売られた姉妹
横尾茂明:作

■ 妹の場合9

阿部川の水音が急に大きく聞こえ…雅美は自失から我に返った…。
アパートの階段を駆け下り…ここまで走ってきて…過去の記憶に彷徨っていたのだ…。
姉が男にされていた行為を見て…封印したはずの羞恥の記憶を呼び起こしてしまった。

(先生が逮捕されたあの日から…生きた心地はしなかった…佐賀の友人宅で逮捕…)
(その友人があのビデオを持っている…警察にもしあのビデオが渡ったら…)
(毎日ビクビクして暮らしてた…もしお母さんや姉にあの恥ずかしいビデオのことを知られたら…もう…生きていけない…)
(でも半年過ぎても何もなく…一年経ったら記憶からスッポリ消えてしまった…)


(封印したはずなのに…)
(それが…二年経って、鍵穴から見えた恥ずかしすぎる姉の姿で…)

あの頃…お姉ちゃんは15才…私は12才……12才であんな恥ずかしいこと教えられ、男の歓ばせ方を叩き込まれた…。

お姉ちゃんは高校受験で私のことなど全く眼中に無く…私が泣いてても、お友達と喧嘩しちゃダメよって頭を優しく撫でるだけだった…。
何にも知らない純粋無垢なお姉ちゃんは私の天使…だからお姉ちゃんにはこんな恥ずかしい世界が有ることを…絶対知ってほしくなかったのに…。

お金がないばかりに…お姉ちゃんも私と同じように堕ちていく…。
男に騙され…躰を無理矢理開かされ…あんな恥ずかしい仕打ちを…。
(私達…これからどうなっていくの……)

ベンチから見える安倍川堤の向こうはもう薄暗く…家々の明かりがもれ始めている…。
(もう…オジサン…帰ったよね……)

雅美は立ち上がり…アパートの方にゆっくりと歩き出す…。


「ただいま…」

「あっ、お帰り…遅かったのね、もうご飯の用意出来てるから着替えてらっしゃい」
(お姉ちゃんは…いつもの通りだ……あんな酷い事されて泣いてたのに……)

雅美は夕食が済み…部屋で数学の復習をしようと教科書を開いたが、なかなか数字が目に入らない…、どうしても昼間の鍵穴から見た姉の姿が思い出されてしまう…。

(オジサン…黄色い太い棒をお姉ちゃんのお尻に差し込んでいた…)
(たしか…押し入れの箱の中に何本も有った棒…だと思う…)
(先生が言ってた…アナルSEXは肛門を開くための拡張棒がいるけど…俺のは細いから、そんなことはしなくていいんだ…って)
(お姉ちゃん…アナルSEXされてるんだ……あの天使のようなお姉ちゃんが…)

雅美は…忘れたはずの羞恥の記憶を少しずつ…震えながら思い出していく。

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