優等生の秘密
アサト:作

■ 11

 勉強会が始まってすぐに行われたのは、今週一週間で勉強した範囲の復習だった。大体は京介がポイントを説明していたが、時折、聡子や加藤が補足説明をしていた。
「倉敷、ついてこられるか?」
「平気よ。このぐらい……」
 自分の事を気に掛けたのが加藤だったのが気に食わなかった。夏美は少し苛立った様子で、ノートにポイントを書き込んでいく。だが、内心は、普通クラスと特進クラスの授業進度の差に、驚き戸惑っていた。
(……こんなに授業の進み方が違うんだもん……毎年、編入試験に合格者がいないのも納得だわ……)
 一応、普通クラスから特進クラスへの編入試験は毎年行われるが、合格する人間はほとんどいない。5年に1人いれば多いほうである。それには授業進度の圧倒的な差という理由があった。仮に、合格できたとしても、授業についていく事が困難で、大体の者が特進クラスで過ごすことを諦め、1学期の終わりには普通クラスへ戻っていくのだ。
「さて、講義はこの辺にして、テストをするか。」
 京介はそう言って、数冊の問題集を取り出した。そして、ランダムにページを捲り、目に付いた問題番号をホワイトボードに書き記していった。

 1分ほど経って、ホワイトボードは問題の番号で埋め尽くされた。全部で50問ほどあるだろうか。数学から始まり、地理、世界史、現国……あらゆる教科の問題が、それには含まれていた。
「今回は、持ってきていないだろうから、問題集の貸し借りだけは認める。制限時間は50分。秒針が真上にきたら開始だ。」
 言いながら、京介も席についた。それが合図であったかのように、皆、一斉に時計を見つめる。そして、秒針が真上を指すと同時に、ノートに問題を記入し、解き始めた。
(おいおい、まだ習ってねぇぞこの問題……)
 開始早々、貢太は頭を抱えた。普段、真面目に授業に取り組んでいないとはいえ、一応先生の話は聞いていた。だから、既に習った部分か否かは判別できる。明らかにまだ習っていない部分があるのだ。だが、京介も聡子もその問題をすらすらと解いているようだった。
(……あいつら、ホントに只者じゃねぇな……)
 貢太は悩んでいても仕方がない、そう腹を括り、その問題を飛ばし、別の問題を解いていった。夏美の様子をうかがうと、夏美は解ける問題から解いていっているようだった。
(……っと、夏美の事気にしてる場合じゃないか……)
 自分が加藤よりも悪い点数を取れば、夏美がどんな目に遭うか分からない。それを思い出し、貢太は問題集と向き合った。やればできる、本当はやっていないだけ、夏美がそう信じてくれている以上、手を抜くわけにはいかなかった。

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