羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章36

貴子は答えを出せないまま朝を迎えた。いつも通り下着を着けずに制服を着る。貴子は気付いていないかもしれないが、最近では、もう当たり前のようになってきている。
鏡の前で身だしなみを整え、家を出た。暫く歩くと、不意に貴子を呼ぶ声が聞こえた。振り返ってみると、麻衣達が貴子のもとに走ってきた。
麻衣「貴子、おはよう。」
貴子「おはよう、どうしたの?」
美紀「どうしたのって。。。貴子の事が心配になったから皆できたんじゃん。」

貴子「あ、ありがとう。」
麻衣「どう?」
貴子は、何を聞かれているのか分かっている。
貴子「え? 何が?」
美香「何がって。決まってるじゃない。昨日の答えよ。」
麻衣が美香を制止するように
麻衣「まぁまぁ、貴子にとっては大切なことなんだから、ねっ、貴子。」
貴子「、、、うん。」
麻衣「さぁ、学校行こ。」
麻衣は、貴子の背中を押しながら歩き始めた。美香、美紀の貴子の横を挟むようにして歩く。麻衣は、貴子に他愛も無い話をしながら、時には貴子に笑顔を見せている。貴子は、麻衣達の優しさに嬉しくて、涙が出てきそうになるが気付かれまいと必死に堪えている。
学校の近くまで来ると、麻衣達3人は貴子から離れていく。貴子には分かっていた。麻衣達は、いつも貴子と違うグループにいる。クラスでは、大抵仲の良い者同士が集まり男子女子で数個のグループが出来る。普段は、クラス皆仲は良いが、特に女子の間では本音を話せるのはグループの仲間だけと言う事が多い。他のグループと仲良くすると仲間外れにされる事もある。女同士は、仲間意識が非常にシビアなのである。貴子は、あまり意識していないのだが、周りの女子が陰口を言ったりする事もある。麻衣達は、そのことに気を使って離れていったと、貴子は思った。
貴子は、1人教室に向かう。教室に入る前になぜか緊張してしまう。教室に入ると、ついつい鈴木の席に目がいってしまう。幸い、鈴木はまだ来ていない。ホッと安堵に息をして自分の席に向かった。しばらくして、麻衣達も教室に入ってきた。美香が貴子の方をチラッと見てウィンクをして見せた。貴子は、美香のその仕草に思わず笑ってしまいそうになったが、目を逸らして堪える。しばらくして、奈々も登校してきて、いつものの様に奈々と談笑して時間を過ごしていた。やがて、始業のベルが鳴った。同時に鈴木が教室に現れた。貴子と目を合わす事無く席に着く。
午前中は、特に何も無く過ぎていき、昼休みになった。奈々と校庭で昼食を摂ることになって教室を出て行く。時間を忘れて奈々と一緒に楽しい一時を過ごしていた。午後の始業ベルが鳴り、奈々と慌てて教室に戻る。先生はまだ来ていない。間に合ったようだ。午後の授業を受けていると、あることに気付く。鈴木がいない。いつも教卓の真前の席で俯いて授業の話を聞いているはずなのに。思わず、麻衣に目を向けた。麻衣は、貴子の目線に気付き、携帯を取り出しメールを打ち始めた。貴子は、慌てて携帯を取り先生に気付かれないように着信を待った。
メール(麻衣)「あいつ、帰ったみたいだよ。」授業が始まる少し前に荷物を持って出て行ったから。」
貴子も、見つからないようにメールを打つ。
メール(貴子)「何があったの?」
メール(麻衣)「わかんない。でも、これで放課後の件は無くなったね。」
貴子は、麻衣を見ながら不思議な思いだった。もしかしたら、麻衣達が鈴木に何かしてくれたんじゃないのか、色々考えた。
結局、分からないまま放課後を迎えた。貴子は、帰る支度をしてカバンを持って教室を出る。門を過ぎて、暫く歩くと麻衣達の姿が見えた。貴子は、走って麻衣達の所に行った。
貴子「どうなったの?」
麻衣「さぁ? 私たちも分からないんだよね。」
みんな首を傾げながら、これといった答えも出ないままとりあえず解散する。貴子は家に帰る。家に着き玄関のドアを開けると同時にメールが来た。
メール「お帰り。さぁ、昨日の答えを聞かせて。」
鈴木だ! 貴子は、背筋をゾクッとさせた。貴子は、なんと返せば良いのか分からないでいる。やはり、恥を曝してでも警察に行くべきなのか、でも、今日の朝、麻衣達の私の事を心配して迎えに来てくれた優しさを思い出す。もし、警察に行けば、きっと麻衣達にも迷惑がかかってしまう。どうするべきか迷っていた。
「あんた、何してるの? こんな所で。」
突然、後ろから声をかけられた。貴子は、ビックリして飛び跳ねる。振り返ってみると姉の智子だった。
智子「早く入んなさいよ。」
智子は、貴子の背中を押して玄関に入った。智子は、キッチンに行き、冷蔵庫を漁っている。お目当ての飲み物を見つけると、抱えて2階の自分の部屋に入って行く。貴子は、まだ、靴も穿いたまま目だけが、姉の姿を追っていた。貴子は、智子の部屋のドアが閉まる音で、我に返り再び携帯に目を向けた。知らない間にメールが1通着ている。開いてみると、
メール「答え、まだかな? そうだ、見てほしい物があるんだった。今すぐ開いて見て。」

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊