体罰
ドロップアウター:作
■ 11
「蓮沼さん・・・」
佐伯先生は静かに言いました。
「こっちに来なさい」
「・・・はい」
私はすぐに立ち上がろうとしました。でも、長時間正座していたせいで、足がひどく痛くてなかなか動けません。
(うぅ・・・痛い・・・どうしよう・・・)
床に手をついて体を支え、私はゆっくりと体を起こしました。そして、どうにか立ち上がることができました。
痛む足を引きずって、私は少しふらつきながら前に進みました。その時、胸はずっと隠していたのですが、佐伯先生の前に辿り着くと、先生に言われる前に両腕を下ろしました。乳首が普通の状態に戻っていたので、私は何だかほっとしました。
佐伯先生は腕組みをして、睨む目で言いました。
「まずは、忘れ物の分の罰をすませるから・・・」
「はい・・・」
私は、佐伯先生の前に少しうつむき加減で立っていました。
先生が何も持っていないことで、私はこれから自分がどんな罰を受けるかを知ることができました。
何だか他人事のように、思いました。
(ビンタかぁ・・・きっと痛いんだろうな・・・)
不思議と、あまり怖くありませんでした。ようやく正座から解放されたからだと思います。それと、頬の平手打ちは前にも受けたことがあるので、心構えは自然にできました。
むしろ、自分が裸なのを時折意識してしまって、恥ずかしいという気持ちの方が勝っていました。
「気を付け・・・歯を食いしばりなさい・・・」
私は、体を少し硬くしました。
その瞬間、佐伯先生は右手を振り上げました。
パチーン!
左側の頬に鋭い痛みが走って、部屋中に乾いた音が響き渡りました。
と思った瞬間、私の体はぐらりと傾きました。
「いやぁ!」
誰かが悲鳴を上げる声が聞こえました。
パチーン!
先生は続けざまに、私の右の頬も打ちました。体が、また傾きました。
パチーン!
私が姿勢を直したその瞬間、三発目が左の頬に飛んできました。続けて四発目。
パチーン!
四発目は、頬から少し逸れました。唇が、少しだけ切れました。唇をなめると、鉄のような味が、口の中いっぱいに広がりました。
パチーン!
「あぐっ・・・」
五発目を打たれた時、私は初めてうめき声をもらしてしまいました。口元を拭うと、手の甲に血がついていました。
「いやぁ!」
「やめて・・・」
今度は何人かの部員が悲鳴を上げました。もっとも、私はずっと先生の方を向いていて、それが誰かは分からないのです。
パチーン! パチーン!
「うぐ・・・あっ・・・」
先生は休む間もなく、六発目、七発目を打ち込んできました。この頃になると、私はうめき声をこらえることができなくなっていました。
(痛い・・・痛い・・・早く終わって・・・!)
心の中で叫びました。
パチーン、パチーン!
「うぅ・・・あっ・・・!」
平手打ちが頬に命中する度に、私の乳房が、小さいながらぶるんと揺れました。何だかそれが妙にいやらしくて、恥ずかしくて、ビンタのせいだけじゃなく、顔が熱くなってきました。乳房の先端のピンクの部分も、また少し大きくなってきているようです。
(いや・・・いやぁ・・・)
そして、十発目。
パチーン!
最後の一打が右の頬に当たった瞬間、私は膝から畳の上にがくっと崩れ落ちました。
「いやぁ・・・!」
また、悲鳴が上がりました。
その時、私は初めて部員のみんながどんな様子なのか分かりました。
ほとんどの部員は、泣いていました。肩をかすかにゆすってすすり泣いている人もいれば、嗚咽をもらしている人もいました。
蒼井さんは目を真っ赤に腫らして、しゃくり上げて泣いています。
十発の平手打ちを打たれて、私は頭がふらふらしていました。だから、その光景を見て何かを考えることは難しかったです。
ただ、こんなふうに思っていました。
(みんな・・・あたしのこと・・・心配してくれて・・・ありがとう・・・)
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