羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章78

智子は、茂みから100メートル程進んだ所で立ち止まった。
清水の方に目をやる。清水は、さっきと変わりなく煙草を咥えて智子が来るのを待っている。
智子は、なかなか足が進まない。
当然である。
ここから残り200メートルは、街灯の光が照らしている道なのである。
さっきまでの100メートルは、暗闇が智子の身体を隠してくれていたが、この先からは智子の身体を隠してくれるのはタオルのみ。
智子は、背中を更に丸め、意を決して足を進めた。前髪で顔を隠しながら、少し早足で清水の元を目指す。
残り50メートル、少し安心したのか清水に笑顔を向けながら早歩きする。
突然!
『キャーーー!!』
智子は、声のする方をチラッと見たが、急いで清水の元まで走った。
清水もびっくりしたのか、智子の手を掴むと茂みの奥へ引っ張っていく。
暫く、清水と智子は茂みの奥でジッと息を潜んでいた。
誰の気配も感じない。
清水「びっくりしたぜ。誰かに見つかったかと思った。」
そう言いながら、智子に服を渡す。
智子は、何も言わず顔を紅潮させたまま下着から身に着けていった。
すべて着終わると、2人は何事も無かったかの様に手をつないで公園を出ていった。


早紀と恵美は、まだ隠れたままでいる。
この公園内にもう一人隠れている人物がいるからだ。
その人物は、ちょうど石田がいた場所の対照位置に隠れている。
池の中島へつながる橋の斜め横の茂みの中。
その人物も智子を知っているし、さっきまでの智子の痴態をつぶさに見届けている。
さすがに写真を撮る余裕は無かったかのようだが。

智子と清水が公園を去ってから、5分経ち、10分経ち、20分が過ぎようとした。
橋近くにいた人物がようやく動き出した。
当たりをキョロキョロと見渡し、走って公園を出て行った。

ようやく早紀と恵美は合流する。
早紀「どう? ちゃんと撮れてる?」
恵美「大丈夫だと思うよ。ところで、さっきのは誰? 早紀に言われなかったら全く気付かなかったよ。」
早紀は、智子達が帰るのを待っている間に、恵美にメールを送っていた。
早紀「意外なお客さんが現れちゃった。」
恵美「えっ! 誰? ダレ? だれ?」
早紀「石田の彼女!!」
恵美「えーーっ! それってやばいんじゃないの?」
早紀「なんで?」
恵美「だって石田もここに居たんだから、奈々に見つかってるって事でしょ?!」
早紀「うぅ〜ん、たぶん大丈夫だよ。だって奈々が居た場所は、石田の真反対、暗闇と中島の草木で見えていない筈。石田だって見つからないよう隠れていたわけだし。」
恵美「そっか。で、どうするのよ?」
早紀「こんなチャンス、使わない訳ないでしょ。見てよ、これ。」
早紀は、手に持っているデジカメ画像を恵美に見せた。
恵美「なに? よく分からないんだけど?」
早紀「何って、奈々だよ。よく見て。」
画像をアップにしていくと、奈々らしい顔が写っている。下にスクロールしていくと不自然な位置に手がある。
恵美「これって? もしかして?」
早紀「そっ! 間違いないね。」
カメラをポケットにしまうと、
早紀「明日から楽しみだね。」

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