羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第三章12

★ 清水に代わって

7月の中頃、清水は夏季合同研修・研究会に参加する為、関東に長期間出張する事になっている。
当然、そんなものは無いのだが、智子を信用させる為のウソである。
清水「じゃあ、行ってくるから。1ヶ月は帰れないと思うけど。」
智子「うん。仕方ないよね、頑張ってきて!」
二人は軽いキスをした。
清水は、部屋を出て行く。清水の部屋の鍵は智子に渡してあるのだ。

智子「いいの?」
清水「何か問題でもあるかい? 大丈夫だろう、トラストミーじゃなくトラストユーだ。」
智子「ふふふ、じゃあ、預かっておきます。」
清水「あぁ、よろしく!」

智子は、簡単に部屋を片付けと掃除をしてから鍵を閉めて家に帰った。



少し前までは、当たり前のように毎日会ったり電話をしたりしていたのに、徹夜続きの研究も兼ねていので、この期間は連絡が殆ど取れないそうだ。
今日で丁度一週間が経つ。智子は、会えない日を寂しく過ごしていた。すると、携帯が鳴った。
清水からだ。
智子「はい!」
清水「やぁ、久しぶりだね、元気かい?」
智子「はい、でもちょっぴり寂しいかも。。でも大丈夫です!」
清水「そう、それはよかった。」
智子「そうそう、今日ね、お部屋を掃除してきちゃった。勝手に入ったら悪いかなぁと思ったけど、ほら、一週間も放ったらかしだし、空気も入れ換えた方が良いなぁって。ごめんね、勝手な事して。でも、机とか本棚とか、あと、えっと、触ってないから。」
清水「そう、ありがとう。鍵を預けておいて正解だったね。」
智子「えっ! そんなぁ、ありがとうだなんて、嬉しいかも! で、今日は休みなの?」
清水「実は、智子にお願いがあって。」
智子「なになに? 何でも言って。」
清水「智子は明日の土曜日は休みだよね?」
智子「うん、そうだけど。」
清水「僕の部屋に黒いカバンがあったと思うんだけど、窓の下辺りに。」
智子「あ! うん、あったよ。でもカギがかかってて、あっ……!」
清水「ふふふ、そう、そのカバンなんだけど、大事な研究の資料が入っているんだけど持ってくるのを忘れてしまって、取りに帰る時間も取れないんだ。こっちまで持ってきてもらえないだろうか? こんな事を頼めるのは智子しかいないんだ。」
智子「えっ? うん、いいよ。もって行ってあげるよ。」
清水「そうか、ありがとう!」

翌日、智子は朝早くシミズの部屋に行き、カバンを持って駅に向かった。
お昼過ぎ位に清水と待ち合わせをした上野駅に到着した。
智子は、清水に電話をする。
智子「もしもし、今上野駅に着いたよ。どこに行けばいい?」
清水「ごめん、急に研究が入ってしまって。夕方には抜けられると思うけど。」
智子「えっ? そうなの?」
清水「すまない。カバンはロッカーに仕舞っておいて夕方まで待っててくれないか?」
智子「うん、カバンは持ってるよ。」
清水「いや、ロッカーに入れておいてくれ、まだ、未発表の資料なんだ。もし、盗まれたら困る。智子を信用していないわけじゃないよ。ここ東京は智子が住んでいる町よりもはるかに治安が悪い。特に窃盗や置き引きなんかは日常茶飯事に起きている。だから、念の為にもロッカーに入れておいてくれ。中央改札口の横にコインロッカーがあるから。あそこなら、交番も近いし安心だ。」
智子「分かった。じゃあそうする。中央改札口ね。そこに仕舞っておきます。」
清水「ありがとう、カバンと一緒にポーチも持ってきてくれた?」
智子「持ってきたよ。」
清水「その中にお金がいくらか入っているから、少し買い物でもしてくるといい。また、夕方連絡を入れるよ。じゃぁ。」
そう言うと、返事を返さないまま電話が切れた。

智子は、新宿や渋谷など、歩き回った。
けど、何も買わないまま夕方になった。
人が多すぎるのと、東京のテンポに合わないのと、いろいろな理由で疲れてしまっている。
そこに電話が鳴った。
清水「お待たせ、今どこにいる?」
智子「お疲れ様、今は、えっと、たぶん新宿駅前だと思うけど。○○○が見える。」」
清水「そう、じゃあそこに行くから待ってて。」
15分程待ったら、清水が現れた。
清水「ごめんね、待たせちゃって。さぁ、行こうか。」
智子「ほんと、遅いよう、もう! はい、これロッカーの鍵。」
清水「あぁ、ありがとう、今日は、こっちに泊まってくよね?」
智子「えっ? でも、何も用意持って来てないけど。」
清水「いいじゃん、買ったら。よし、行こうか!」
智子「でも、親に何も言ってこなかったし。」
清水「じゃあ、電話しといたら。」
清水は、すでに加奈子に連絡をしてあり、快く了解するよう指示を出していた。
それを知らない智子は、恐る恐る母親に電話をする。今まで急な外泊など一度もしたことがなかったので、どう言えばいいのか戸惑っている。
智子「もしもし、ママ?」
加奈子「智子? どうしたの?」
智子「あの、、、あのね、今ね友だちと一緒なんだけどね、帰りが遅くなっちゃうと思うからね、、、あのね、、、。」
加奈子「まぁ、そうなの? もう夏休みなんだし、たまにはいいんじゃない? お友達に迷惑にならないようにね。」
加奈子の声は悲しさを堪えるようだった。
智子「う、うん。ありがとう。」
案外すんなりと許可が出たことに拍子抜けをしたが、これで今日一日清水と一緒に過ごせる嬉しさの方が大きかった。
智子は、清水の腕に抱きつき、「許可貰っちゃった」と喜びを伝えた。
清水「ようし、今日はお詫びも兼ねてとびっきり楽しませてあげるよ。」
智子「ほんと、嬉しい!」
突然、清水は智子の胸を鷲づかみにした。
清水「あれっ? 下着つけてるの?」
智子「えっ!? あ、うん。」
清水「ここでも楽しもうよ。」
智子「えーーっ! でも、人が多いし、絶対見つかるって。」
清水「大丈夫だよ、ここの人たちはみんな冷たいから、誰が何をしていようと、見て見ぬふりをするから。それに、知った人もいないことだし。」
智子「えーー、でも、恥ずかしいし、、、」
清水「それがいいんでしょ! はい、決まり、じゃあこっちに来て。」
ビルとビルの間の路地に入り
清水「ここでいいか、はい、脱いで。」
とても楽しそうな清水に対し智子は、不安で仕方がなかった。
清水の体に隠れながら下着を脱いでいく。
脱いだ下着は、清水の手に渡り、
清水「下着はここに置いていこう。新しい下着は買ってあげるから。」
そう言うと、近くにあった、恐らく夜になれば表に出されるであろう、電光看板の上に広げるように乗せ、智子の手を引き表通りに出て行った。
二人は電車に乗って移動する。もちろん、移動中も楽しみながら。
ショッピングと食事を終えた二人は、大きな公園のベンチにいた。
清水「ここの公園、大きいでしょ。昼間は子供の遊び場だったり家族連れの憩いの場なんだけど、夜になるとカップルの場所なんだよ。あそこのベンチにもカップルがいるでしょ、ほら、あっちにも。」
清水が指差すほうを見ると、二人が向き合って抱きついているカップルやキスをしているカップルまでいた。
清水「ねっ。で、あそこら変かな、覗き趣味のおっさんがいるのは。」
指差す先をじっと見る。不自然に木が揺れた。
智子は、声の出ない大きく開いた口を手で隠す。
清水「智子もここで楽しもうか。」
智子「いやよ、ダメっ!」
しっかりとスカートを押さえた。
清水「そっか、じゃあ、あそこに行こうか。」
清水の指差す所、公園の外のビルだった。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊