羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第三章13

近づくとビルは、雑居ビルだった。
入り口には、古びたネオン看板がある。
3階まで上がるとドアのガラスに紙が貼ってあり中が見えない様になった部屋がある。
清水は智子の腰を抱えその部屋に入った。
中は、白熱球で眩しいくらい明るい。
見渡すと、壁面にも通路にも棚が並んでいて、入口横にカウンターのレジがあり、まるで田舎の本屋のような所だ。
しかし、並んでいるのは田舎の本屋では売っていない、アダルト専門の本やDVDがぎっしり並んでいる。
カウンターの中から声がする。
店員「いらっしゃいませ」
やる気の無い声だ。
カウンターの中に目を向けると、椅子に座って新聞を読んでいる中年オヤジがいる。
人の存在で、急に恥ずかしさが広がり身体を隠そうとする。
幸いにも、店員はピンポンの音と気配だけで客に気付き、挨拶をしただけのようだ。
智子は、本棚に隠れながら清水の後をついて行く。
奥の部屋には、ずらりと大人のおもちゃが並んでいた。
清水は、めぼしい物を5つ程取り智子に渡した。
智子「えっ? 何??」
清水「あそこで会計をしてきて。お金はこれね。」
そういうと、清水は1人出口に向かった。
1人残された智子の手には、バイブやローターなど5つの商品と現金が持たされていた。

智子は、恥ずかしいながらも知らない土地と言う事もあってか、会計をする為カウンターに向かった。
顔を俯けたまま、商品を台の上に乗せる。
おっさんは、面倒くさそうに新聞を置くと立ち上がって智子を見る。
ぶっきらぼうだったおっさんの顔がニヤついた顔になる。
レジを打ちながら智子を舐めるように見つめる。
おっさん「お譲ちゃん、あんたまだ未成年だろ。こんな所に来ていいのかい? それもこんなものまで買って。」
智子は、俯いたまま顔を背け、お金だけ差し出す。
智子は、何を買ったのかも分からないまま袋とお釣りを受け取りそそくさと店を出た。
恥ずかしそうにしている智子を清水は抱きしめて
清水「よくやったな。よしよし。さぁ、部屋に行こうか。」
清水は、近くのホテルで部屋をとり智子と二人朝方まで楽しんだ。


そのメールは突然送られてきた。
学校の昼休み、教室の後ろの方で友達と談笑している時にポケットにあった携帯が震える。
気付いた智子は、皆と喋りながら携帯をチェックする。
全く知らない差出人からだ。いつもなら無視して削除するのだが、このメールのタイトルに『智子様へ』と自分の存在を知っている者からのメールでる事と、『〜様』と改まった表現が使われているのが気になり、メールを開いた。
メール『初めまして、智子様。突然のメールですみません。私は、あなたの秘密を知ってしまいました。写真も添付しておきました。』
智子は、眉を顰めながらも添付ファイルを開く。
画面が暗くて良く分からなかったが、よくよく見ると野外で服をはだけた女性の画像。
野外の風景と服、シチュエーションなどから智子は『はっ!』と気付く。
友達に気付かれない様、何事も無かったかの様に携帯を仕舞い、皆の話に相槌を打つ。
しかし、心の中ではパニック寸前だ!
―――なんで?!!?―――

どうしていいのか分からないまま休憩時間も終わり午後の授業を受ける。
先生が話す言葉は何も入ってこない。

授業も終わり放課後になる。
どうする事も出来ずそのまま家に帰った。
あのメール以外、この日は何も無かったのだ。
ただ、智子の知らない所に彼氏以外知るはずの無い事が知られていて、尚且つ写真にまで撮られている。
あの写真は、どこでどのように扱われているのか、ただただ不安が募るばかりだった。


あれから一週間後、今度は智子宛に郵便が届いた。中には、
―――な、なんで? こんな写真が?!!―――
手に持った写真を見つめたまま動かない。
―――いったい誰が?―――


誰なのか、目的も分からないまま、あれからまた一週間が過ぎた。
智子にとっては苦しい二週間だ。
いっそ返信メールを送る事も考えたが、下手に返信するのに抵抗がある。
相手の出方を見てからと思っていたのに、二週間何もない。






智子「あなたは誰? なにがしたいの? こんな事をしてタダじゃ済まないわよ。」
もう、何もせずにはいられなかった。しかし何も反応が無い。
―――私の態度にビビったのかな―――
智子「持っているデータをすべて、今すぐ消去しなさい。そうすれば、今回だけは警察に届ないであげるわ。いい? 今すぐデータを消去するのよ!」
―――ふふふ、警察に届けるって脅せば諦めるはずだわ。謝ってきて相手が分かれば直ぐに警察に突出してあげるんだから!―――

10分経っても何も反応が無い。
智子の苛立ちも募り、更にメールを送る。
智子「データは消したのでしょうね?! ちゃんと謝ったら許してあげるわ。返事をしなさい。」
10分、15分、何も反応が無い。
結局、何も返信が無いまま夜が過ぎていった。


眠い目を擦りながら智子は、午前の講習を受けている。今週から夏休みの為、3年生は希望者のみを対象に受験のための夏季講習をしている。
智子は、大学に行くか専門学校に進むかまだ悩んでいた。一流の大学に行けるほど頭は賢くない、だからと言って無名の大学に行って大卒資格だけとっても今の世の中では何の役にも立たない。それならば、専門学校で専門の知識を学んだ方がいいのでは。など、いろいろ悩みどころなのである。
どちらにしても進学には受験があるので講習を申し込んでいた。
しかし、あのメール以来、勉強どころではなくなった。


何度か返事をするようにとメールを送ったが返事が無く、また一週間が過ぎたころ、ようやくメールがきた。
内容は、本文が無く、写メだけだ。
その写メには、たくさんの写真と8枚のDVDが写っている。
写真は、小さすぎて何の写真か分からない。
DVDは、一番上にある物のタイトルに『智子の痴態 〜露出編 @〜』となんとか読める大きさで書いてある。
このメールの意味指す事は智子も理解した。
智子は動揺した。

―――いったい…どうすればいいの? どうすれば……。―――
智子「お願い、もうやめて。許して。どうすれば許してくれるのですか?」
メール「どうぞ、警察に行ってくださっても結構です。」

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