羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章44

早紀達は、駅前のKデパートから道路をはさんだ向かいのBファッションビルの屋上に来ている。ゴールデンウィークだからか、カップルや家族連れでいっぱいだった。早紀は、ベンチの下の分かりにくい場所に紙袋を置くとBビルを出てKデパートで加奈子を待っていた。早紀は、また携帯を出すとメールを打ちはじめた。
早紀「教えてあげるわ。その後に昨日の答えを聞かせて。」
恵美は、早紀が打っているメールを見て、
恵美「誰に打ってるの?」
早紀「清水よ。」
早紀は、平然と答えた。
実は、昨日の夜、早紀は、あの清水にメールをしていた。
鈴木が調べてきたメールを不審に思って、早紀は直接清水と話をする事にした。恵美から借りている変声機を使って。

清水「はい。」
電話「はじめまして。」
清水「誰?」
電話「智子の彼女よ。」
清水「はぁ? 何言ってんの?」
電話「あなた、智子の彼氏よね。」
清水「だから?」
電話「でも、他の人とも付き合っているわよね?!」
清水「………、お前、誰?」
電話「しかも、医学生って言いながら実は違う。」
清水「………なんなんだ! お前!」
電話「あなたの事、調べさせてもらったわ。あなたも結構、やばい事してるね。」
清水「ふざけるなっ!」
電話「率直に言うわ。私に智子を譲って欲しいの。」
清水「お前、バカか!!」
電話「いいのよ、あなたの事、世間にばらしても。」
早紀は、想像で話をしている。きっと、何かやばい事をやっていると思ったからだ。
清水「………。」
電話「勿論、タダでとは言わないわ。代わりに私のペットを貸してあげる。」
清水「………、ふ〜ん、お前もなんか危ない事やってるらしいな。」
電話「どうかな? で、どうする?」
清水「しかし、お前の正体が分からないと交渉は出来ないな。」
電話「それは、無理な相談ね。交渉決裂ね。あなたの事、公表するわ。じゃぁね。」
清水「ちょっと待て! 不公平すぎるんじゃねえか? まぁ、俺も智子には少し飽きてきた所だし、話次第では譲ってやってもいいがな。」
早紀は思った。この清水は相当やばい事をしているのだと。
電話「私の正体は教えられないけど、私の目的を教えてあげる。明日の午後4時、駅前のBファッションビルの屋上に来て。」
清水「あぁ。」

昨日の会話を皆に教えた。早紀にとっては勝負である。暫くすると、加奈子が現れた。ベージュのワンピースに黒いカーディガンを羽織って腕で胸を庇いながら歩いてくる。
早紀は、メールを打つ。
メール「加奈子へ  少し、ワンピースの丈が長いんじゃない? それにカーディガンって着てきてもいいなんて云ってないわよね。2Fの女子トイレに入りなさい。そして、ワンピースのチャックを半分開けて出てくるのよ。カーディガンがあるからチャックが開いていても分からないわ。」
加奈子は、メールを見て、辺りを見渡している。仕方なく、2Fのトイレに入ってチャックを開いた。とたん、肩口が開いて胸元が大きく開いてしまう。加奈子は、両手で押さえながらトイレを出た。幸い、トイレ内には誰も居ない。加奈子は、鏡の前で手を離してみる。チャックが開いているのは見た目に分からない。少し、前傾姿勢をしてみる。とたんに胸元が大きく開き、加奈子の胸元が大きく覗けてしまう。そこへ1人の女性がトイレに入ってきて、加奈子の姿を見てビックリした顔をしている。加奈子は、急いで胸元を直し顔を隠しながらトイレを跡にした。
メール「いい感じになってるじゃない。分からないわ。では、次に地下の食料品売り場に行って2Lのペットジュースを4本買って屋上まで階段で来なさい。」
加奈子は、何が目的なのか分からない。しかし、云われた通りにするしかない。加奈子は、地下の食料品売り場に向かう。地下入口でカゴを持って飲料売り場で2Lのお茶のペットボトル4本カゴに入れた。カゴに8Lのお茶は、加奈子にとって重たすぎた。重みで思わず前によろけてしまう。カゴを床に置いて休んでいると、周りからヒソヒソ声が加奈子の耳に入った。加奈子は、ヒソヒソ話をしている奥様方の方に目を向けると、蔑む目を向けられていた。加奈子と目が合うとそそくさと加奈子から離れていった。加奈子は、不審に思って自分の恰好を見てみると、ワンピースの肩口から胸元まで大きく開いており豊満なおっぱいを曝していた。見る角度からは、乳首も見えている。加奈子は、慌てて立ち上がり服を直す。もう1度辺りを見ると、加奈子から一定の距離をおいて、蔑む目が幾つもあった。加奈子は、顔を真っ赤にして重たいカゴを両手で持ち上げ肩で服が下がらないように気を付けながらレジに急いだ。

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