売られた姉妹
横尾茂明:作

■ 再びの餌食2

「お姉ちゃん…きょう…なにかあったの?」

「ううん…な…何もないわよ…」
「さっ、早く食べて、お姉ちゃん今日はお店休んじゃったから今からお仕事なの」
「今夜は帰れないから朝は自分でお弁当作って行くのよ」

「私たち…もう二人だけだから…頑張って生きていかないとね…」
自分に言い聞かせるように、夕紀は涙を拭いて茶碗を片づけ始めた。

店長にお願いして無理に夕方まで働いた…夜勤を通しての立ちっぱなしのため、さすがに帰り道はふらついた…。

アパートから明かりがもれていた…ドアを開けると雅美が帰っていた。

「雅美ちゃん、すぐにご飯を作るから…遅くなってゴメンネ」
「ううんお姉ちゃんは休んでて、今夜は雅美が作る、お姉ちゃんずーと寝てないんでしょ」

「……ゴメンネ、今夜は聡美に甘えちゃおかな、ウフフ」
「ご飯食べたら一緒にお風呂に行こうよ、それから今日は雅美と一緒に寝てあげかな」

「お姉ちゃんいいの?、雅美…お姉ちゃんと一緒に寝れるなんて…嬉しいな」


次の朝、妹を送り出してから机の引き出しにしまってあったあの男が描いた地図を取り出した。
(あっ…近くなんだ…歩いて20分くらい…)

夕紀は逡巡した…またあの男に恥ずかしいことをされると思うと鳥肌がたった、しかし行かなければどんなに怖いめにあうのかを考えると…途方に暮れた。

さんざん迷ったあげく…10時にアパートを出て地図を頼りに歩き出した…。

少し汗ばむくらい歩いたころ…そのマンションは有った。
(なんて素敵なマンションなのかしら…)

エントランスから左の回廊に歩き、突き当たりの金色に縁取られたプレートデスクを見ると入居者の氏名が書かれた釦が有り、壁の上の方にはカメラも有った。
佐伯 守と描かれた釦を押し暫く待つと右の扉が静かに開いた。

もう一度ネームプレートに描かれた7−12という文字を覚え扉を抜け少し歩いてエレベータに乗る…7階を押して目を瞑る…(あぁーとうとう来ちゃったヨー)

夕紀は震えはじめた…あの光景が頭をよぎる、太くて醜いチ○ボ…不潔な臭い…。

ドアの前に佇む…チャイムを押す指先が無様に震えるのを止められず逃げ出したい衝動に駆られるが…踏みとどまった。

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