内側の世界
天乃大智:作

■ 第7章 鬼が島3

 ピラミッドの正面に見える入り口から中に入った。入り口には、広い石造りの階段があった。
巨大なピラミッドであった。エジプトのピラミッドと違い、四角錐の三角形の四つの面は、平らであった。巨大な石の積み上げではない。
近くで見ると、それは、想像以上に巨大であった。
僕たちは、階段を使わずに直接、入り口に向かった。海底を浮遊しているのである。初め、下に向って潜った様に思われた。
長い回廊を進んだ。
きょしちゃんの手明かりに照らされた石造りの、狭い回廊は、息苦しかった。海藻が揺れ、永劫の時に積もった海底の埃が舞った。岩壁には貝殻が、びっしりと張り付いている。巨大なウツボが、大きな口を開けて通り過ぎる。
今にも崩れて来て、押し潰される、そんな閉所の恐怖がそこにはあった。
海底である。
海底の沈黙が、そこにはあった。
この防御シールドは、その圧力に耐えられるのか―そんな事まで、心配になってきた。
「キーボー、大丈夫だよ」
 僕にとっては、気休めであった。
長い回廊は一直線に、ピラミッドの中心に向っている様であった。そして、突然、回廊が行き止まりになった。
 きよしちゃんが、上を向いた。そこに、闇の中に黒く蟠(わだかま)る、更に黒い闇があった。
回廊は、上方へ曲がっていたのであった。上に向かうと、水面が見えた。
水面から顔を出した。
そこには、海水はなかった。
濃い湿気を含んだ、重たい空気であった。このピラミッドが海底に沈んだ時、そのままの空気が密封されている様であった。
太古の空気である。何千年、何万年前の空気なのかも知れない。
そう思うと、なんだか不思議であった。
ピラミッドがちょうど、蓋の役目を果たしているのだろう。
暗闇であった。
きよしちゃんが、右手をかざし、光を放った。
周囲が照らし出された。
完全な沈黙であった。
深海の水圧と、ピラミッドの圧力が、僕の体にのし掛かってくる様に思われた。
僕は、息苦しさを覚えた。
意識せずに、呼吸が出来なかった。
「キーボー、大丈夫か? 」きょしちゃんである。
僕は、荒く息をしながら、頷(うなず)いた。
彫刻や壁画、そして、象形文字か見える。
きよしちゃんの手明かりに魚達が、寄って来た。
僕ときよしちゃんは、水から出る事にした。
安全だと確認したのである。
そこは、巨大なピラミッドの内部、巨大な空洞であった。
洞窟の奥に、祭壇か、神殿のようなものがある。
「古代の人々は、ここで鬼神に生娘の生贄を捧げ、鬼神崇拝したんだよ」
「鬼神は、生贄を喰らうのか? 」
「いや、そうじゃない。古代の男達が、自らの一番大事なものを捧げたんだ。別に鬼神が要求した訳じゃない。人間が勝手にした事なのさ」
「・・・」
その時、僕の脳裏に何かが反応した。そして、映像が浮かび上がった。僕の脳味噌に、強い光が照射され、その光の粒子が、一つずつ僕の脳細胞に溶け込んで行く様な、そんな感覚であった。
それは、一瞬の事であったが、鮮明にイメージした。

 目の前の祭壇を覆うように、松明が点されている。
祭壇の周りには、半裸の巫女(みこ)が、妖艶なダンスを踊っていた。白い手が艶めかしく突き出され、ふくよかな太腿が動く。
若い女たちである。
巫女たちが、松明の火に照らされ、肉体の影が浮かび上がる。女体の美しい曲線が、強調されていた。
情熱的な、挑発的な踊りであった。
その上、濃密な香が焚かれていた。その匂いは、欲情の匂いであった。
腰が実に器用に、くるくる回るのである。丸い腰が、フラダンスの様にくるくる回る。剥き出しの乳房を揺らし、腰を揺らし、頭を揺らした。その長い黒髪も、頬にまとわり付き、黒い瞳が濡れている。
白い手足が妖艶に動いた。白い両手が、頭上で交差する。女体が、反り返る。白い顎(あご)を突き出した。そのまま、ブリッジを架ける。
イナバウアーであった。乳房が食み出し、女陰の形が浮き彫りになる。
体勢が変わる。
肘のところで曲がった白い腕が、色っぽく挙げられ、旋回する。躍動する太腿が交錯し、離れ、白い足が地を蹴った。両脚を大きく開く。
腰に巻き付けられた小さな布が巻き上がり、太腿の付け根まで見える。その下は、何も付けていないのであった。
乳首を隠した小さな布が、その下で激しく動く、なめらかな女体から、外れた。小さな布地から、乳房と乳首が、食み出す。
巫女たちは、気にしていない様子であった。
女体が、汗ばむ。
女体の美しいシルエットが浮かび上がり、乳房の曲線とヒップの曲線を強調する。
尖った乳首が上を向く。
突き出した尻を、更に突き上げる。そのまま、片足を反らせて持ち上げる。頭の上で足首を掴んだ。
ビールマン・スピンであった。白鳥の様であった。
腰の布は腹まで上がり、胸の布は、腹まで下がった。秘部が、歪んで露になる。二つの尻肉が、限界まで開く。張り詰めた乳房の上の乳首が、尖る。
降ろした脚を伸ばしたまま、前方から垂直に挙げる。
美しい脚線美であった。
恐ろしく柔軟な肉体でもあった。
祭壇の周りで、フィギアスケートを舞っているように見える。
巫女は、全部で12人居た。
12人の女が、艶かしい舞を踊った。
目は空ろで、何か遠くを見ている様でもあった。
催眠術に掛けられた人の顔か、夢遊病者の表情の様であった。
何かがおかしい。
目に意思が感じられないのであった。
どこからともなく、男たちが現れた。
女の綺麗な足を前から上に上げさせたまま、男が抱き付いた。正面から、である。大きくなった男根が、すっぽりと開け放たれた女性性器にはまる。
後から上に足を上げていた女は、後から犯された。勃起したペニスが、ずぶり、と秘孔に埋まる。
前から、別の男が、乳房にしがみついて舐めまくる。
足を下げた巫女に男が後ろから近付き、前に手を回した。乳房を愛撫する。激しい欲望を剥き出しにした手の動きであった。
巫女は身を反らした。乳首が男たちの掌の中で勃起する。
精神が伴わない、肉体だけの反応の様であった。男達も、目の前の女達を見ている様子はない。それでも、男根は、ぎん、と上を向く。肉欲のみであった。
「あああーん」女たちが、甘美な声音を上げる。
そして、腰に巻き付けられた布が剥がれた。白い内腿が、根元まで露になった。
全裸になった女を見た男たちが、更に欲情する。男根が大きくなる。
若い巫女は白い脚を躍らせて、発情した。目が、とろん、となっている。唇から舌を出して、喘(あえ)いだ。
尻を突き出して、半身に構えて身悶えた。内腿まで流れ出した熱い液体で濡れている。形の良い乳房が、プルンプルン揺れる。
次々に女たちが、引き倒された。
男は女の腰を持って、激しく腰を前後に揺する。ぐちゅぐちゅ、と卑猥な合奏が始まる。
12人の男が、12人の巫女とセックスを始めた。
甘い吐息が漏れる。
「ああーん。」   「あんあんあん。」   「うっふん。」
    「い、いーっ。」   「あああああん。」   「はー、はー、はー。」
祭壇は女の体臭に包まれた。
様々な体位で結合された。
男の尻が動き、女の白い脚が上を向く。
その脚が激しく揺れた。
その中心に祭壇は位置している。
祭壇の上に、全裸の少女が横たわっている。
まるで眠っている様であった。
綺麗な白い乳房は上を向き、腰がスッと括(くび)れ、長い脚を伸ばしている。
その美脚の間に、黒い茂みが火に照らされた。

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