羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章75

女は、その場でしゃがみ込む。
それまで俯いていた顔が、しゃがんだ拍子に石田に正面を向く形になり自分の素性をばらす結果となった。
石田「………?!! あ“!!」
女性の顔を見て思わず声を出しそうになった石田は、両手で口を押さえ言葉を飲み込んだ。

―― まさか! あれは、3年生の智子先輩?    まさか.....――
石田は、身を乗り出すようにしながら目を細める。
―― 間違いない!! 智子先輩だ!!――
学校内ではほとんどの生徒が智子の存在は知られていた。
スポーツ万能で、特にクラブ活動では全国大会でも活躍する程の才能を有していた。
全国大会に出場する時は、学校中を挙げて壮行会が開かれ、また、大会結果も全校生徒の前で報告され、智子の活躍ぶりは全盛との知るところになっていた。
そんな智子に好意を持つ生徒も多く、この石田もまた、憧れている一人だった。
石田は、半信半疑で目の前で繰り広げられている智子の痴態を眺めていた。
ふと、石田は、カバンから何かを取り出す。一際体を小さく丸まったかと思ったら、目の前で何かを構えはじめた。デジカメだった。


そんな石田に見られているとも知らず、智子は、スポーツで鍛え上げた、また、日ごろから欠かすことの無い手入れによって素晴らしい体を夜空に晒している。
智子「ねぇ、清水さん、もう止めようよぅ、誰かに見られたら恥ずかしい。」
清水「大丈夫だって、ちゃんと俺が辺りを見回しておくから。」
智子「……、でも。」
清水「智子は恥ずかしがり屋さんだな。じゃあ、これを付けたら?」
フェティッシュマスクを差し出す。
智子は、それを受け取ると自分の顔にあてがった。
智子『どう?』
清水『いい感じじゃん。これなら智子だって事、ばれないな。』
智子『ほんとに? ふふふっ、よかった。』
清水『よし! じゃあ、そのマスクに合う格好になろうか!』
智子『えっ?!』
清水は、智子が体に唯一羽織っていたスプリングコートを脱がしはじめた。
智子『えっ! えっ! ちょっと待ってよ。どうして?』
清水『どうせならもっとスリルにドキドキする様にしよう。どうせ、智子とは誰も思わないだろ?!』
智子『えっ! でも、恥ずかしい。』
清水『大丈夫! 智子も感じているんだろ。正直になれよ。もっと大胆に、こんなチャンス滅多に無いぜ。なぁ! 楽しもう!』
智子自身、体が昂奮しているのは自覚している。しかし、体がこわ張ってしまう。
清水『大丈夫。ずっと側にいてやるから。』
その言葉で腕から力が抜けていった。
スプリングコートの袖を掴んでいた手も緩んだ。
清水は、ゆっくりと智子の肩からコートを脱がしていった。
夜風が智子の体を包みこむ。
智子『はぁ。。。。』
清水は、脱がしてコートを後に放り投げると智子を立たせる。
智子は、腕を胸の前で交差させたまま、マスクをした顔を左右に振り「いやいや」をするような仕草を見せるが、清水に促されるまま立ち上がった。
暗闇とはいえ、月明りで辺りの様子は伺える。
今、膝くらいまでは草むらに隠れているが、その上は何も隠す物がない。
清水は、智子の腕を軽く叩いて下げる様促した。
智子も意味を理解したのか、ゆっくりと腕を下げていく。
後から抱く清水には、智子が小さく震えているのがよく分かる。
清水が智子の耳元で囁くと、小さく頷いた。智子は、夜空を抱きこむ様に両手を広げ、足を肩幅大に開き、胸を突き出した。
清水『気持ちいいだろ。』
智子『何か不思議な感じ。』
――どうしちゃったんだろう? 恥ずかしいのにすごく気持ちいい!――
清水『今の姿誰かに見られてるかもな。』
智子『いやっ!』
智子は俯いて、手で体を隠そうとした。
しかし、後ろから清水が智子の二の腕を持ち
清水『ダメだよ、下げちゃ。大丈夫、マスクを付けているんだから。普段の理性に惑わされた智子じゃなく、本当の素の智子を出してみろ。大丈夫、誰も何も言わないしバレないさ。ここには、智子と俺だけしかいないよ。』
智子『…』

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