羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章67

商店街の道にはまだまだ人が通っている。
駅から横の大通りの先にある住宅街まで行くには、この道が近道なので比較的商店街の中でも人通りが多い通りなのだ。
加奈子は、茂みから出るタイミングが無く体を隠している木に抱きついたまま動けない。
目的の木まで辿り着いたとしても完全に体を隠せるほど大きな木ではない。しかも、布は木の上2m程の高さでゆれている。
加奈子は、人が途切れた瞬間に飛び出した。しかし、遠くから駅に向かって走ってくる人影を見つけて、咄嗟に木を通り越し、通りと公園を仕切る高さ50cm程のブロック塀に身を隠した。
隠したといっても、もし誰かが公園内に入ってきたら、加奈子の全裸姿は丸見えだった。
加奈子は、小さく丸まったまま動けないでいる。
足がガクガクと振るえて、心臓が飛び出しそうなぐらい早鐘を打っている。
木が目の前1m先にある。
加奈子(どうしよう……、どうやって取ればいいの。)
ふと公園の入口を見ると、折畳みの式の脚立らしきものが見えた。
加奈子は、四つん這いになって入口の方まで這って行った。なるべく背を低く、おっぱいの先が地面に付きそうな位低く。
脚立は、3段で高さが60cmほどあった。
加奈子(これなら取れるかも……)
加奈子は、脚立を引き摺りながら木の前まで戻ってきた。
加奈子(でも、どうやって上げればいいの?)

ここからでは、通りの様子が見えない。
ゆっくりと顔だけを塀の上にあるフェンスに近づける。しきりに頭を左右に動かし様子を見る。幸い、誰もいない。駅方面の遠くに数人の人影が見えるが、ここまで来るのにおよそ1分位はかかるだろう。
もし、さっきみたいに反対側から誰かが来たらおしまいだ。
加奈子は、一瞬躊躇したが、こんなチャンスもなかなか無いだろう。いつまでもこんな所にいるわけにも行かない。
加奈子は、急いで木の前まで行くと脚立を開き登りはじめた。一番上まで登ると不安定な脚立はフラフラと揺れる。加奈子は、片手で木を持ち体勢を支えながらもう一つの手を伸ばし布を掴み引っ張った。
加奈子(あれっ? 取れない?! 枝が絡まってる! いやっ! お願い! 外れて!!!)
支えていた手も布を掴み振り回すように引っ張った。
何度か引っ張った時、ようやく枝が外れコートを取る事が出来た。
ふと通りを見ると、ホカ〜ンと口を開けて加奈子を見つめる初老のサラリーマンと目が合った。
加奈子「………!!! あっ!!!」
加奈子は、コートで体を隠すようにしながら脚立から飛び降り公園の広場を横断しながら奥の茂みの方に走ってく。
左右にクネクネと揺れている大きなお尻を曝したまま。
サラリーマンは、加奈子の後姿を見つめたままだった。

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