体罰
ドロップアウター:作

■ 1

 あれは、私が転校して二週間が過ぎたある日のことでした。その日、私は初めて脱衣罰の光景を目の当たりにしたのです。
 それは、部活動を始める前、記録ノートを顧問の先生に一人一人チェックしている時でした。ある先輩のノートを見て、先生が急に怒り出したのです。
「何を言いたいのか全然分からないじゃない。ただ書けばいいって思ってるんでしょ!」
 突然のことで、私もかなり驚いたのでよく覚えていないのですが、たぶんそんな感じのことを言っていたと思います。
 私はこの日までに、すでに他の体罰を行っているところを見ていました。だからてっきり、その先輩も同じように平手打ちや正座罰が科せられるものと思っていたのです。
 でも、先生は妙なことを口にしたのです。
 ここから先のことは、よく覚えています。
「あなたは、心の修養が必要みたいね。今回は、少し恥ずかしい思いをしてもらうわね」
「・・・はい」
「それじゃあ・・・靴下と制服を脱ぎなさい」
(えっ・・・)
 その時私は、自分の耳を疑いました。
(先生・・・今・・・なんて・・・)
 でも、それも束の間のことでした。
「はい」
 先輩は、信じられないほど素直に返事しました。そして先生に言われたとおり、服を脱ぎ始めたのです。
(やだ・・・ウソ・・・!)
 私は目の前の光景が信じられなくて、あやうく叫びそうになりました。
 先輩はあっという間にブラジャーとパンツだけの姿になりました。そして、その場で正座したのです。
 意外なことに、先輩はあまり表情を変えていませんでした。恥ずかしいせいか少し頬が赤くなっている感じはあったのですが、それほど動揺している様子はありません。それどころか、他の先輩と目があって、照れ笑いを浮かべていたのです。
 その日の活動が終わった後、私は蒼井さんとこの出来事について話をしました。
 その時に聞いた蒼井さんの言葉に、私はまた驚きました。
「あれは、よくあることだよ」
「ウソ・・・」
「うん、早苗は転校してきたばかりだしね、ショックなのも無理はないよ」
「うん・・・」
「でも、叩かれたりするよりはマシだと思うよ。そりゃあ恥ずかしいけど、でもその場限りだし・・・」
「そうかな・・・あたしは・・・まだ叩かれる方がいい」
「そうかな・・・女同士だし、そんなに恥ずかしがることでもないんじゃない?」
「でも・・・」
 その後の言葉が出てこなくて、私はしばらく黙っていました。
 しばらくして、私は思いきって聞いてみました。
「蒼井さんは、あの罰受けたことあるの?」
「うん、あるよ」
 思ったよりあっけなく、蒼井さんは答えてくれました。
 私はびっくりして、また言葉が出なくなりました。
 蒼井さんは苦笑いしました。
「そんなに驚かなくてもいいのに」
「うん・・・ごめん・・・」
「やだぁ・・・そんなに深刻な顔しないでよ。あたしはそんなに気にしてもいないんだから」
 蒼井さんは笑って、それから、自分が脱衣罰を受けるに至ったいきさつを話し始めました。
「入学して一ヶ月くらいの時かな・・・その日、部活が始まる時間に遅刻しちゃったの。あと、提出したノートの内容も適当で・・・それで、先生かなり怒って・・・それで・・・反省のために、服を脱ぎなさいって」
「うん・・・」
 私は相づちを打つのがやっとでした。
「さすがにその時はショックだったよ・・・ホント・・・泣きそうになっちゃった。でも我慢して・・・靴下、ブラウス、スカートって脱いで・・・最後に先生にシミーズも脱ぐようにって言われて、それも脱いだ。パンツ一枚。先輩とか友達に裸見られて・・・おっぱいとか・・・さすがにちょっと涙ぐんじゃった」
「胸まで・・・見られたの?」
「うん・・・あ、そんなに怖い顔しないでよ。なんか、また恥ずかしくなっちゃうじゃない」
 蒼井さんはそう言って笑いました。
 私がうつむいていると、蒼井さんは言いました。
「早苗、その罰受けるの・・・怖い?」
「うん・・・怖い」
「大丈夫だよ。早苗真面目だし・・・あの先生真面目でおとなしい子には一応加減してるみたいだから・・・たぶんあたしは少々辛い目にあわせても平気だって思ってんじゃないかな」
「そんな・・・そんなの不公平だよ!」
 私が声を上げると、蒼井さんはいたずらっぽく笑いました。
「あれえ・・・さっきは怖いって言ってたのに・・・早苗、あの罰受けてもいいって思い直したの?」
「えっ・・・そういうわけじゃ・・・ないけど・・・」
「ふーん、そっかぁ・・・でも、早苗ってかわいいから、きっと裸もキレイなんだろうなぁ・・・早苗の裸、見てみたいかも」
「やだぁ、そんなの」
 私は、ようやく笑みを浮かべることができました。

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