2009.05.09.

歯  型
02
田蛇bTack



■ 2

≪第三話≫

「えーっ里奈、中学の時に彼氏いたの?」
「うん、いたよ。脳みそのなかだけだけど」
「なんだよ、ただの妄想じゃん。」

枕を寄せ合って、わくわくしながら話はどんどん濃くなっていった。

「ねぇ、ハジメテって…やっぱ痛いのかな?」
「……」
「……」

いよいよ私の苦手な話題になってきた。

「痛くない人もいるよ。私もそうだったし。」
「えー! しぃちゃん…経験者!?」
「え、あ、うん」
「中学の時?」
「まさかぁ! 夏休みだよ。この前の」
「わぁ…」

みんな、憧れているような不思議な表情でしぃちゃんを見つめた。
視線が集中して顔を赤らめたしぃちゃんはしどろもどろに続けた。

「夏休み海に行ったときにね…サーファーと…」
「その日のうちに!?」
「うん…」
「きゃー! やるぅー!」
「ム、ムードがよかったんだってば…ちょっと後悔してるよ。」

「みんな、いつごろハジメテを経験するんだろう…」
「私、中学までは17歳って決めてたけど、いざ17になってみると…ねぇ…。」
「県立行った友達が、クラスの半分ぐらいがもう経験してるとか言ってた」
「まじで…?」

…この話題が終わらない限り開けない。私の背中は冷や汗でじんわりしめってきていた。
私の処女は、犬に奪われたなんて、口が裂けても言えやしない。死んでも隠し通すつもりだ。

「で、処女膜って、ホントに処女にしかないの?」
「…そ、そうらしいね。私、サーファーにアソコ見られて処女だって判断されたし…」

しぃちゃんが経験者らしく言った。みんなのまなざしは更にしぃちゃんに集まりそして自分らをみつめた。

「キャー! じゃあうちらはまだ膜張ってるんだね!」
「そぉいえばしぃちゃん、最近腰が丸くなった気がする」


「「処女膜」」
私にはもうないんだ…。それも、犬に破かれたなんて……。
いやでもまたあの日を思い出してしまった。

「さやか!! どうしたの、その格好!!」
母は私の異様な姿に一瞬ですべてをさとったらしい。体を洗おうとする私の手を引いて、そのまま警察署へ向かった。

「いつ、どこで、なにがあったの?」
「さっき、夕方公園で、犬に襲われました」
「どこを、どういう風に、襲われたの?」
「……」

警察はいやらしいほどコトの詳細を聞いてくる。話したくないことも…遠慮なしに。
私は股間を舐められたこと、ペ●スを入れられたことについていやいやながらも話した。
その後病院に連れて行かれ血液を抜かれ、まだひりひりと痛むアソコを消毒された。

警察に言いたくないことを言ったこと。パンツを脱いで恥ずかしいところを消毒されたこと。それらはとてもつらいことだったけれど、何よりそれからしばらくの間、母が私をあわれみの目でみつめ、ハァっと深いため息をつくことが辛かった。

「ごめん、もう寝るね。」
私は修学旅行の話題もそこそこに、さっさと布団にもぐった。
寝付けないのは当然だった。まだ会話が聞こえてくる。

「私、お婿さんになる人にバージンをあげたいなぁ…」
「うー、私ははやくエッチしてみたいな…」
「ねぇ、男の人のアレって大きくなるとどんぐらいになるの?」
「やだー! それはイタイ! 絶対そんなものはいらないよ」
「でも同じ道から赤ちゃんが生まれるなら、慣れる必要はあるんじゃないのかなぁ…」

それからセックスの話題から逸れて、出産の話になったところまでは覚えているけれど、いつの間にか私はねむっていたらしい。


≪第四話≫

ヒロ君…?
夜の闇がぼんやりと青く燃えていた。その中に私とヒロ君がふたりポツンといる。
ヒロ君は何もしゃべらなかった。ただ、二人とも裸だった。裸なのに恥ずかしくない。きっと裸というより、うまれたままの姿、というほうがしっくりくるような気がした。

ヒロ君の股間は燃えるように赤く黒く、そしてまっすぐ天に向かって勃ち上がっていた。心なしか、ヒロ君の呼吸が軽く乱れている。

「これが…勃起…なの?」

私はヒロ君のそれにおそるおそる触れてみた。思っていた以上にカタイ…。
先のほうが三角錐のようにとがっているのはきっと、女の子のアソコに入れやすいために進化したからなのかな…と、ついつい学術的に考えてしまう。

両手で包みこむ。血管がうかびあがり、ドクドクと波打っているのがわかる。
見上げるとヒロ君は優しく微笑んでいた。

そっと口に含むと、かすかにヒロ君の体が痙攣した。そのままのどの奥へとヒロ君を誘導し、今度は強く吸いついてみた。ヒロ君の体がひくひくと動く。ヒロ君の顔は快感に歪んでいるように見えた。

視線がぶつかった。思わず口に含んでいるものを出してしまった。
これだけ舌をつかってしごいてもまだヒロ君のそれは元気に勃ちあがったままだ。

ヒロ君は、私の肩に優しく触れ、そのまま覆いかぶさってきた。
今度は俺の番だよ、と言わんばかりにヒロ君は舌を出し、私の足の甲を舐めはじめた。
足の甲からふくらはぎ、すね、膝の皿、裏、太ももをゆっくりとあがり、もう熱くてねばる液体がしたたる性器をいとおしそうに舐めはじめる。
…私が一番感じるところをはずさずに…。

私の呼吸がどんどん乱れ、心臓が音をたてて鳴る。その切なさに全力であえぎたくなる心を抑え、私は声を押し殺して鳴いた。

ヒロ君の舌はへそ周辺をなぞり、脇にを通り首筋へ。一瞬キスをしてくれるかと思ったが、期待ははずれて、乳房のほうへおりていった。

右乳房。歯型の跡…。
ヒロ君はそれにすぐに気付いたようだった。延々と私の右乳房をみつめる。
そしてその舌はゆっくりと歯型に沿って動き始めた。

「あ!!!!」

自分の叫び声で目が覚めた。時計を見ると朝7時。起床時間は6時半だから、かなりの寝坊だ。

「さやか、だいぶうなされてたね」
里奈が面白そうに言う。一瞬背中に冷たいものが走った気がしたが、ここは笑ってごまかすことにした。
「悪い夢を見ていたのよ。」

そう言った瞬間、体に違和感を感じた。どうやら寝ている間にブラジャーがとれてしまったようだ。
あわててつけなおそうとしたとき、右乳房が目に入ったが、なんと歯形がきれいになくなっていた。
驚いて上半身裸になり、鏡を見てみたが、やはり、ない。
奇跡が起きたようだった。

「ほら、さやかも里奈も、もう朝ごはんの時間だよ、いそげ!!」
「わー! 大変!!」

しぃちゃんの言葉に、みんなはバタバタと部屋をでていき、そこにはつけっぱなしのテレビだけが取り残された。


「昨晩遅く、神奈川県C市の路上で、ひき逃げ事故が起こりました。発見次第、すぐに救急隊員がかけつけたとのことですが、被害者の男性はすでに死亡していました。死亡したのは県内高校二年生、S田ヒロさん、17歳です。…」

≪完≫



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