羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章28

――いったい何なの、これ? どういう事?――
何が何だか分からないまま、携帯の画面を見つめている。また、ドアが叩かれた。ビックリした加奈子は、カメラをチラチラ見ながらボソッと答える。
今度は、強くドアを叩かれて、メールが来た。
メール「カメラをちゃんと見て! ハッキリと大きな声で答える事! 今度、言われた通り出来なかったらペナルティを課します。5つ溜まった時点で、鎌田主任にメールで迎えに来てもらうように連絡します。もちろん、今の姿の写真もつけてね。分かったら、今のあなたの立場をわきまえる事ね。」
加奈子の顔が蒼白になる。
加奈子「お願い、それだけは、やめて、ください。」
そういうと、加奈子はカメラに向かって、
加奈子「加奈子です。歳は42歳です。」
メール「よく出来ました。では、次の質問。胸を揉みながらスリーサイズを答えなさい。」
加奈子は、素直に答える。
加奈子「スリーサイズは、最近測っていないから分からないですけど、たぶんバストが90……」
急にドアが叩かれ、
メール「ちゃんと読んだの? ペナルティ1 ね。最初からやり直し。」
加奈子は、メールを読み返した。
――胸を揉みながら? なんでこんな事しなきゃいけないのよ――
不満を感じながらも、右手を胸に持っていき、答えはじめた。が、また、ドアを叩かれた。
メール「最初からって言ったでしょ。名前からよ。ペナルティ2 ね。分からなくても大体でいいから答えなさい。」
加奈子は、唇を噛み締めながら、最初から答えていく。
加奈子「加奈子です。歳は、42歳。スリーサイズは、90−60−94です。」
前に、病院の健康診断の時、同僚とふざけて測った時のデータだ。恐らく今のさほど変わっていないはずだ。
メール「次の質問は、足を開きながら、鎌田主任とどういう関係でどれ位の期間なのか答えなさい。」
加奈子は、迷った。
――ここで名前を出したら、鎌田主任にまで迷惑がかかってしまいそうだ。しかし、すでに鎌田主任の名刺もアドレスも相手の手の内にある以上、ここで名前を伏せた所で大して問題じゃないのかも。――
加奈子は、異常な環境状態で正しい判断が出来なくなってきている。ドアが叩かれる。
加奈子はメールが来る前に謝って、足を肩幅ぐらいに開きカメラの方を向いた。
加奈子「鎌田主任とは。。。不倫関係です。もうすぐ2年になります。」
少し言いよどんでしまったが、最後まで答えた。メールが来る。
メール「声が小さい! 不倫関係って答えた時、目を逸らせたでしょ! ペナルティ3 ね。最初からやり直し!」
声が小さくなるのも仕方がないだろう。どうして“不倫の関係です”って大きな声で言えるのだろうか。知らずしらず目を逸らしていたのも本人にも自覚がない。ちょっとの隙も許してくれない。大きく深呼吸をして、
加奈子「加奈子です。歳は42歳。スリーサイズは、90−60−64です。鎌田主任とは、不倫関係です。」
いったい私は、何を告白しているのだろう? 自ら進んではいけない道を歩んでいるような気がしてきた。が、今更後戻りは出来ない。
メール「4つ目。鎌田主任のことをどう思っているのか答えなさい。好きですか? 嫌いですか? そしてこれからも不倫を続けたいですか?」
加奈子は、足を広げ、右手は胸に置きながら、息を整えもう1度深く深呼吸をする。
加奈子「鎌田主任のことは、す、好きです。これからのことは分かりませんが、出来ればこのまま続けたいです。」
――何を? 何を言ってるの?私。こんなこと言ったらマズイよ、どうしよう。――
加奈子は、犯人のペースに巻き込まれて思わず答えてしまった。急に赤面し、カメラから目だけを逸らす。

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