売られた姉妹
横尾茂明:作

■ 妹の場合1

お昼休み、先生がそっと近寄り…辺りを覗いながら雅美の手にメモを握らせた。
メモには…「公衆電話の前に4時」とだけ書いてあった、雅美はすぐにメモを細かく破り…ゴミ箱に捨てた…、誰かに見られていないか辺りを見回す…。
そのとき…友達の美由紀と目が合った…。

美由紀が興味ありげに寄ってくる…
「今、先生となにをしてたのよ…」
「うぅん…掃除当番の順番のこと…聞いてきただけだよ…」

「嘘…先生から…何か手渡されたの…私…見たもん…」
「何でもないよー…」

「雅美ちゃん…私…佐藤先生が大嫌いなの…だって私の胸をイヤラシイ目でいつも見るんだから…」

「美由紀ちゃんの胸…大きいからだよ、ほらこんなに大きいんだもん…男子が時々見てるの私も知ってるよ」

「ウフフ…そーかしら、私のってそんなに大きいかナー…」
「でも…雅美ちゃんの方が大きくて形いい…みんな言ってるよ…最近、雅美ちゃんすごく綺麗になったって…もう…大人みたいだってね…」

美由紀は言うだけ言い…自分の胸を見ながらニコニコして席に戻って行った…。
雅美は友達のたわいなさに微笑んだ…(みんな…幸せそう、お家に帰ればおやつとか…家族の団欒とかが待ってるんだろうな…)

雅美から見れば…クラスの女の子はみんな幼いと感じた、自分のように先生の性の快楽のため、あんな恥ずかしいことされて…そんな恥知らずな女の子がすぐそばにいるなんて…誰も知らないし…想像も出来ないだろうな…。

(私だって皆と同じ様に両親が揃っていたら……お金が無いばかりに……)

雅美は一旦家に帰り…すぐに銭湯に行き躰を隅々まで洗った…。
母親に「友達の家で勉強してきます」と置き手紙を置いて普段着で家を出る…。

母の紀子は最近…夜おそく帰ってくる雅美を訝しんだ…。
「友達のお宅にご迷惑がかかるというのに…どうしてご飯前に返れないの」と窘めるが…友達のお母さんが食べていきなさいって言うから…しかたなくと雅美は嘯いた。

遅く帰った日は、決まって雅美の顔色は曇っていた…放心しているときもあれば…口も聞かず部屋に直行し、泣いていることも有った…。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊