羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章48

メモ「今着ているすべての物を脱いでパンティとこのコートだけを羽織って、13階の休憩スペースまで行きなさい。今度は、東側のエレベーターを使ってもいいわよ。但し、手で体を隠すような事はしない事! 手は後ろで組んでおく事!」
もう、思考回路が崩壊しているのか、加奈子は、書かれている通りにトイレで服を脱ぐ事に抵抗は無かった。汚れないよう袋に仕舞うと、パンティは穿く。このパンティは、黒色でメッシュになっている。形もバタフライの様に前の布面積が極小で加奈子の繊毛をすべて隠しきれない程だった。コートの袖に手を入れ着てみた。
前に着いている筈のボタンがすべて取られており、ウエスト辺りで止めるベルトも無い。代わりにベルトを通す所に鈴が左右に1つづつ付いている。加奈子は、手を離して見ると大きく前が肌蹴ておっぱいの谷間が丸見えになる。股間のパンティも微かに見えている。
加奈子は、こんな恰好で店内を歩く事を想像して、また、体中に緊張が走った。心臓の鼓動も速くなり、妙に背中がゾクゾクしてくる。
コートで体を隠して、トイレを出る。休憩スペースにいる男達の視線が集まった。さっきと違う服装に男達はそれぞれに想像していた。それもその筈、この5月の陽気は天気の中、スプリングコートとはいえ、暑過ぎる恰好である。しかも、コートの裾は短く、先程までではないが、太股は半分以上見えている。
加奈子は、両手で胸元も隠しながら、東側エレベーターに向かおうとする。そこにメールが来た。
メール「せっかくだから、サービスしてあげなさいよ。休憩スペースに向かってコートも一瞬だけ開く許可をします。加奈子のイヤラシイ姿を見てもらいなさい。」
加奈子は、自分から進んでこんな事をしているのだろうかと錯覚してしまうようなメールだった。メールを読んだとたんに、全身に電気が流れるような感覚を覚えた。でも、加奈子は、抵抗する事も無く、休憩スペースに向かって、一瞬コートを開いて見せた。時間にして、1秒も開けていない。アッと言う瞬間だった。しかし、加奈子にはとてつもなく長い時間に感じられ頭の中にまで電気が流れるような感覚だった。きっと加奈子の体の中で何か新しいものが生まれた瞬間だったのかもしれない。
加奈子は、顔を赤くして俯いたまま、急ぎ足で東側エレベーターに向かった。休憩スペースでは、目を丸くした男達が走り去っていく加奈子の後姿を見つめるだけだった。残ったものは、美女の裸の残像と鈴の音だけだった。
加奈子は、エレベーターに急いだ。
加奈子は、両手でしっかり胸元を隠しているが、小走りで来た為に、股間を隠すはずのコートが左右にはだけていた。先にエレベーターを待っていた数人の若い女性は、怪しい恰好で鈴の音をさせて走ってくる加奈子に冷たい視線を向けた。股間のメッシュパンティに気付いた若い女性は、軽蔑の眼差しで加奈子を睨んでいる。エレベーターの前に着いた加奈子は若い女性達の後ろに並んで待った。
エレベーターが来て、加奈子は、若い女性達の後について乗り込んだ。中では、みんな女性ばかりで入口に近い場所に乗っていた。
このエレベーターは、ビルの外に飛び出しており、半分以上がガラス張りになっていて外から丸見えなのである。あまりにも丸見えすぎる為、スカートを穿いた女性はみんな入口側に立つ事が多い。加奈子は、自然と一番奥に立った。
加奈子は、外に向かって立っていた。エレベーターが閉まり動き出す。加奈子は、両手を胸元から外して、後ろで組んだ。コートが少し下がり胸元が大きく開く。加奈子は、外の景色を見ながらこんな恰好で乗っている事が信じられないでいる。エレベーターは、各階に止まり、その度に人が入れ替わり乗り込んでくる。しかし、加奈子を不審者のような目で見るものはいるが、声をかけてきたりする者はいなかった。12階で扉が閉まった時、又メールが来た。

メール「あと1階分は、入口に向かって立ってみたら。きっと、楽しいよ^^」
悪魔の誘いだった。しかし、加奈子は背筋をゾクゾクさせてゆっくりと向きを変えて立った。そこには、7階で一緒に乗り込んだ若い女性たちだけが乗っており、ギョッとした目で加奈子を見る。汚らわしい物を見るような目つきでヒソヒソ話をはじめた。狭い個内、加奈子の耳にも聞こえてくる。
――なに、あの恰好、恥ずかしくないの?――
――頭、悪いんだよ。――
――みんなに見られて喜んでるんだよ。――
――痴女ってヤツ。ほんとにいるんだ。――
――股間見てよ、毛が見えてるよ。毛深いクセにあんな小さいの穿いて。――
――しかも、透けてるし、いいオバサンがなにやってんのよねぇ――
加奈子にまで聞こえる程、遠慮の無い発言に加奈子は、ジッと俯いたままだった。
――何しに来てるのかしら――
――あんな恰好で男でも漁りに来たんじゃない。――
――見っとも無いわねぇ――
――あんな女に引っ掛かる男、いるの?――
――どんな男でもいいのよ。――
――きっと、病気持ちね。きたな〜い。――
加奈子は、聞こえてくる声がすべて心に刺さって眩暈を覚える。しかし、背中で感じるゾクゾク感は更に加速していく。もう、足の震えが止まらず、しゃがみ込みそうになるのを必死に堪えていた。
13階に着き、ドアが開く。誰も乗ってこない。しかしドアは開いたまま。加奈子が行き先階を押したから止まっているのだ。加奈子は、降りようという気持ちはあるが、脚の震えが止まらず、今だ動けないでいた。若い女性は、加奈子を睨みつけ
女性「降りるんでしょ。さっさとしてよね。」
冷たく言われ、加奈子は体を振るわせた。申し訳なさそうに頭を下げながら、体を前に倒すようにしてエレベーターから出る。
後ろでドアが閉まり加奈子は、両手で胸元を押さえながらしゃがみこんだ。遠巻きに客達の視線を感じ、立ち上がった。みんなにとっては休憩スペースかもしれないが、加奈子にとっては羞恥スペースだが、行くしかない。加奈子は、休憩スペースに向かった。前に見えてきた所で、メールが来る。
メール「楽しかったでしょ。今度は、女性じゃなく男にもちゃんと見せてあげなさい。ロッカーにさっきまで着ていた服とキーを仕舞って鍵を掛けなさい。その鍵は、横にある観葉植物の鉢の中に隠しなさい。その時、休憩スペースに向かって、顔を上げたまま手は後ろで組んだまま、鍵を落とすのよ。ちゃんと見つからないようにやるのよ。出来たら、屋上まで、階段で上りなさい。但し、コートは持っては駄目ですよ。前かがみになって上るときっと気持ちよくなれるよ。じゃ、屋上で待ってるから^^」

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