羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章11

★ 新しい生活

木曜日の朝、貴子は、決められた格好で学校に向かう。教室に入って、麻衣、美紀、美香を捜した。昨日、あれからどうなったのか、心配なのだ。しかし、始業時間になっても3人は教室に現れなかった。貴子は、心配でホームルーム後の僅かな時間で、麻衣に電話をする。しかし、繋がらない。美紀、美香も同じだ。不安な気持ちのまま、1限目の授業を受けた。昼休みになり、心配な気持ちのまま奈々と昼食を取っていた。突然、ポケットにいれてある携帯が鳴る。(正確にはバイブ震動した)貴子は、携帯を出し、奈々にストラップを見せて話をしながらメールをチェックする。
メールには、『3』とだけ書かれている。昨日のあの指示の事だ。しかし、貴子は、数字の指示を覚えていない。焦った貴子は、トイレに行って数字の意味を確認する。すると、またメールが来た。
メール「指示は、メールを受けた場所で、5分以内に実行の事。」
メールと一緒に昨日の4人で撮った写真が添付されている。肩を落としながら教室に戻った。机は、教室の後ろ、窓際にあり奈々は窓に向かって座っている。貴子は、教室から見えないよう、奈々の体を利用して座った。しかし、すべての角度から隠せるものではない。足を開いていく。90度ぐらい開いた所で止まり、じっと我慢した。奈々は、何も知らない為か、いつものように楽しく話しかけてくる。貴子も顔を赤くしながら話に合わせて作り笑顔をみせる。ふと、目線を教卓に向けた。目線が合う人が居る。いや、貴子の目線より少し下を向いているようだ。貴子は、慌てて足を閉じ俯いた。教卓前のその男、鈴木がニヤついた顔をいつまでも見せている。
――まずい!? 見つかった!? どうしよう……――
また携帯が鳴った。貴子は、ビックリした。
――まさかまた指示が来たんじゃ…――
携帯を見る。もう奈々の事を気にしていられない。
奈々「どうしたの?」
貴子「えっ? うん、あの、母から。」
とっさのウソだった。メールを見るとまた『3』と書いてある。血の気が引いていくのが分かる。チラッと鈴木の方を見ている。鈴木は、まだ、貴子の方を向いている。貴子は、もうどうしていいのか分からない。とっさに席をずらして奈々を挟むように足を開いた。
奈々「どうしたの?」
貴子「うん、また鈴木がこっちの方を見てて。」
奈々は、振り返って鈴木を睨んだ。鈴木は、何事も無かったかのように前を向きノートに何か書き出している。
奈々「気持ち悪いよね。いつも貴子を見てるんだから!」
奈々とは時々、鈴木の視線の事で話をしていた。
奈々「ねぇ、場所かえよっか? そうだ、久々に屋上に行かない? 今日天気も良いし、ねっ?」
貴子「うん。いいよ。」
貴子は気分も変えられるだろうと思い、2人で教室を出た。外の天気は晴天で、風も穏やかに頬を通りすぎていく。貴子の顔にも笑顔が戻どり、奈々と楽しく談笑している。その時、また携帯が震えている。
メール「フェンス前側で『4』」
貴子の顔に緊張が走る。番号の示す意味を理解しているからだ。貴子は何気なしにフェンスまで歩く。奈々もついてくる。
奈々「貴子〜、そんなに行くとスカート覗かれちゃうよ。」
貴子「大丈夫だよ、誰も見てないから。平気だよ。」
少し緊張した声で言った。2人はフェンスまで来て、並んで校舎に背を向けた。
貴子は、突然お腹を抱えて校舎側に向かってしゃがんだ。顔が高潮しているのが自分でも分かる。奈々は、ビックリして貴子の肩を抱いて覗き込んできた。
奈々「どうしたの? 顔色悪いよ。」
貴子「うん、急にお腹が痛くなってきて。」
貴子のウソ。咄嗟に思いついたウソ。奈々にウソをつくのは嫌だけど、でも、本当の事は言えない。奈々まで巻き込むわけには行かないから。
奈々「戻ろう。歩ける?」
貴子「うん」
奈々に肩を抱かれながら屋上を後にした。

その光景を望遠カメラで一部始終を見ていた者がいる。
恵美「へ〜、あの奈々って子も可愛いじゃん。苛めたくなる様な感じだね。」
デジカメ写真を見直しながらつぶやいた。

教室では、鈴木が携帯をいじっている。さっき届いたメールを見てニヤついている。
メール「振り返って」
誰からのメールか分からなかったが、後ろを振り返って気付いた。『貴子ちゃんだ!』
丁度、貴子が携帯をいじっていたのだ。しかも、足をドンドン開いていく。
――間違いない、貴子ちゃんがボクにメールをくれたんだ――
鈴木は、思わず足のその奥を覗いてしまった。
――あれ? おかしい、真っ暗だ。パンティが見えない? あのスカートなら絶対見えるはずなのに。もしかして? まさかな...ハハ。。。ハァ。。。いや、でも。。。――
一瞬、ノーパンかと考えた。そう考えたのも、貴子のスカートの中を覗いたからだけではない。さっき、昼食の弁当を出そうとカバンを開けた時、見覚えのない白い布が見えた。カバンから出して広げると、女性用のパンティだった。鈴木は、慌ててカバンの中に押し込み辺りを見渡した。幸い、誰も気付いた様子はなかった。普段、誰にも相手にされていない為か、みんなの視界には写ってないのだろう。最近、そう感じていた。きっと、3限目と4限目の選択科目の授業で、この教室を離れていたから、その時に入れてくれたんだ。
鈴木は、このパンティが貴子の物で、だから今、何も穿いていないとしたら。。。と考えていた。もう鈴木は、貴子からのメールと信じきっている。鈴木は、嬉しくて、楽しくて、飛び跳ねたくなるほどの気分だった。まさか、貴子ちゃんからメールをくれるなんて。
――早速、御礼のメールを送ろっかな? ん〜、でも、違う人だったらどうしよう――
突然、手の中の携帯が震えた。
メール「もし良かったら、今度の土曜日の夜9時に○○○公園の北側トイレまで来て下さい。本当の私を見せてあげる^^でも、学校では、いつも通りでお願いします。だって、恥ずかしいから^^;;;ね。」
鈴木は、1人椅子に座ってはしゃいでいた。クラスのみんなが気味悪いものでも見るような視線を向けていたが、誰も話しかける者はいない。
鈴木メール「分かりました。これは、ボクと貴子ちゃんとの2人だけの秘密ですね^^土曜日、かならず行きます。もっと、もっと、2人だけの秘密を増やしたいな^^」
このメールを受け取った、早紀は、笑って、みんなに見せている。
早紀「完全に貴子からだと思い込んでるね。プッ、でもこれ、ウケる。見て。ハハハッ」
美穂「キショい。何だあいつ! ハハハッ」
美紀「いや〜、キショすぎる〜、こいつ!」
美香「よくあんな顔で云うよね〜。ハハハッハ」
早紀「ようし、次の準備をしないとね。」

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