売られた姉妹
横尾茂明:作

■ 仕掛けられた罠4

次の夕方、佐伯は携帯電話の着信記録を調べ、あの少女に電話をかけた。
「もしもし、携帯キャッシングのオリオンですが園部さんのお宅ですか」

「お嬢さん…審査の結果、40万はお貸しすることが出来ます、これからお金を持って伺いますがよろしいでしょうか…」

電話の向こうで嬉しそうな少女の声が返ってきた。

佐伯はハンドルを握ってほくそ笑んだ…(審査か…俺もよく言うぜ…クククッ)

(さてと…どう料理するかだ…まっ、あの分じゃ金の回収は無理とみた…)
(金利30%で3ヶ月くらい様子をみるか…どうせ利子も払えんだろうから…さらに貸す)
(半年もすりゃ首も回らんわなー…母親の入院先を調べたら末期と聞いた…残るのは借金ばかりときたもんだ…あとはあの姉妹を並べてやりたい放題かー…クククッもうチ○ポがいきり立ってきやがった!)

佐伯は少女に金を渡し、借用書に印鑑を貰い契約書を渡した。
少女は見ても分からぬ分厚い契約書を眺め、3月後には必ずお返えししますと頭を下げた。

少女は佐伯に電話をする前に市内のあらゆるキャッシング会社を訪れた…しかし全て審査で断られた、収入のない高校生に金を貸すローン会社など無い事をこの時少女は知った…、途方に暮れた少女は帰り道に電柱に貼られた佐伯の「携帯キャッシング」というものを知った。
(多重債務の方でも可…何のことかしら…)
少女はなにやら危険なものを感じたが…今週末にはどうしても40万を病院に振り込まねばならず、思い悩んだあげく受話器をとったのだ……

(あんなに悩んだのに…こんなに簡単に借りれるなんて…でもこれから…どうなるの…)


クリスマスが明日という寒い夕方…佐伯は少女の家を訪れた。
部屋は薄暗く…暖を取るストーブも炬燵もない部屋は凍てついていた。
少女は暗い顔で佐伯を家に上げ…畳に頭をこすりつけ謝りながら泣き出した。

「お母さんが先月亡くなり…高校をやめて働き出したのですが…お給料の殆どは病院の支払いと葬儀の費用で消えてしまって…それと…他にもまだ借金が残ってて…」

「お嬢さん…それはお困りですよねー、分かりました金利分はお貸ししましょう、それと差し出がましいんですが…あと100万ほどお貸ししますから今ある借金はそれで全て清算して下さいな、明日にでも口座に振り込んでおきますから」
「それとストーブぐらい揃えないと風邪をひいてしまいますよ」
そう言って少女の手に5万円をそっと握らせた。
「なーに返却は来年からでも少しずつ返せる分だけで結構ですから…」

少女は泣きながら佐伯の優しさに感謝し…一生懸命働いて来年から必ず返済を開始しますと約した。

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