体罰
ドロップアウター:作

■ 16

 先生は、視線をさらに下の方に向けました。
「・・・さっきも見えてたんだけど、あなた・・・アソコの毛がまだ生えてないのね・・・ワレメがはっきり見えちゃってるじゃない・・・産毛は少しあるかな・・・」
 涙がどっとあふれてきました。声を上げる代わりに、私は泣きました。
(先生・・・ひどいよ・・・いくらなんでも・・・こんなこと言うなんて・・・)
 ずっと気にしていた体のことを、しかも部員のみんなの前で言われて、私は打ちのめされた気分になりました。これも、罰の一環だというのでしょうか。
 先生は、私をからかって楽しんでいるだけなのかもしれない。長い時間罰を受けてきて、私は初めてそんなふうに思いました。
 パンツ一枚で正座させられ、頬に平手打ちをされ、今はさらにパンツまで脱がされて全裸になっています。考えてみれば本当に屈辱的で過酷で、今まで耐えてこられたのが不思議なくらいです。
 でも、私はそれを、自分が犯した過ちの償いと考えて、どんなに恥ずかしくても、痛くても、歯を食いしばって耐えてきました。
 さっき先生が言った、「私だって好きであなたを痛めつけているわけじゃない」の言葉を、私は信じていました。確かにその時は、早く罰を終わらせて欲しかったので失望しました。でも後になって、先生もちゃんと私のことを考えて罰をしているんだ、というふうに思えました。
 でも、今の先生は、私をいじめて楽しんでいるようにしか見えません。それなら私は、今まで何のために、過酷な体罰に耐えてきたというのでしょう。
「うぅ・・・うぅ・・・ひっく・・・ひっく・・・」
 私は、おえつをもらしながら泣きました。まるで、幼い子供みたいに。
 もう、緊張の糸がすっかり切れてしまいました。私にはもう、耐える力は残っていません。まだ、罰が残っているというのに。
 後ろ手に縛られているので涙を拭うこともできません。私はうつむいて泣きじゃくりました。
「うぅ・・・ひっく・・・ひっく・・・」
 涙の雫が次々に落ちてきて、おへその辺りや足の甲を濡らしました。
 佐伯先生は無言のまま、床に置いていた三十センチ物差しを取り上げました。それが、私への体罰の最後の「道具」になるみたいです。
 先生は、また怖い顔になって言いました。
「蓮沼さん・・・泣いている場合じゃないわよ・・・まだ・・・罰は残っているんだから・・・しっかりなさい!」
 悔しいけれど、この状況では先生の言う通りにするしかありません。私は泣くのをこらえようとしました。
 何とか落ち着いて、私は二度、深呼吸をしました。
 もう一度、痛みに耐える心の準備をしなければなりません。私は、体を固くしました。
「はい・・・お願い・・・します・・・」
 もう、どうでもいいから早く終わらせて欲しい。終わりさえすれば、この苦しみから解放されるのです。
 まだ涙は完全には止まっていませんでした。でも、息づかいはだいぶ普通の状態に近づいています。
 先生は無言のまま、また少し私に近寄りました。
 そして、何も言わずに物差しを振り上げました。
 私は一瞬、目をつむりました。


 パシッ!
「ツッ・・・」 
 パシッ!
「うっ・・・」
 一発目、二発目が、私の小さな肩の両側に飛んできました。竹の物差しは思ったより堅くて、思った以上の痛みを感じました。
 続けざまに、次が飛んできます。
 パシッ! パシッ!
「うっ・・・うぅ・・・」
 今度は、背骨の部分を二回打たれました。焼けるような痛みを覚えました。見えないけれど、たぶん私の背中には、赤い線が二本できていると思います。
 全裸の格好で、後ろ手に包帯で縛られた私はされるがままでした。少しうつむいて、体をかたくして、次々と襲ってくる痛みにひたすら耐えるだけでした。
 私は、まだ泣いています。なかなか涙をこらえることができません。痛いから、ではありません。今の自分があまりにも惨めで、悔しくて悔しくて仕方なかったのです。
 パシッ! パシッ!
「うっ・・・ぐっ・・・うぅ・・・」
 今度は、左右の二の腕に物差しが振り下ろされました。
 佐伯先生は、叩く箇所によって、私の前に立ったり後ろに立ったりと立つ位置を変えています。
「いやぁ・・・」
「もうやめて・・・!」
 部員の何人かが、また泣き声を上げています。
 私が本当に苦しそうにしているから、いたたまれないんだと思います。さっきみたいに、唇をきゅっとかみしめてこらえることができれば・・・でも、私は本当にボロボロで、立っているのがやっとです。もう、弱々しく泣き声を上げることしかできません。
 佐伯先生は、また私の正面に立ちました。そして、私のおなかに向かって物差しを振り下ろしました。
(えっ・・・そんなところも・・・)
 パシッ! パシッ!
「あぐ・・・うっ・・・!」
 私が驚く暇も与えず、先生は私のおなかを続けざまに二度打ちました。
 今まではわりと丈夫なところを打っていたのに、今度は弱いところも打ってきました。
(怖い・・・全身・・・叩かれる・・・!)
 私は恐怖を感じました。

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