ち着かせる。そして、
麻衣「じゃあ、カーテンも。取るよ。いい?」
貴子「えっ?」
貴子は、ビックリして顔をあげ麻衣を見た。
麻衣「だって、この手紙には…。」
仕方が無いよと言わんばかりの顔で手紙を貴子に渡した。貴子は、手紙を持ったまま俯いた。
麻衣「この手紙には、カーテンを常に開けておくようにって書いてあるって事は、カーテンを取れって言う事だと思うの。」
困ったようなそぶりの顔で貴子を見つめる。俯けていた顔を麻衣に向け、小さく頷いた。きっと、今の貴子には、麻衣言う事はすべて正しいと思っているのだろう。そして一番信用できる人でもあるのだろう。
麻衣は、美香に目配せして、カーテンを外させる。麻衣はもう一度、貴子の体を抱き、頭を撫でてあげる。美紀と美香は、それぞれ服や下着、カーテンを袋に詰め終えた。3人は、目を合わせ笑顔を見せている。

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