体罰
ドロップアウター:作

■ 7

 急に恥ずかしさが強くなりました。
 大事なところを隠しているとはいっても、もうほとんど裸に近い格好なのです。私の胸の形も、おしりの大きさも、全部分かってしまうのです。
(お願い・・・あたしを見ないで・・・!)
 私は心の中で叫びました。
 でも、これで終わりではありません。最後に、一番辛い作業がまだ残っています。
 私は、少しだけ前かがみになりました。そして、そっと背中に手を回しました。
 ホックを外そうとしたのですが、手が震えてなかなか外れません。
「さっさとなさい」
 佐伯先生の冷たい声が、どこか遠くから聞こえたような感じでした。
 そのうち、背中でかちっとした感触がして、ようやくブラジャーのホックを外せたことが分かりました。さすがに、ブラジャーはすぐには脱げませんでした。私は胸元を押さえたまま、ゆっくりと膝を曲げていきました。床においてあったシミーズに手を伸ばしました。シミーズで胸を隠しながら、ブラジャーを抜き取ろうと思ったのです。
「あっ!」
 その時、私は思わず声を上げてしまいました。ブラジャーを床に落としてしまったのです。
 私の胸が一瞬露わになって、私は慌てて両腕で隠しました。
 でも、そのままの状態だと下着を拾い上げることができません。床にしゃがみ込んだまま、私は動けなくなってしまいました。
 その時でした。誰かの手が伸びて、私のシミーズとブラジャーと拾い上げました。
 びっくりして顔を上げると、それは堀江先輩でした。
「ごめんなさい・・・」
「ううん・・・しっかりね」
 堀江先輩はかすかに微笑んで、私の右手に下着をつかませてくれました。
 先輩に自分の下着を触られたことは恥ずかしかったけれど、それでも何だか救われたような気持ちになりました。
 私はシミーズで胸を隠しながらブラジャーを抜き取ると、続けてシミーズも床に置きました。
 胸は両腕で見られないようにしっかりと隠して、私は立ち上がりました。
 と、佐伯先生の言葉が私の耳に飛び込んできました。
「腕は体の横に下ろしなさい。背筋を伸ばして、胸を張って・・・正しい姿勢で立ちなさい」
「は、はい・・・」
 私は言われるがまま、両腕を体の横に下げました。
 その瞬間、私の小さな肩も、おへそも、白いパンツも、そして・・・さっきまでブラジャーに包まれていた私の胸のまだ小さな膨らみも、全てがさらけ出されてしまったのです。
 部員のみんなの視線が、とても痛いのです。
(いやっ・・・恥ずかしい・・・!)
 体がすごく熱くて、ひざが激しくがくがくと震え出しました。顔が赤くなっているのが自分でも分かります。
 できることなら、この場で大泣きしてしまいたいです。そしたら、みんな私のこと助けてくれるかもしれません。
 でも・・・私はきちんと罰を受けるということをすでに決めているのです。ここで泣いてしまったら、自分で決めたことに背くことになると思っていました。
 私は、何とか動揺を抑えて、佐伯先生の方を向きました。
「こ、これで・・・いいんですよね?」
 先生は無表情のままで言いました。
「さっき、『痛い思いもしてもらう』って言ったでしょ?」
「あっ・・・」
 私は、昼休みでの佐伯先生との話を思い出しました。
 先生の言う「痛い思い」というのは、たぶん頬の平手打ちが、お尻を竹刀で叩く罰のことだと思います。
(そっか・・・まだ・・・残ってるんだ・・・)
 この苦痛がさらに続くことを予感して、私は暗い気持ちになりました。
 先生は、畳を敷いていない床の部分を指さして言いました。
「今は、畳から出て床で正座してなさい。部活の邪魔になるから。残りの罰は後でするから、それまで反省してなさい」
「はい」
 私は、素足のまま畳から出ました。
 足の裏に、床のひんやりした感触が伝わってきます。
 今は恥ずかしくて体がほてっているから寒さはあまり感じません。でも、慣れてきたらきっと、すごく寒くなるんじゃないかなって思いました。
 余計なことを考えると、ただでさえこんな状況なので、ますます憂うつになってしまいます。
(がんばれ・・・がんばれ・・・)
 私は自分にそう言い聞かせながら、膝を曲げて、冷たい床の上に正座しました。

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