羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章31

そして、眠れない夜が明け、時計は午前6時を指していた。鈴木は、迷っていた。もう1度メールを開いて読み返す。今の鈴木ではどう考えても自分が犯罪者としか思えないでいる。鈴木は、決断する。どうせこのまま犯罪者になるなら、公園に行って救われたいと。最悪の事態になっても犯人を捕まえて一緒に警察に行って自分の無罪を主張してやると。
鈴木は、身支度を整え、公園に向かった。
朝、7時より10分も前に着いた。公園の門にもたれて待っている。目の前をサラリーマンが足早に駅へと向かって歩いている。そんな朝の光景を眺めながら昨日の事を思い出している。
『貴子ちゃんがあんな事するなんて。でも、誰かに強制させていたんだ。確かあの時、ボクが貴子ちゃんの傍に近づいたときフラッシュが光って咄嗟に逃げたんだよなぁ。でも、東門に走る人影が見えたんだよなぁ。あれはどう見ても男のようだった。でも、メールは、女文字なんだよねぇ。あれっ? もしかして、やっぱりあの男が犯人で、ボクにばれない様にワザと女のような言葉を使っているとか?』
携帯を取り出して貴子ちゃんからだと思っていたメールを見直してみる。
『ん〜、木曜日のメールは、たしか休憩時間にメールがきて……、ん? まさか、同じクラスの男子がボクをカラかっているんじゃ、て事は、貴子ちゃんにあんな事させているのもクラスの誰かって事か?!』
鈴木は、色々考えていた。その時、携帯が鳴る。
メール「やっぱり来たわね。これでもうあなたも完全に共犯者ね。」
鈴木「あんたはいったい誰だ!?」
メール「あんたの共犯者よ。で、ここに来たって事は、助かる方法を知りたいんじゃなかったの?」
鈴木「教えてくれ。」
メール「なんか態度がデカイわね。いいの? そんな態度とって?」
メールと一緒に画像が送られてきた。貴子が目隠しをして足を広げてオナニーしている傍で、カメラを構えながら手を差し出している鈴木の写真だった。決定的な写真。鈴木が貴子にやらせている様にしか見えない。鈴木は、顔から血の気が引いていくのが分かった。
続けてメールが来た。
メール「どぉ? 綺麗に撮れているでしょ。あなたが貴子に手を出そうとしている決定的瞬間よ。この写真、貴子にも送ってあげようか? もし今、貴子が警察に行ってもあなたが犯人だという証拠がないわ。だから、突っぱねる事も可能でしょうね。でも、この写真があれば、あなた、もう言い逃れ出来ないわよ。」
鈴木「頼む、止めてくれ!」
メール「どうしようかな?」
鈴木「頼む、許してくれ。お金なら払う。その写真を返してくれ。」
メール「あらっ、この写真は元々私の物よ。それにお金は、今は要らないわ。それよりも私に協力して欲しいの。」
鈴木「どういう事?」
メール「私のパートナーにならない? きっと良い思いが出来るわよ。嫌ならいいわ。この写真、貴子とあんたの家族に送るから。」
鈴木は、悩んだ。これ以上こいつに関わったらどうなるか。しかし、向こうに、誰にも見られてはいけない写真がある。ここでいう事を聞かなければ、本当にボクの人生は終わってしまう。悩んだ挙句、出した答えは、
鈴木「分かった。あんたのパートナーになる。その代わり、あんたの正体を教えてくれ。それと、何をするのかも教えてくれ。」
メール「あなたに『その代わり』を要求する権利はないわ。私の言う通りに動いてもらえればそれでいいの。」
鈴木は、携帯を睨みつけながら唇を噛んだ。
メール「貴子の事、好きなんでしょ、でも、もう目も合わせてもらえないばかりか、2度と貴子に会えないかもしれないよ。それよりも、今、私の言う通りにすれば、貴子の恥ずかしい姿を見ることも出来るし、あんたが一生かけても出来ないような体験が出来るよ。どうする?」
鈴木は、この『貴子に2度と会えない』という言葉に反応してしまう。
鈴木「わかった。言う通りにする。で、何をすればいい?」
メール「その前にルールを言っておくわ。まず、1つ、私の事を詮索しない事。2つ、言われた事は、必ず実行する事。分かった?」
それは、一方的な要求でルールではなかった。しかし、今の鈴木にはどうする事も出来ない。
鈴木「分かった。で?」

メール「じゃあまず、証拠を見せてもらいましょうか。この公園の南側に小さなトイレがあるの知ってる? そこの横に椅子があるから、その椅子まで来なさい。」
鈴木は、メールの指示に従い公園の中に入っていく。昨日、貴子ちゃんの痴態が繰り広げられていたベンチの前に来た。辺りを見渡して、貴子ちゃんと自分が何処にいたのか確認する。そして、謎の男が隠れていたであろう場所も確認する。携帯を開いて、さっきの写真を見た。
――やっぱり! この写真のアングルは、あの男がいた場所から撮られている。あの男が犯人だ。間違いない!――
そんな事を考えながら、更に公園の中を歩いていく。奥に小さな建物が見えた。南側にあるトイレだ。前まで来て、辺りを見渡すと木の陰に、確かに小さな折り畳みの椅子が置いてあった。携帯が鳴る。
メール「その椅子の上に携帯を置いて、トイレの中に入りなさい。そして、一番奥の個室に入りなさい。その個室の中に貴方にとって、きっといい物が見れるはずよ。そこで、あなたが男である証拠を見せなさい。私の思う事をしてくれたら、あなたをパートナーとして認めてあげるわ。私の思う事は、あなたのしたい事と同じなはず。私の期待を裏切らないでね。そうそう、あなたが誰なのか見つからないようにね。もし、見つかったら、2度は助けてあげないよ。」
鈴木は、何があるのか全く検討がつかないでいる。まさか、貴子ちゃんが居るとは思えないし。
鈴木は、携帯を椅子の上に置き恐る恐るトイレの中に入っていく。強烈な臭いが鈴木の鼻腔を刺激する。公衆トイレ独特のアンモニアの臭い。鈴木は、鼻を摘みながら一番奥の個室に近づく。
個室の前まで来て、ドアに手をかける。大きく深呼吸をしてからゆっくりドアを押して行く。
鈴木「あ“!」
鈴木の目に飛び込んできたのは、椅子の上で女性が全裸で大きく股を開いていた。しかも、両手は、頭上で手首を合わせて縛られており縄尻が上の方で結ばれ引っ張られている。両足も椅子の肘掛にそれぞれ縛られている。顔には、目隠しと猿轡がされていた。鈴木は、ビックリして少し後ずさりをしたが、女性の後ろに、張り紙で、
張り紙「さぁ、男を見せて」
と書いてあった。

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