羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第二章84

恵美「あらあら、まるで盛りのついたネコね。あんなに腰を振っちゃって。あの声じゃあ、誰か来たら間違なくなく見つかるわね。」
早紀「本当ね。あの声に誘われて誰かやってくるわよ、きっと。」
恵美「?。もしかして、何か仕掛けてあるの?」
早紀「もう少ししたら分かるわよ。」


しばらくして早紀は、公園と神社をつなぐ側道に人影があるのに気付く。
早紀「ようやく来たようね。」
早紀は、指を指して恵美に伝える。
恵美「えっ? 誰? あれ?」
小さいその影は、静かに、そしてゆっくりと大きくなり、ボヤッとしていた輪郭は、徐々にはっきりと現れしてきた。
恵美「あれ?! って、もしかして、貴子?」
早紀「ふふふ、そうみたいね。露出の匂いを嗅付けてやってきたのかな?」
恵美「ちょっと、そんな呑気な事言ってていいの? やばいんじゃないの!?」
早紀「大丈夫! 貴子の成長ぶりを確かめようと思ってね。まぁ、おとなしく見てなさいって。」
そういうと早紀は、携帯を取り出した。


――――今日は何をやらされるのだろう?――――
肩を落としながら指定された境内に向かう貴子。
神社の入口で立ち止まる。
――――何? 誰か居る!?――――

貴子は、ゆっくりと境内に近付く。
――――………、裏からだわ。――――
貴子は、横へ回って裏を覗こうとする。
しかし、その先からは、鼻息や息遣いがはっきりと聞こえ、すぐ間近で何をしているのか気付いた。
貴子は、どうして良いのか分からずその場から動けないでいる。

暫く聞耳を立てていたが、やはり今着ている格好とこの近過ぎる状況を何とかしなければ! と思い、静かに後ずさった。
境内からも離れ、入口近くで隠れた。
耳を澄ませて、もう一度声を聞こうとする。
――――さっきの声、何処かで聞いた事があるような……。――――
思い出せない。
しかもここからでは、気配は感じるが声までは確認出来ない。
そこへ一通のメールがきた。
「何をしてるの? 早く神社の境内に来なさい。」
今日、ここへ来るよう呼び出したいつもの脅迫者。
もしかしたら、わざと見させる為に…?、
貴子「入口に居ます。これ以上は、近付けません。人が居ます。何処か別の場所にして下さい。」
それでも貴子は、変更をお願いした。

「は? 何処に誰がいるの?」
貴子「境内の裏に人が居ます。」


「あらっ、ほんとね。しかもイチャついちゃってるじゃない。折角だから貴方も見学させてもらいなさい。ついでに、写メで記録しときなさい。その画像を転送するように。」
とんでもない要求だ。
貴子は、当たりを見渡し犯人を探すが見つかる筈もない。
ふと、目の先に小さな鳥居と祠が見えた。
ふちにそって祠に向かう。
祠からだと境内の裏が丸見えだった。
しかし、距離もさる事ながら夜で街灯もない為、真っ暗で人物を見定める事が出来ない。
暫く目を凝らして見ていたが、突然、入口の方で人の話し声が聞こえ振り向く。

酔っ払いのサラリーマンが二人。
大きな声を出しながら境内の正面に座り込んだ。
裏に居る二人も気付いて様子を伺いながら、慌てて服を直していく。
直し終わった後も聞耳を立てて逃げる気配は無い。
程無くしてサラリーマン達は帰って行った。
石田は、緊張を拭き消す様に大きく息を吐いた。
奈々は、まだ心臓を煽る鼓動が治まらない。
その原因がサラリーマン達なのか別にあるのか、奈々自身も理解していないが。
神社に静寂が戻り、石田は奈々の手を掴むと表に回る。
石田は、イケていない。
しかし、さっきの様な危機の後で下半身も萎縮している。
石田「もうこんな時間だから、今日はもう帰ろうか。」
奈々「………うん。」石田は、俯いたままの奈々の顔を上げさせると唇に軽くキスをした。
その後、二人は肩を組んだまま神社を跡にする。

貴子は、静かに入口の方へ回り写メを撮る。
しかし、この暗がりでこの距離。ちゃんと撮れるはずがない。
入口に向かって歩いて来る二人に気付き身を隠しながら二人を見る。
貴子「?!!!?!! えっ!!!?」
思わず声が出そうになった。
――――まさか!? そんな! な、な、ちゃん?? どうして?――――
信じられなかった。
まさか、あの奈々ちゃんが、普段の奈々を知っている者であれば絶対に想像出来ないだろう。
唖然としたまま、二人の後ろ姿を見送った。
人違いであってほしい。
そう心の中で願いながら。
姿が見えなくなった処で、携帯が鳴った。
「どう? 写メは撮れたかな? 早く返送しなさいよ。」
貴子「暗過ぎて、撮れませんでした。」
「まったく役に立たないわね。じゃあ、これをあげるわ。」
メールと一緒に写メが送られてきた。
開けると、さっきの奈々の痴態の写真が数枚あった。
石田と奈々が絡み合っている写真やキスをしながら胸を揉んでいる写真、驚いて慌てて服を直している写真、どれもこれもハッキリと顔が写っている。
「その子の名前を教えて。あなた知ってるわよね?!」
貴子は返事が出来ない。
「知ってるけど、答えたくない、かしら?」
見透かされている。
この犯人が鈴木の仲間なら知ってて当然である。
「ふふふっ、まぁいいわ。今日は帰ってもいいわよ。ただし、近日中に貴方のHPに今日の事を書きなさい。勿論、写真付きでね。私があげた写真、全部貼るのよ。それぞれにコメントを付けるのを忘れないでね。」
貴子は、ただただ立ち尽くすのみだった。

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