羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第三章15

そんな智子の姿をA棟の屋上から見ている人物がいる。美穂だ。
元々、美穂の逆恨みから始まったのだが、早紀の面白半分で家族を巻き込み友達を巻き込み、それがすべて思うように進んでいるのが楽しくて仕方が無い。
美穂には、この苦しむ智子の姿を生で見せようと早紀がセットしたものだ。
美穂は双眼鏡で、苦しむ智子の姿を堪能していた。
美穂「あらあら、あんなに震えちゃって、パソコン落としちゃうよ。あら、立ち上がった。どこ行くの? 辺りをグルグル歩き回って、落ち着かないのね。ふふふ、そう、もっと苦しみなさい。あははははっ! いい気味っ!」
美穂の陰湿さが丸出しになっていた。


一時間が経ち、チャットルームに主人が現れた。
主人「どうでした? 面白いHPでしょ? きっと大人気にあるわよ。楽しみね。」
―――ふ、ふ、ふざけないでよ!! 人をからかうのもいい加減にしなさいよ!!―――
トモコ「ふざけないで、こんな事は直ぐにやめなさい!」
主人「あらそう? よく出来ていると思うけどなぁ。だって、事実をこと細かく紹介してるしね」
トモコ「私だけじゃなく母や妹まで、どこで調べたのよ! 子供のときの写真とか、あなた、私の家に空き巣に入ったんでしょ! もう許さないわよ!!」
主人「あらっ? 怒っちゃった? ふふふっ、でもどうするの〜?」
早紀は、怒っている智子を更に挑発する。
トモコ「絶対にあなたを見つけ出して警察に突き出してやるわ! 覚悟しなさい!!」
主人「どうぞ、どうぞ、捕まえてください。私は、自制出来ない子ですから、早くしないとどんどん暴走しますよ。あっそうだ、暴走ついでに、HPのパスも公開しちゃおっかなぁ。」
トモコ「ちょっと待って、それは関係ないでしょ! やめなさい!!」
主人「じゃあ、早く捕まえてくださ〜〜い。」
―――くっ、、、、くやしい。。。―――
主人「では、30分後にもう一度ここに帰ってきます。それまでに私を捕まえるか、それとも
私を喜ばせる何かが出来ればパスの公開は止めておきましょう。う〜ん、私ってやさしいなぁ。それではまた後で。」
トモコ「ちょっと待って、」
主人は、智子の話も聞かずに落ちた。
智子はどうすればいいのか分からず、ただただ呆然とするだけだった。
5分程して我に返った智子は、もう一度会話の内容を確認した。
今から30分で主人を捕まえる事は出来ない。では、主人を喜ばせる事って何よ?
どうすればいいのよ?
雲をつかむような答えをどうやって見つければいいのだろう。
30分は、あっという間に過ぎていった。
チャットルームに主人が現れた。
主人「どうですか? 私を捕まえる事は出来ませんでしたね? では、私を喜ばせる事は思いつきましたか?」
トモコ「分かりません。」
主人「答えになってませんけど?」
トモコ「思いつきませんでした。」
主人「えーっ、それじゃあ、パス公開してもいいって事ですね?」
トモコ「それは、許してください。お願いします。」
主人「そんな勝手が許されると思ったんですか? 無理ですね。」
トモコ「そんな、どうすればいいんですか? 教えてください。」
主人「何でも出来ますか?」
トモコ「私に出来ることでしたら…。」
主人「ふふふ、それがあなたの私を喜ばせる答えですね?」
トモコ「は、はい。そうです。」
主人「分かりました。では、その答えを採用します!」
智子「………。」
主人「あれ〜? 返事は無いの? 御礼とか、心意気とか。」
トモコ「ありがとう、がんばります。」
主人「何か言葉遣いがなってないんですけど。」
トモコ「ありがとうございます。一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします。」
主人「ふふふ、よく出来ました。」
智子は、奥歯をかみ締めながら堪えた。
主人「それではまずはじめに、その場で下着を脱ぎなさい。そうね、ここには誰もいないのだから制服を脱いでから下着を脱いだら。あなたなら出来るわよね。制限時間は、10分あげるわ。」
―――ふ、ふ、ふざけないでよ! そんな事できるわけないでしょ!!―――
トモコ「そんな事出来ません。他の事にして貰えませんか?」
主人「そうかな? あなたなら簡単に出来るはずよ。嫌ならいいわ、パス公開するから、もう1分経ったわよ、1秒でも過ぎたらパス公開しますから。好きな方を選びなさい。」
―――そんなの駄目よ、や、や、ヤルしかないのね―――
覚悟を決めた智子は辺りを見回して誰も見ていないのを確認した。
膝立ちになってスカートの裾から手を入れパンティを下ろしていく。膝まで下げたら床に腰を下ろしてパンティを脱いでいく。
次にブラウスの腕を抜いて器用にブラジャーを外していく。腕を戻して首元から一気にブラジャーを引き抜いた。
ブラジャーとパンティは、小さく畳まれポケットに仕舞った。
時計を見ると10分まで2分も残してクリアした。
トモコ「脱いだわよ。」
主人「確かに下着は脱げましたね。でも、私はあなたに何て言ったかしら? 制服を脱いで下着を脱ぎなさいと言った筈ですけど。」
トモコ「そ、そ、それは……。いいじゃない、下着は脱いだんだから。」
主人「あらあら、私にそんな口の利き方をして、いいの?」
トモコ「ごめんなさい、でも、下着は脱ぎましたから、これでいいのでしょう?」
主人「はい、10分経ちました。ノルマは50%達成ね。では、パスも半分の<tomoko>まで公開します。」
トモコ「ちょっと待ってよ! 約束が違うわ!」
主人「いいじゃない、tomokoってバレても、タイトルに智子って書いてあるんだから。」
トモコ「そうだけど、でも、お願いします。止めてください。」
主人「仕方が無いわねぇ、じゃあ、今回は“貸し”と言うことにしておくわ。但し、次はもう無いわよ。」
トモコ「はい、分かりました。」
主人「それでは、次の指示を出します。目の前のフェンスまで行って、さっき脱いだ下着をなるべく遠くに投げなさい。制限時間は、5分です。では、どうぞ〜」
文字を読んだ智子は固まった。
―――そんな事出来ない。。。でも、もう止めるなんて言えない。。。どうしよう―――
ボー然としていた時間が約2分、ハッと気付いた智子は、とりあえずフェンスまで歩いていく。
屋上から下を覗いた。
幸い人影は無さそうだ。
―――どうする? 投げるの? どうするの??―――
智子は、迷いに迷った挙句、ポケットから下着を取り出した。
もう一度下を見る。人影は、相変わらず居なさそうだ。
この中庭には、沢山の木が生えている。もし、木に引っかかったら、この先ずっと晒し者になってしまうかもしれない。
―――あそこに投げよう。―――
狙いを定めたのは、木が生い茂っていない校舎と渡り廊下の間の空間だった。落ちていればほぼ見つかってしまう様な場所だ。しかし、きっとこの下着を持っていくのはこの脅迫者だろう。そう思った智子は、木に引っかかっていつまでも晒されるより、悔しいけれど持って行かれてしまう方のがマシだろう、と思った。
そんな事を考えている内に時間が刻一刻と過ぎていく。
―――早くしないと!―――
狙いを定め、思いっきり投げつけた。


智子は、下着を投げる事に集中していて今の自分の格好を忘れている。
フェンスの側に立っている事で、スカートの中がチラホラ見え隠れしていたのだ。しかも、胸が動揺する動きに合わせて揺れている。
そんな姿も、しっかりと見られているとも知らないと。


智子は、落ちていく下着を見つめながら目に涙を浮かべていた。
ノートパソコンのある所に戻って画面を見る。
主人「よく出来ました。時間もギリギリセーフです。それでは、次の指示を出しまーす。」
トモコ「あのぅ、指示はあと幾つありますか?」
主人「そうね、さっきの指示をちゃんとクリアしたから次が最後にしてあげるわ。」
トモコ「ありがとうございます。」
智子は、なぜかお礼文を返した。
主人「次の指示は、あなたの自宅に戻ってからやればいいわ。学校まで自転車で来たのよね? ちゃんと自転車に乗って帰りなさいね。気をつけて帰りなさい。」
智子は、ノートパソコンをカバンに仕舞い、屋上を後にした。
誰にも見つからない様にゆっくりと、辺りを確認しながら駐輪場まで行く。途中、下着が落ちたであろう場所に来た。
やはり、下着は無くなっている。
唇を噛みしめながらその場を離れた。
カバンを背中に背負って自転車に跨る。スカートの裾を片手で押さえながらゆっくりと走らせる。
なるべく前屈みになって二の腕で胸元を隠しながら家まで帰った。

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