羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章34

夜になって、メールが来る。
メール「お疲れ様、写真は上出来よ。さすが私のパートナーね。これであなたも正式な仲間とするわ。そうね、これからは、あなたの事を手際の良さから“ハンディ”と呼ぶわ。では、ハンディ、ご褒美よ。と云っても今度、学校に行った時、あなたはきっと貴子から犯人扱いされるわ。そして写真を返せと迫られる。あなたどうする? 素直に自供する? そうなれば、あなたとあなたの家族は、もうこの街には居られないわね。でも大丈夫よ、私が助けてあげる。私の言う通りに行動しなさい。分かった? ハンディ。」
鈴木は、この犯人が何を企んでいるのか全く分からない。しかも、いつの間にか相手のペースに乗せられて、あだ名まで付けられてしまった。
――“ハンディ”手際の良さと云っていた。良いあだ名なのかな? “ハンディ”――
鈴木は、不思議な世界に引き込まれてしまった様な気分だった。そして、犯人から、行動指示のメールを読んでいく。


鈴木「許してあげようかと思ったけど、麻衣さんのさっきの行動、許せないな。」
麻衣「何〜?!!」
麻衣、美紀、美香が鈴木に迫って行く。鈴木は、後退りしながら貴子に、
鈴木「貴子ちゃん、いいの? こんな行動とらせて? もし、ボクに怪我を負わせたら仲間が写真をインターネットに公開するよ。公園の写真もね。」
貴子「お願い、やめて。」
貴子は、鈴木の言葉に敏感に反応して麻衣達を制した。
麻衣「貴子? いいの?」
鈴木「貴子ちゃんは利口だね。」
美香「貴様っ!」
美香は、鈴木に殴りかかろうとした。しかし、後ろから貴子が手を押さえてくる。
貴子「やめて。」
麻衣「貴子。。。」
貴子「お願い、やめて。あんな写真を皆に見られたらもう生きていけない。」
貴子は、泣き出した。鈴木は、泣き出した貴子を見て動揺している。手を差し出して助けてあげたい。しかし、貴子を泣かせているのは、鈴木本人なのだ。
鈴木「貴子ちゃん、ボクは何も写真を皆に見せたい訳じゃないんだよ。出来れば、秘密にしておきたいと思っている。だから、貴子ちゃんも誰にも喋らないと約束して欲しい。そして、ボク達に素直に従って欲しい。そうすれば、写真は、誰にも見せないし、貴子ちゃんの安全は保障するよ。ボクの事を信用できないと思うけど、ボクは、貴子ちゃんをずっと見ていたいだけなんだ。本当だよ。」
鈴木は、昨日、犯人から言われた通りのセリフを言う。
鈴木「それから、麻衣さん、美紀さん、美香さん、あなたたちが傍について第三者から貴子を守ってあげな。貴子ちゃん、後は貴子ちゃんが決めて。ボクを訴えて恥を曝すか、ボクの事を信じて従うか。答えは、明日の放課後、聞かせて。」
鈴木は、間違える事無く、犯人から教えられた通りのセリフを言い、屋上出口に歩いていく。麻衣、美紀、美香も何も言わず見送った。貴子は、顔を伏せたままシクシクと泣き続けていた。

鈴木は、緊張したまま出口を出る。急いで階段を下り、走って学校を飛び出す。門を出たところで犯人にメールを送った。
鈴木「ちゃんと云われた通り言いました。本当に大丈夫なんですか?」
メールは直ぐに帰ってきた。
メール「大丈夫よ、ハンディ。後は、私が貴子を監視するわ。あなたは、家に帰りなさい。」
鈴木は、不安がいっぱいのまま、家に帰る。後は、犯人に任せるしかない。鈴木の人生は、犯人が握っているようなものだった。

屋上では、貴子の周りに3人が集まっている。

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