羞恥ゲーム
〜自分の保全と欲望と〜
小早川:作

■ 第三章16

家に着くと、急いで中に入る。貴子は出かけているのだろうか、幸いにも家には智子だけだった。とにかく、下着を着けようと自分の部屋に急いだ。
自分の部屋なのに何か違和感を感じる。とりあえずカーテンをしっかりと閉め下着を身に着け椅子に腰掛ける。
さっきまでの出来事を思い返す。
これからどうすればいいのか? どうしたらいいのか? 何をすればいいのか?
どうしよう。ううぅ、どうしよう。。
涙が止まらない。
ポケットにある携帯でもう一度、清水に電話をかけた。
しかし、繋がらない。
智子は、カバンからノートパソコンを取り出す。
最後の指示があの忌々しいHPのダイアリーに記すと云っていた。
智子は、パソコンを立ち上げHPを開いた。
パスワードを入力してダイアリーを開く。


――――ダイアリー―――――

本日最後の指示です。
今後、私を主人とし、従順に従うと約束する為の覚悟を示していただきます。
まず、はじめに、
1つ、今後、無断で学校を休まない事。必ず、1限目から放課後までいるように。
2つ、今後、パンツの着用は禁止! 学校でも、プライベートでも自宅でも常にスカートを着用する事。下着は、指定した時意外は着用禁止! 生理の時は、使用を許可する。但し、指定の下着のみ可。
3つ、今後、自分の部屋にいる時は、全裸で過ごす事。勿論、カーテン使用は禁止。今すぐに取り外しなさい。
家にあるパンツとブラはすべて没収します。15時までに駅前のコインロッカーに入れなさい。

時計を見ると、あと1時間ある。しかたなくカバンにパンツを入れていく。
<すべて>と言われたが、数枚だけ箪笥の奥に隠した。
下着を履いていこうかと思ったが、今は学校でもないし、指定された訳でもない。
きっと、どこかで見張っているに違いないし、履いて行ってまた何か因縁をつけてくるのだろうと思った智子は、最後に今履いている下着に手をかけた。ゆっくりと脱いでいく。
一緒に制服も着替える。持っている私服の中で一番丈の長いスカートを選んだ。上は、小さめのTシャツにサマーニットで隠し、カーディガンを羽織った。少し暑いが仕方が無い。
その場で軽くジャンプをする。Tシャツが胸の揺れをおさえてくれた。
智子「よし。」
カバンを持って外に出た。
自転車でも行ける距離だが、念には念を、時間も余裕が有るので、バスで行く事にした。
スカートの中がスースーする。捲くれる恐れはまず無いが、やはり心配でついつい手が世話しなくスカートを押さえる。

駅前に着いた。
恥ずかしくてカバンをしっかり抱きかかえながらコインロッカーに向かう。そんな不自然な行動が逆に人目を誘っている事に智子は気付いていない。
なるべく奥の方のロッカーを選びカバンを入れ鍵をかけた。時計を見ると、5分前だった。
大きくため息をついてバス停に向かう。
携帯が鳴る。メールだ。
メール「鍵は、本屋横のトイレ、一番奥の個室の棚に置いていきなさい。」
智子は、指示通りトイレの棚に置いて帰った。

典子「あいつ馬鹿だねぇ、箪笥にパンツ隠してるよ。これは、きついお仕置きが必要ですね。」
早紀「晴美と麻衣と美香、美紀も、急いで家に行ってパンツをビリビリに引き裂いて目立つ所に置いてきて。それから部屋中引っかき回して散らかしてきて。あと、机の上にこのメモを置いてきて。さぁ、時間が無いわよ、急いで。それと………」
典子「なになに? うわぁ、ふふふっ、面白そうね。」
早紀が差し出したメモを読んでいる。
晴美「了解! 行くよ、あんたたち。」
あんたたち「は〜い!」
典子「それにしても、次から次へと、よく思いつくわね。」
早紀「あら、褒めてくれるの? アリガトっ! ふふふ」
美穂「なに? なんなの? 次は何をするのよ? ねぇ、ねぇってばぁ」


その夜、智子は部屋に篭ったまま出てこなかった。
散らかった部屋をある程度片付けて、裸になって部屋の隅で丸くなったまま俯いている。
部屋の電気も付けないで、ただただ泣いていた。
今日の出来事や部屋の状況など、今まででは考えられないほどの恐怖が全身を包み込んでいる。
この用意周到さ、とんでもない相手と関わってしまった事、怖いを通り越して体の震えが止まらない。


泣き疲れて、少し気持ちが落ち着いたのか、ふと、顔を上げた。
月明かりが部屋の半分を照らしている。
光の先の壁には、ビリビリに引き裂かれたお気に入りのパンツと例のメモが画鋲で貼り付けられていた。
『私たちを騙そうとしても無駄だよ! 約束違反として、スカートはすべて膝上のもののみとする。すべて裾揚げをしなさい。今後、私たちの言うことを守れない場合は、その度にペナルティを課します。』


翌日、智子は朝から呼び出されて家の近くのホームセンターに来ていた。
短いスカートだったが、下着の着用の許可が出ていたので安心だった。
「ペットコーナーで自分の首に合う首輪を選んで買いなさい。」
これが今回の指示だった。
きっとこれからは、この首輪をはめて苛められるのだろう、と憂鬱な気持ちで首輪を探していた。
「おねえちゃん?」
振り向いた先に、妹の貴子がいた。
智子「ど、どうしたの? こんなところで?」
首輪に手を伸ばしたところで声をかけられたので、手を引っ込めたが動揺は隠し切れない。
貴子「おねえちゃんこそ、何を買うの?」
智子が取ろうとしていた物を見る貴子。
貴子「ペットでも飼うの?」
智子「えっ、えっ、あの、これはね、その、犬を飼いたいなぁって。。。」
貴子「でも、ママは動物が苦手だよ、きっと反対されるだけだよ。」
智子「そ、そうよね、知ってるわよ。友達の家の犬が子供を産んだから、その子達に首輪をプレゼントしようかなって思っただけよ。それより、貴子は何を買いにきたの?」
貴子「えっ? 何って、別になんでもないわよ。ただ、見てるだけ。友達と待ち合わせよ。」
智子「こんなところで? 友達と?」
貴子「そうよ、何よ、おかしい?」

実は、貴子も智子同様、自分用の首輪を買うように言われてここに来たのだった。

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