優等生の秘密
アサト:作

■ 42

「貢、太……っ! お願い、もう、やめて……っ!!」
「これだけ締め付けてきて、そっちだって気持ちいいんだろ?」
 言って、ゆっくりと、抜き差しする。それだけで搾り取られてしまいそうなほど強い快感が、貢太の頭を痺れさせた。
「い、いやっ!! 気持ちよくなんか……うぁあっ!!」
 突然乳首を抓み上げられ、夏美は身体を強張らせた。
「おい、そんなに締めるなよ……っ……すぐ、出るだろ……?」
 眉根に微かにしわを寄せて、貢太は身体を揺り動かし続ける。もう少し、この身体を味わいたい、必死で次から次へと込み上げる射精感に耐える。
「や、やだ……っ!! お願いだから、せめて、避妊してぇ……っ!!」
「ゴムなんか、あるわけ、ないだろ……?」
 言いながら、貢太は夏美の胸を少し乱暴に揉んだ。ついに、夏美の目からとめどなく涙が溢れ出した。聡子の時に気付いたことであったが、女の泣き顔というのは貢太のサディスティックな欲求を刺激するようであった。急に、強い射精感を覚え、貢太はストロークを速めた。
「う、あっ……あぁあっ……だ、めっ!! 貢太ぁっ!!」
 夏美が貢太を拒むかのように、貢太の腰を押し退けようとする。貢太はそれが煩わしく、夏美の両腕を乱暴に掴み、押さえつけた。
「中に、出すぞ……」
 その言葉に、夏美の表情が凍りついた。
「だ、ダメッ!! さ、聡子さん、あのあと、妊娠、したの……っ!! だから……っ!!」
 聡子が、妊娠した。その言葉に、貢太は頭をハンマーで殴られたかのような衝撃を受けた。貢太の身体から急速に力が抜け、押さえつけていた夏美の手を離す。
 夏美は貢太から解放された瞬間、慌てて服装を整えた。そして、力なく立ち尽くす貢太の様子を伺った。
「貢太……?」
「……ったく……コトの最中につまんねぇこと言うなよ……萎えちまったじゃねーか。」
 貢太は大きなため息をついて、すっかり萎えてしまった自身をズボンにしまうと、夏美から顔を背けた。
「つまらない事……!? 貢太、それ、本気で言ってるの!?」
 夏美の手が、怒りで微かに震えていた。ベッドから勢いよく立ち上がると、男顔負けの剣幕で貢太の胸倉を掴んだ。
「つまらない、って、聡子さん、妊娠したのよ!? 貢太にレイプされて!!!」
「だから? 辻野がどうなろうと、お前には関係ないことだろ?」
 次の瞬間、乾いた音が貢太の耳に届いた。それが、夏美が自分の頬に平手打ちを食らわせた音だと気付くのに、少し時間がかかった。
「……最低っ!! 貢太なんか、大嫌い!!!」
 涙を流しながら、夏美は逃げるように貢太の部屋から走り去った。貢太は夏美に叩かれた頬を手で押さえながら、夏美の走り去った方をぼんやりと見つめた。
「……これで、いいんだ……これで……」
 呟いて、ベッドに身体を投げ出した。せっかく特進クラスに入れたんだ、俺みたいな奴にこれ以上関わらせるわけにはいかない。だから、これでいいんだ。貢太は、必死で自分にそう言い聞かせていたが、その目からは涙がとめどなく溢れていた。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊