羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章13

★ 木曜日の午後

いつ携帯がなるのかビクビクしながら放課後を迎えた。貴子は、急いで帰る用意をする。少しでも早く学校を出たかったのだ。校門を出て、1人歩いて家路を急いだ。しかし、家に近づくと帰るのを躊躇ってしまう。家に帰れば、全裸で過さなければいけないからだ。
家に着くと、母の加奈子がキッチンで料理を作っている。
加奈子「あら〜、お帰り。今日は、早いのねぇ。」
ここ最近、母とはあまり会話をしていない。学校を休んでいた時も殆ど話していない。2週間位前の貴子であれば、今頃母と一緒に晩御飯の準備を手伝ったものだ。しかし、今の貴子にはそれも出来ない。もし、今、ノーブラ・ノーパンである事がバレたら、きっと驚くだろう。
貴子「ただいま。」
それだけを告げると階段を上って自分の部屋に行く。しかし、部屋では、唯一の自分だけの空間だったはずなのに今は、脅迫者によって屈辱の場所になっている。貴子は、唇を噛んで自分の部屋に入った。太陽の日差しが部屋いっぱいに広がっている。普段なら、夕日を見て“キレイ。”って思えたのかもしれないが、貴子には、この日差しがより辛い環境であることを表している。貴子は、窓の横に隠れて、服を脱ぎ出す。自然と涙が出てくる。制服をハンガーに掛けて外からは見えないであろう位置に膝を抱えてしゃがみこんだ。

時同じくして、学校では、鈴木がメールを見ていた。
――さっきは嬉しくて、ついメールを送っちゃったけど、これ本当に貴子ちゃんかなぁ。もし違っていたらどうしよう。――
鈴木は、半信半疑でメールを見つめている。疑ってはいるけど、土曜日が楽しみに感じてもいる。
――はやく、土曜日にならないかなぁ――

そして、例の8人組は典子の部屋に集まっていた。
美穂「早紀、で、これからどうするの?」
早紀「う〜ん、それがねぇ、智子の部屋に仕掛けてあるカメラであまり良い映像が撮れていないのよねぇ。ただの着替えシーンとかはあるけど、決定的なものが無いんだよねぇ。だから、カメラの場所を変えたい訳。で、麻衣、美香、美紀には、今日も貴子の家に行って様子を伺いがてら、カメラをもう一台付けて来てもらおうかな。」
麻衣「え〜〜〜!? マジですか〜〜〜?!」
早紀「何? 嫌なの?」
麻衣「いえ。。。分かりました。行ってきます。」
早紀「それで、今日の予定は………だから、よろしくー!」
麻衣「はい、分かりました。がんばります。」
早紀「じゃあ、貴子の母親が出かけたら行ってきて。」
麻衣、美香、美紀は、貴子の家に向かった。母親が出かけるのを見届けてから、携帯をかける。
貴子「もしもし」
麻衣「貴子? 心配になってきたんだけど、どう? 今、貴子ン家の前なんだけど、上がっても良い?」
貴子は、誰にも会いたくない気分だったが、私を心配して来てくれた友達を追い返すわけにも行かず、家に招きいれた。貴子は、厚いトレーナーに長いスカートを穿いて玄関に立っていた。
麻衣「こんばんは。」
貴子「どうぞ、上がって。」
と、居間に通された。麻衣達は、貴子の部屋に行こうと云ったが貴子が嫌がった。あまり無理に誘うと怪しまれるので、仕方なく居間のソファーに4人で座って暫く談笑する。
美紀がおもむろに立ち上がった。
美紀「貴子、トイレ貸して。」
貴子は、トイレの場所を教えて、美紀が部屋から出て行く。部屋から見えない位置まで来たら、早速行動に移す。ピッタリとした白く薄いゴム手袋をはめ、お風呂場の脱衣所に入った。辺りを見渡し、カメラの置けそうな場所を物色する。洗濯機の上に乾燥機がある。その後ろに少し隙間がある。発信機を乾燥機の後ろに貼り付け、レンズを棚に這わして全体を写せる様中央に向けて取り付けた。もちろん、電源は、洗濯機から取り24時間稼動できるようにしてある。美紀は、恵美に電話をして、写り具合を確認しながら最終調整をした。
その頃、居間では、貴子が携帯を見ている。新しい指示メールが来たのだ。
メール「今日もお友達と一緒なんだね。でも、友達を呼んだら、やっぱり自分の部屋に行かないと駄目だね。今すぐ、移りなさい。」
貴子は、皆を連れて自分の部屋に移動した。
美香「美紀〜、貴子の部屋に行ってるからね〜。」
美香は、大声で美紀に知らせた。貴子がトイレに近づかないように。しかし、美紀から返事が無い。美紀は、それどころではないのだ。配線を見えないようにと、悪戦苦闘中なのである。
貴子達3人は部屋に入り、貴子がいつもの外から見えない場所に座り込んだ。麻衣、美香は、普通にベッドに座った。麻衣たちの後ろで、貴子はモゾモゾと服を脱いでいく。1人で居る時でも恥ずかしいのに、皆が居る所で脱ぐのはもっと恥ずかしい。ゆっくり時間をかけて脱いでいく。脱いだ服で体を隠し、その場所から出てこない。“カチャ”ドアが開く音。貴子は、ビクッとして小さい体をさらに小さくした。
美紀「はぁ、すっきりした〜」
貴子は、美紀の姿を確認して少しホッとした。美紀以外に入ってくる人はいないのは貴子も分かっているのだが、もし、犯人が…と、ついつい思ってしまう。そんな時、またメールが鳴る。

メール「ちゃんと服は脱いでる? 今日、最後の指令です。今から『8』をしてもらいます。貴子は15歳なんだから、やり方は分かるよね? 分からなかったらお友達に聞きなさい。皆もちゃんと手伝うのよ。そして最後までやらせなさい。そうそう、場所は、部屋の中央がいいわね。」
貴子は、俯いて泣き出す。麻衣は、貴子のそばまで行って、貴子を励ました。
麻衣「大丈夫、こんな事、何時までも続かないから。きっと犯人を見つけてあげるから。」
ようやく泣き止んだ貴子を、麻衣は部屋の中央に導いた。貴子も大人しく従っている。美香は、何処で見つけてきたのか、カーペットの上にタオルを敷いて貴子を座らせた。麻衣は、貴子の後ろのベッドの上に座り、貴子の肩を抱きしめている。美紀と美香は両サイドに陣取った。
美紀「ねぇ、貴子? あのおもちゃは?」
小包の中に入っていたピンクローターの事だ。貴子は、自分の学生カバンを指差した。美香がカバンを開け、おもちゃを探す。ケースに入ったままカバンの奥底にそれはあった。美香はケースから取り出し貴子に見せ付けるように動かした。“ブ〜〜〜ッ”音がしたとたん、貴子は、目を逸らした。
麻衣「貴子、1人で出来る? やった事はあるよね?」
貴子「………」
しばらくの沈黙の後、貴子は首を横に振った。

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