羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章49

加奈子は、襟元をしっかり持ったまま休憩スペースに入っていく。休憩スペースにいる数人の男性の目が加奈子に集中していた。綺麗でスマートな、しかし、巨乳を隠しきれていない美女が太股を大胆に露出して目の前を通り過ぎる。目がいかないわけが無かった。
加奈子は、とりあえずロッカーに荷物を仕舞い、鍵を掛ける。
加奈子の動作をそこにいるすべての男性が見つめている。
突然、加奈子が皆の方に向きをかえた。加奈子を見続ける者も居れば目を逸らす者もいる。
加奈子は、もう催眠術にでもかかっている様に指示された通り、休憩スペースに向かって手を後ろで組んだ。自然とコートの前がはだけていき、胸の谷間がすっかり見えている。辛うじて乳首は隠れているが、ノーブラであるのは誰が見ても分かる。下も、黒いメッシュパンティが見えており、近くにいる若い青年には透けて繊毛が見えている。突然の出来事にみんな目を丸くして加奈子を見ていた。加奈子の目は、焦点が合っていないのか空を彷徨っている。時間にして数秒だった。加奈子は、鍵を植え込みに落とし手を前に持ってくると胸元を正し、休憩スペースに背を向けて階段のほうへ歩いていった。
そこにいる男性陣は、何が起きたのか理解できないまま、歩き去っていく加奈子の後姿を見つめていた。
階段まで来た加奈子は立ち止まり、階段上を見つめていた。
――何、この緊張感。背中のゾクゾク感、そして清清しさ。頭がクラクラしてくる陶酔感。なんなのこれ? こんなのはじめて。――
――この階段を屋上まで、コートを肌蹴させたまま上がっていく。気持ち良い?――
加奈子は、胸元の手を離し、一段目に足をかけた。胸の谷間が現れ、太股が大きく覗いた。脳に電気が走る。続けてもう一段上がる。また、反対側の足の太股の付根まで見えた。加奈子は、自分の太股を見つめていた。
客「きゃ〜〜〜!」
上から、若い夫婦らしい子供連れが降りてきた事に気付かずにいた。
女性は、加奈子の姿を見て思わず叫んで子供を抱きこみ見せないようにしている。男の方は、加奈子の胸元から谷間から先の乳首まではっきり見て取れる為、目を丸くしながら見つめていた。
加奈子は、ハッと顔を上げた。若い夫婦に気付くと、駆け足で夫婦の横を通り過ぎていく。あまりに勢いがいい為、加奈子が着ていたコートが殆ど捲れ上がり半裸の姿を夫婦に見せつける形になった。通り過ぎる手前で、メッシュのパンティに気付いた男は、瞬きもせず食い入るように見ている。
通り過ぎると、女性は片手に子供を抱え、男性の腕を掴んで逃げるように降りていく。男性は、名残惜しそうに加奈子の後姿を見つめながら女性に引っ張られて降りていった。
また1人になった加奈子は、その場で深呼吸をした。
加奈子は、少し休んだ後、また屋上を目指して上りはじめた。今度は、前をしっかり見て一歩一歩ゆっくりな動作で上っていく。
その後、誰とも会わないまま14階を過ぎると、加奈子は、カバンとペットボトルの入った袋を左手で抱え、右手をコートのポケットに入れた。加奈子は、コートに入れた手を右に開いていく。当然、コートの裾は開いていき、おっぱいが完全に露出する。黒のメッシュパンティも隠すものが無くなり光を受けて光っていた。

加奈子は、自分でも何をしているのか分かっていない。分かっているのは、こうすると背中のゾクゾク感が増し、全身に電気が流れるような不思議な感覚が得られる事だった。
加奈子は、このままの恰好で歩き続ける。屋上が近づき外の光が見えてくると、屋上で談笑している声が聞こえてくる。加奈子は、開いていたコートを戻し、手をコートからだして最後の一段を上った。
加奈子は、緊張と快感の狭間に居て顔が紅潮したままドアの前に立っていた。目の前には、沢山の人がおり、加奈子は胸元を隠しながら屋上へのドアを開ける。ドアを開けた時、加奈子の周りに強い風が吹き込みコートの前が捲くれ上がる。咄嗟に手で押さえたが、一瞬加奈子の股間が白昼の光に包まれた。加奈子は、顔を俯けたまま外に出る。
一瞬だったので、瞬間を見た者が居たのか、加奈子には分からないが、それだけでも加奈子にとってはかなりの羞恥心が現れる。
ドアのところで立ち尽くす加奈子にメールの着信音が鳴る。
メール「ようこそ、加奈子さん、どう? 楽しかったでしょ?今まで気付かなかった加奈子さんが発見できたんじゃないかしら? せっかく楽しい恰好で来たんだから、記念に写真を撮って送って。バックに人が写るように撮るのよ。なんなら誰かにお願いして撮ってもらってもいいわよ。」
全身に快感を覚えたまま、加奈子は辺りを見渡して写真を撮る場所を探す。
――誰かに頼む? でも、でも、でも、どうしよう? でも、――
加奈子は、誰かに撮って貰おうかと真剣に悩んでいる。しかし、声をかけるまではいけない。フラフラと屋上を歩き回り、壁に辿り着く。加奈子は、携帯のレンズを自分に向けてコートを少しだけ開いて写真を撮った。再生してみると、加奈子の紅潮した顔と鎖骨までの写真だった。もう1度、今度は、出来るだけカメラを離しシャッターを押す。
今度は、加奈子の腰までの写真が撮れた。おっぱいがハッキリと写っており、加奈子の顔は、自分でも見たことが無いようなうっとりとした表情だった。
加奈子は、写真をメールに添付して送る。
暫くして、メールが帰ってくる。
メール「綺麗に撮れているわ。イヤラシイ加奈子の顔も素敵よ。では、次に、今の感想を送って。」
加奈子「分かりません。もう、何も考えられません。」
メール「恥ずかしい?」
加奈子「はい。」
メール「でも、気持ちいいでしょ?」
加奈子は、返信できないままでいる。
メール「気持ちいいんでしょ?! 正直になりなさい。あなたの顔にはそう書いてあるよ。さぁ、正直に云ってごらん。」
暫く、迷った挙句、
加奈子「はい。」
メール「そう。良かったわね。じゃあ、今度は、声に出して言いなさい。そうね、あなたの隣にいる女性達に聞こえるように、言いなさい。」
加奈子は、隣を見る。そこには、大学生風の女性が数人集まっていた。その1人と目が合う。加奈子は、俯き目を逸らした。
メール「どうしたの? 出来ないの? 正直に自分を解放しなさい。素晴らしい快感が得られるわよ。」
加奈子は、女性達に向かって口を動かした。
加奈子「私は、恥ずかしいけど、気持ちいいです。」
加奈子は、自分で何を云っているのが分かっていない。しかも、声が出ているのかどうか、その程度の声量だった。

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