羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章27

公園の道路を挟んだ反対側に隠れていた8名は、加奈子が2回目にトイレに入っていくのを見届けてから、公園に入る。と、トイレの中から悲鳴が聞こえた。辺りを見渡し通行人の様子を伺う。通行人は、ふと悲鳴の聞こえた方を見るが足を止める者はいなかった。早紀は、これを幸いに思って、何事かとトイレに駆けつける素振りを見せた。7名も早紀の後について行く。トイレ内を覗き込み、奥の個室のドアが閉まっているのを確認して中に入る。
加奈子は、トイレに誰かが入ってくる足音に気付き、声をかけた。
加奈子「すいません。あの〜、突然ドアが開かなくなってしまったんです。外から押していただけませんでしょうか?」
何も返事がない。確かに誰か入ってくる足音を聞いた。加奈子は、恐怖と不安でいっぱいだった。すると、突然携帯電話が鳴った。
メール「鍵は、外からしか開かない様になっています。開けて欲しければ、今着ている服を脱ぎなさい。そして、ドアの上からこちらに渡しなさい。」
加奈子は、書いてある言葉の意味を理解するまで少し間があいた。加奈子にとっては到底受け入れる事の出来ない事だった。すると、また1枚紙が送られてきた。取るとそれは、脱衣所で加奈子がカメラの方に向いてポーズしている写真だった。正確に言うと、ポーズをとっている姿を横から鏡で確認している写真だった。それがたまたまカメラに向かってポーズしている様に写っていた。その姿は、自らおっぱいを持ち上げて中腰になり男を求めているような、とても他人に見せられる写真ではなかった。写真の下に
“鎌田主任に捧げます。  By加奈子”
と文字が書き込まれていた。悪質な嫌がらせに加奈子は、誰か分からない相手に、
加奈子「いったいあなたは誰ですか?」
何も返事がないので、唯一針がついていないドアの上に手を伸ばし、身を乗り出して誰がこんな陰湿なことをする犯人なのか確かめようとした。が、手をかけた時、外から、加奈子の指を叩いてくる。しかも、何か硬いもので。手を引っ込めて指を見ると、爪のあたりが赤くなっていた。また携帯が鳴る。
メール「悪あがきは止めなさい。早くしないと、この写真を総合病院の入口にばら撒くわよ。」
加奈子は、加奈子は、しゃがみこみ壁にもたれてうな垂れている。すると、ドアがドンドンと叩かれた。さらに叩かれ、その音が上に上がっていく。放心状態になっている加奈子は、その叩く音の方を目で追っていった。すると、上からホースの先が目に入った。加奈子は、そのホースが意味する事を理解して立ち上がりホースの先を自分の方に向かないように押さえた。
加奈子「分かりました。言う事を聞きますから、止めてください!」
思わず声を上げてしまう。すると、ホースが下がっていった。加奈子は、言ったもののなかなか行動に移せないでいた。また、ドアが叩かれる。そして上に上がっていく。
加奈子「分かりました。ちょっと待ってください。」

加奈子は、覚悟を決めてジャケットを脱ぎドアの上に置いた。ジャケットは、スルスルと姿を消していく。また、ドアを叩かれる。加奈子は、スカートのホックを外し足から抜き取った。ドアに置くとまた持っていかれ、ドアが叩かれる。シャツのボタンを外した加奈子は、なかなか脱げないでいた。ここは、公衆トイレの中である。しかも、外には出勤途中のサラリーマンがたくさん歩いているはず。こんな場所で下着だけの恰好にはなれない。戸惑っていると、ドアを叩く音が大きくなり上に上がっていく。見るといつの間にかホースの先が加奈子の方を向いていた。ポタポタと水も流れ落ちている。今、蛇口を捻られたら、加奈子は頭からびしょ濡れになるだろう。加奈子は、意を決してシャツを脱ぎドアに置いた。ホースの水が止まったが、ドアを叩く音がまたする。“まだ脱がなきゃいけないの!?”と思いながらストッキングを足から抜いた。ストッキングも奪われ、今の加奈子は、ブラジャーとパンティだけしか身に着けていない。情けないのと、心細いのと、恥ずかしい、恐怖で涙が頬を伝う。また、ドアが叩かれた。加奈子は、体を震わせ許しを請う。
加奈子「お願い、もう止めて、許して。お願い。」
しかし、ドアを叩く音は止まない。そしてメールが送られてきた。
メール「あと2枚、早くしなさい。でないと、あんたを置いて、このまま服を持っていくよ。」
加奈子は、今着ている物すべてを出さないと許してもらえない事を知る。情けない気持ちで下を向きブラジャーを外すため手を後ろに廻した。プチッと外れる音がして左手で胸を庇いながらブラジャーを外し、ドアに置いた。両手で胸を庇いながらドアの外に消えていくブラジャーを見届けた。少しの沈黙の後、大きくドアを叩かれた。加奈子は、涙を流しながら最後の1枚に手をかけた。左手で胸を庇いながら、右手だけで器用に脱いでいく。両足を抜いたが、なかなかドアに置けない。もう1度ドアを叩かれ急かされる。覚悟を決めてドアの上にパンティを置いた。スッっと持って行かれた。公衆トイレで全裸になった。両手で、胸と股間を押さえながらしゃがんている。加奈子自身、自分でも信じられない思いだ。体が震える。この後、どうなるのか極度の不安が全身を包み込む。メモが送られてきた。
メモ「カバンも渡しなさい。」
加奈子は、床に落ちていたカバンを拾い上げドアの上に置く。もうお金を取られる位大した事とは思わなかった。むしろ、それで許して欲しい気持ちの方が強かった。カバンも取られ、外でカバンを開けている音が聞こえてきた。携帯を弄っている音が聞こえる。しばらくするとカバンが投げ込まれた。加奈子は、カバンを拾い上げ、中を確認する。特に取られたものは何もないようだ。財布にも現金が入ったままである。現金が取られていないことで、さらに不安が大きくなった。突然、携帯が鳴る。
メール「鎌田主任の名刺を頂きました。ついでに携帯番号とアドレスも頂きました。今のあなたの姿を送ってあげようかな。上を見て見なさい。」
加奈子は、カバンを持っていった理由に気付いた。が、もう遅い。ゆっくりとした動作で顔を上げていく。そこには、さっきまでホースがあったはずなのにいつの間にかビデオカメラが加奈子を狙っていた。思わず声を上げてしゃがみこんでしまう。
メール「あまり大きな声を出すと誰か来るかもしれないよ。今の恰好を見せたいのなら別にいいけどね。」
加奈子は、手で口を押さえ、声を上げた事に後悔している。
メール「さて、それでは今から5つの質問をします。カメラを見てハッキリと言いなさい。」
この犯人は、いったい私に何をさせるつもりなのだろうか。犯人の考えが全く分からない。
メール「では、最初の質問。あなたの名前と年齢を教え下さい。」
加奈子は、戸惑った。

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