体罰
ドロップアウター:作

■ プロローグ2

 私は今、茶道部に所属しています。
 今の学校の茶道部では、体罰が当たり前のように行なわれているのです。
 立たされる、正座させられる、というのはまだ軽い方です。
頬を平手打ちされたり、竹刀で足やおしりを叩かれる、というようなことも頻繁にあります。それも、少し言葉遣いがおかしかったり、姿勢が悪かったり、そんな些細な理由で体罰をされるのです。
 でも、それだけなら私もまだ我慢できます。
 私が本当に恐れているのは「脱衣罰」です。
 脱衣罰は、顧問の先生によると「精神的苦痛を与えることで反省を促す」ために行なっているそうです。大抵、素足に下着だけの格好にさせられ、立たされたり、正座させられたりします。
 この罰も、他の罰と同じくらい頻繁に行なわれています。怖いのが、他の罰にするのか、脱衣罰にするのか、はっきりした基準がないことです。先生のその時の気分次第なので、脱衣罰だけを避ける方法はないのです。
 幸い、私はまだ脱衣罰を受けたことがありません。でも、いつそんな状況になってしまうか心配で心配でなりません。
 私が通っている中学校は私立の女子校で、茶道部の顧問の先生も女の人です。だから、他の部員は私ほど脱衣罰を恐れていないみたいです。
 でも・・・今の私は、どうしても他の部員と同じようにはいかないのです。
 私は今、自分の体の変化に戸惑っています。
 半年前、中学に入学したばかりの頃は、まだ初潮も迎えていませんでした。それが、今の学校に転校する直前の七月に突然きたのです。ブラジャーをするようになったのも、つい二週間前のことです。
 体育で着替える時、私は下着を見られるのが妙に気恥ずかしくて、なるべく見られないようにいつも縮こまって着替えています。自分の体が変化の真っ最中なので、他の子と比べて自分はどうなのかな、とか、他の子にはどう見られてるのかな、とか、つい余計なことを考えてしまうのです。
 だから私は、先生に問題を指摘されないように、部活動の時はかなり気をつけて行動しています。それでも「真剣さが足りない」と指摘されたことが今までに三度あって、三回とも頬を平手打ちされ、その後正座させられました。
 でも、痛い罰の方が私にはまだマシです。それが脱衣罰に変わってしまわないことを、私にはただ祈るしかありません。


 教室に戻って時計を見ると、昼休みが終わるまでまだもう少し時間がありました。
 私は、部活動の記録ノートを見直すことにしました。茶道部では、毎回前日の活動の反省をノートに書いて提出することを義務づけられています。出さなかったり、出しても書いた内容がいい加減だと思われれば、もちろん体罰の対象になります。一応前日に書いてはいたのですが、念のためにもう一度見直そうと思ったのです。
 席に座って、机にリュックをのせました。そして中を開けて、記録ノートを探しました。
 しばらくして・・・私は自然とつぶやいていました。
「ウソ・・・」
 私はもう一度、リュックの中をかきまわしました。血の気が引いていくのが、自分でも分かりました。
 やがて、私はリュックをあさる動作をやめました。両手を体の横にだらんと投げて、呆然と天井を見上げました。
 私は、取り返しのつかないミスを犯してしまったのです。
(ノート・・・忘れちゃった・・・)

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