羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章66

加奈子は、静まり返ったトイレの中でこれからどうするべきなのか考えていた。
加奈子(どうやって帰ろう。)
個室内を見渡すと、何処にも服らしい物がない。床に転がっているのはさっきまで加奈子を拘束していた縄だけだった。どうしようかと天井をボンヤリ見つめていると、突然携帯のメロディが鳴り出した。
加奈子は体をビクッとさせたが、流れてくるメロディが加奈子のメール着信音だと気付き音の方を見る。しかし、携帯は見当たらない。よく聞くと隣の個室から流れてきているようだった。
加奈子(隣に誰かいるの?!)
静かに隣の個室の様子を窺うが全く人の気配は感じられない。携帯のメロディも最後まで流れ出た様子も無い感じだった。
加奈子(もしかしたら隣の個室に服とかも置いてあるのかしら。)
加奈子は微かな期待を持って隣の個室に行こうと立ち上がる。
足に力を入れ立ち上がる瞬間、加奈子の肛門に鋭い痛みが走った。
思わず声を出して正座をするような恰好で座り込んだ。
加奈子の肛門には今だ棒が刺さったままになっていた。
恐る恐る棒を引き抜いていく。幾つかのコブが肛道を通るたびに痛みと背中をゾクゾクされる怪しい感覚が加奈子の体を襲った。
声を押し殺しながらゆっくりと抜く。
ようやくすべてが抜けた時、加奈子は、全身に汗をかいていた。
加奈子も気付いていないかも知れないが、汗以上に加奈子の股間は夥しい程に濡れそぼって床に雫を垂らしていた。
加奈子は、棒を床に投げ捨てて立ち上がる。
ドアを少しだけ開けて誰も居ない事を確認すると個室を出て隣の個室の前に移動した。
隣の個室はドアが閉まっており幾ら押しても僅かしか開かない。開いたドアから個室の中を覗くと奥の壁に加奈子の携帯がぶら下がっているのが見えた。携帯の下にメモが張ってあり
メモ【この個室のドアはこれ以上開きません】
と書かれている。
加奈子は、ドアに背中を押し当て、左足を僅かだけ中に入れ、左手を大きく伸ばし携帯を掴もうとする。
加奈子は必死に手を伸ばしている。何処にこれ程の血ガラが残っていたのだろうかと思うほどだった。
加奈子本人は必死なのだが、様子を見ている早紀達には声を出して笑い出してしまう程滑稽な恰好を曝していた。
左足は爪先と膝が僅かに個室に入っているが右足は反対側に大きく足を開いた状態で伸び、左手は肩まで個室の中に隠れているが右手は反対側にピンッと伸びている。
背中は、ドアに押し付けられているが、左肩を個室に入れている為に胸を前に押し出すような恰好になっている。
少し腰を落としている為、股間の繊毛から加奈子の恥肉が公衆トイレの薄暗い蛍光灯でも見て取れた。
ようやくにも掴む事が出来た加奈子は、携帯を持って最初にいた個室の中に入りメールを開いた。
メール「今日は、これでおしまいよ。また、遊びましょうね。」
内容はそれだけだった。
加奈子(おしまいって、私の服は? どうやって帰ればいいの?)
加奈子はメールを打つ。
加奈子「私の服を返して下さい。」
メール「あなたには、ペナルティがあったはずよ。今日はそのまま帰りなさい。って、言いたいけど、あまりにも可哀相だから返してあげるわ。この公園の何処かにあなたが着ていたコートを置いておきます。あなたのだって分かるように写真も付けて置きましたから。誰かに持っていかれる前に見つけなさいね。そうそう、今日使った縄やおもちゃは大切にするのよ。キレイに洗って保管しておくようにね。」
メールには写真が添付されていた。

添付されていたものは、加奈子が前に全裸で股間を広げたままカメラに向かって作り笑顔を見せている写真だった。
加奈子の顔が蒼白になり慌てて個室を飛び出した。トイレの入口まで来て足が止まる。
トイレの前は、蛍光灯が煌々と入口を照らしており、遠くからでも人の存在が確認できるだろう。
加奈子は、入口の壁に体を隠すようにして顔だけを外に出し誰もいないのを確認する。
辺りは、もう真っ暗闇に包まれており、横の車道には外灯が燈っていた。
次に、隠れられそうな場所を探して、加奈子は意を決して走ってトイレを出た。
近くにあった大きな木に体を隠しながら周りを見渡した。
夜とはいえ、ここは駅から近くまた、大きな道路の横にある為、まだまだ人の存在が確認できる。現に今も加奈子の目の先の歩道には、数人のサラリーマンが歩いていた。
加奈子(どうしよう。こんなに人がいるのに、私……、こんな恰好で……)
加奈子は、今自分が全裸で公園内にいることが信じられないでいる。しかし、肌を通り抜けていく風が、全裸でいる事を証明していた。
歩道を歩く人影が途切れるのを確認すると、加奈子は公園の中にあるベンチの方まで走っていった。
ここは、昼間加奈子が見知らぬ女性達に羞恥攻めを受けていた場所だった。
ベンチの周りに囲いがあるので、体を隠すには良い場所だった。
加奈子は、囲いから顔だけを出して公園内を見回す。
加奈子(何処? 何処にあるの? あんな写真が誰かに見られたら……、早く探さないと。)
見回してもなかなか見つからない。焦る、焦る、焦る。
すると、商店街側の入口近くに立つ大きな木があり、その木の上の方で風にそよぐ物を見つけた。
加奈子(あった!! ええぇっ? うそっ! どうしよう!?)
加奈子は、見つけた嬉しさもつかの間、あった場所が問題だった。
その木は、商店街の真横に立っており、木の直ぐ横には外灯も燈っている。
商店街には、多くは無いけれど、でも、数人は道を歩いていた。
加奈子は、考えても仕方がないと、行動に移す。公園の中央は大きな芝生の広場になっており体を隠すような場所が無かった為、遠回りになるが公園の縁を回っていく事にした。縁には沢山の木が茂っており、目的の木まで見つからずに行けそうだった。
横の道路を歩いている歩行者に気をつけながら、公園の奥の茂みまで移動して、ゆっくりと広場を回りこむように目的の木の10m手前まできた。
後、ここから目的の木まで隠れるような場所も無い。
加奈子は、ジッと着の上で風になびいている布を見つめていた。

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