体罰
ドロップアウター:作

■ 9

 茶道部の副部長は、石野保奈美先輩といいます。
 石野先輩は、身長は蒼井さんと同じくらい高くて、蒼井さんと同じく、どちらかというと体育系の部活が似合いそうな人です。根は優しい人なのですが、少し勝ち気なところがあって、内気な私は時々気圧されそうになります。
 石野先輩と目が合って、私は気まずくて、すぐに視線を下に向けました。
「早苗ちゃん・・・」
 すると、石野先輩は私にささやき声で話しかけてきたのです。
 私は顔を上げました。
「かわいそうに・・・苦しいでしょ?」
 私はこくんとうなずきました。
「もう少し我慢して・・・直に終わるから・・・って、できないか・・・体震えちゃってるし、頬、赤いよ?」
 先輩が心配してくれているのはうれしかったのですが、私は気が気でなりませんでした。佐伯先生は、こういう余計な私語を一番嫌うのです。
 案の定、佐伯先生は石野先輩を睨むように見ています。
 石野先輩はそれに気づかないのか、それとも気づいていてあえてやっているのか分かりませんが、かまわず私の方を見ています。
 石野先輩は、少しいたずらっぽく笑いました。
「ねえ・・・さっき胸急に隠しちゃったけど、どうして?」
「えっ・・・」
 私は、久しぶりに小さく声を発しました。
「もしかして・・・乳首、たっちゃったの?」
「イヤ・・・」
 私が石野先輩の言葉に動揺した、その時でした。
「いい加減にしなさい!」
 部屋中に、佐伯先生の怒鳴り声が響き渡りました。

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