羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章26

映像は、加奈子が自宅の脱衣所で服を脱ぐシーンから始まった。42歳だが、見た目には30代前半から半ばに見られる。肌は白く、腕や足は細い。子供を2人産んでいるにも関わらずスタイルもよかった。腰が括れており、ヒップはやや大きめで、バストは、歳のせいで若干トップの位置は下がってはきているが90のEカップである。若い頃、大学生のときは、よく芸能スカウトマンに声を掛けられたりもしていた。全裸になってお風呂場に入る前に鏡に向かってポーズをとっている。腰に手を当てたり、髪を掻きあげたり、腰を振ったり、胸を持ち上げたり。ポーズを決めながら加奈子は
加奈子「私、まだまだイケるわよね?!」
加奈子「はぁ、主任に会いたいわ。」
加奈子は、右手を股間に伸ばし、左手でおっぱいを揉みながら
加奈子「はぁ〜ん、鎌田主任、抱いて、抱いて、もっと強く抱いてぇ。」
鏡の前で1人オナニーをする。しかし、直ぐに我に返り顔を赤らめながらお風呂場に入って行った。時間にして5分位だろうか。加奈子は、ボー然となって画面を見ていた。加奈子は、動けないでいる。
――そんなっ、誰が?――
加奈子は、重い腰を上げてDVDを取り出すと、封筒にしまい部屋を出て、自分のロッカーに行く。ロッカーの中に置いてあるカバンに封筒をしまい、しっかりと鍵を掛けた。
――どうしよう。どうしよう。どうしよう。主任に相談しようか、でも。――
加奈子は、葛藤している。もし、相談したとしてもあのDVDを見せるのは、恥ずかしすぎる。仕事中、暗い顔をしていると、同僚から心配そうに声をかけられたりした。が、作り笑顔でかわして、卒なく仕事をこなしていった。その日、色々考えたが良いアイデアが浮かぶはずも無く、朝を向かえ帰宅の為ロッカーに向かった。着替えて廊下に出ると鎌田主任に会った。
鎌田主任「おはよう。今日もお疲れ様。あれっ? どうかした? 顔色悪いけど。」
加奈子「お・おはようございます。いえ、ちょっと疲れただけですわ。」
鎌田主任「そうか、今日は休みだったね、家でゆっくり休養を取らないとね。」
加奈子「はい。そうします。じゃあ、失礼します。」
加奈子は、少し寂しかった。心配してくれるのは嬉しいのだが『見舞いに行こうか?』とか言って欲しかった。実際に言ったとしても断ってはいたけど、気持ちが欲しかった。肩を落としながら病院を出た。カバンの中で携帯が鳴った。加奈子は、鎌田主任が心配になって掛けてきてくれたのかと、心をときめかせながら携帯を捜す。手に取った携帯は、全く知らない人からのメールだった。ガッカリして中を開くとタイトルに『加奈子へ』と呼び捨てにされたメッセージが入っていた。
メール「もちろん、DVDは見てくれたわよね! 今すぐ、○○○公園の南側トイレ前まで来なさい。でも、強制はしないわ。あなたの意思で決めなさい。」
あのDVDを見ていなければ行かなかったかもしれないが、見た後では選択肢は1つしかなかった。加奈子は、不安を感じながら公園を目指した。南側トイレ前に着いたが誰もいない。辺りを警戒しながらトイレの中に入る。公衆トイレ独特の臭いが加奈子の鼻腔を突き、思わず鼻を押さえてしまう。眉間にシワを寄せながら見ると、手前には掃除の行き届いていない手洗い場があり、奥に個室が3つある。足を進めると、一番奥の個室のドアに“中に入れ”メモが貼ってある。加奈子は、犯人が近くに居る事を察し、トイレから出て辺りを捜しまわす。しかし誰もいない。出勤途中のサラリーマンが、不審な行動をしている加奈子をチラチラと見ていく。早朝6時過ぎに女性が公衆トイレの周りを回ったり、公園内を行ったり来たりしていれば不審がられるのも仕方がない。加奈子は、世間の視線を感じて何事も無かったかのようにトイレの中に入る。奥の個室に入りドアを閉める。閉めたと時、表でカチャンという音が聞こえた。加奈子は、ドアを引いて出ようとする。しかし、ドアが開かない。閉めると同時に鍵が掛かるように細工されていた。加奈子は、ドンドンとドアを叩き必死にこじ開けようとするが、全く開く気配がない。トイレの上の隙間から出ようと手を伸ばすと、指先に“チクリ”と痛みが走った。よくよく見ると画鋲みたいな小さな針が上を向いてたくさん並んでいた。加奈子は、あまりの恐怖に思わず悲鳴を上げてしまった。

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