2004.04.10.

保健室の闇
〜女子生徒の告白〜
03
ドロップアウター



■ 2

 血液検査の後、私はお医者さんに指示された通り、右側のドアから外に出て、そこから外階段を上がっていきました。
 迂闊にも、私は上履きを持ってくるのを忘れてしまっていました。外階段は土足禁止です。靴下をはこうかなとも思ったのですが、汚れてしまいそうだったので、結局、裸足のまま保健室に行くことにしました。
 この日は天気が悪く、朝から雨が降っていました。半袖シャツにハーフパンツだけの姿で少し肌寒かったけれど、我慢しました。
 渡り廊下を通って校舎の二階に入ると、ざわめきが聞こえてきました。たぶん、順番待ちの生徒が集まっているんだなと思い、私は少し足早に歩き出しました。

 廊下の角を曲がると、私が思ったとおり順番待ちの子が五、六人くらい集まっていました。けれど・・・私はその光景を目の当たりにして、呆然としました。
 順番を待つ女の子達はみんな、裸になっていたのです。

 保健室の前で検査の順番を待つ女の子達の光景は、あまりにも異様でした。みんな、上は完全に裸で、下もパンツしかはいていないのです。少し近づいてみると、その子達の足下に、体操服のシャツやハーフパンツが、畳まれて置かれているのが分かりました。
 事前に内科の診察をするという話は聞いていたので、肌を露出する覚悟はしていました。けれど、まさかハーフパンツまで脱がされることになるとは思ってもいませんでした。それも、廊下で。いくら女子校とはいえ、いくらなんでも理不尽だと思いました。と同時に、これから自分も同じ目にあうんだと思うとぞっとして、この場から逃げ出したい気持ちになりました。
 それでも何とか、重い足を引きずるように私はその場に辿り着きました。パンツ一枚の格好にされた女子生徒達は、胸を隠す姿勢で、黙って座り込んでいました。その時私は、さっき聞こえたざわめきは、裸になるように指示された時の戸惑いの声だったんだと理解しました。

 私も、脱がなくちゃ。そんなふうに思いながら、私はシャツの裾に両手の指をかけました。でも、その後なかなか体が動かないのです。体重測定の時みたいに、割り切った気持ちにどうしてもなれません。
「先生が、服を脱いで待っていなさいって」
 気が付くと、順番待ちの女子生徒の一人が私に話しかけていました。
「少し恥ずかしいけど、シャツとハーフパンツとブラを取って、パンツ一枚になりなさいって」
「はい・・・」
 けれど、私はそう返事するのがやっとでした。シャツの裾をつかんだまま、しばらく突っ立っていました。
 そしてこの後、私の動揺に追い打ちをかけるような事実が知らされたのです。

 しばらくすると、保健室のドアが開いて、診察を終えた女子生徒が三人、やはりパンツ一枚の姿で出てきました。その様子を見て、私は驚きました。彼女達は三人とも、涙ぐんでいたのです。
 その理由の一端は、間もなく明らかになりました。
 女子生徒に続いて、養護の川原先生が出てきました。先生は私を見るなり、冷たい口調で言いました。
「何してるの。早く脱いでパンツ一枚になりなさい」
「あの・・・」
 胸の動悸を抑えながら、私は言葉を絞り出しました。
「今、内科の診察をしてるんですよね?」
「ええ、そうよ」
「あの、尿検査ってしないんですか?」
 これは、最初に体育館に入った時からの疑問でした。尿検査は普通、最初に紙コップに尿を出し、それをスポイルのような容器で採取します。でもこの日は、来た時からずっと、紙コップさえ渡されていませんでした。
 先生は、首を横に振りました。
「いいえ。内科の診察と一緒に、この中でするのよ」
「でも・・・保健室の中にトイレってありましたか?」
 その時、先生は一瞬気味の悪い笑みを浮かべました。私は背筋が寒くなりました。
 それから、先生は気の毒そうな口調でこう言ったのです。
「今日はね、いつもの尿検査とは違って、お医者さんにオシッコを直接取ってもらうのよ。だから少し辛いかもしれないけど、我慢しようね」
 そう言って、先生は私に検査カードを渡すように促しました。私からカードを受け取ると、順番を待っていた三人に中に入るように言い、自分も部屋に引っ込みました。
 私はすっかり混乱していました。尿をどんなふうに採取されるのか、いろいろ思いを巡らせました。まさかアソコに紙コップをあてがわれてオシッコをさせられるとでも言うのでしょうか。そんなこと、考えるだけでも気が遠くなりそうです。

 この時の私の想像は、半分当たり、半分外れました。ただ、それで良かったのか、悪かったのか、それは今でも分かりません。

 三人が保健室に入ったことで、順番を待つのは私も含めて二人に減りました。もう一人の子が裸なのに、私がいつまでも服を着てはいられません。私はとうとう、覚悟を決めました。
 もう一度、シャツの裾に指をかけて、今度は思い切って上に引き上げました。ためらわずに頭から抜き取って、足下に放り投げました。続けてハーフパンツを脱いで、ブラジャーとパンツだけになりました。下着姿になった瞬間、それまで衣服に覆われていた素肌が一気に外気にさらされて、今まで以上の肌寒さを感じました。でも、これで終わりではありません。最後に、腕を背中に持っていきホックを外して、ワイヤーを肩から外すようにブラジャーを取りました。
 脱衣を終えると、私はそのまま床に座り込んで、脱いだ服を畳みました。ブラジャーはシャツの中に入れて丸め、畳んだハーフパンツの上に置きました。そうすれば少しは恥ずかしさも抑えきれるかなと思ったのですが、無駄な努力でした。
 やがて、少し離れたところから足音が聞こえて、それが段々近づいてきます。検査を受けに体育館から上がってきた女子生徒達だということが分かったのですが、私は「来ないで」と叫びそうになりました。
 その足音が近くまで来たので顔を上げると、その子は私のクラスメイトの冬美ちゃんでした。彼女は私の格好を見たせいか、不安そうな表情を浮かべていました。
「服脱がなきゃいけないの?」
 冬美ちゃんの問いかけに、私は黙ってうなずきました。すると、素直な彼女はその場で服を脱ぎ始めました。
 冬美ちゃんは私と同じ格好になると、私の側に座りました。教室ではいつも一緒におしゃべりをしているけれど、状況が状況なだけに、話をしようという気にはなれません。二人ともただ黙ったままで、この重苦しい時間を過ごしていました。

 そうして、三十分くらい時間が過ぎたでしょうか。順番待ちの生徒が六人に増え、私が裸でいることに慣れ始めた頃、保健室のドアが開き、検査を終えた女子生徒が三人出てきました。この時も、三人とも涙ぐんでいます。私はますます不安になりました。
 三人に続いて、川原先生が外に出てきました。
「平島絹代さん、水沢真智子さん、小川冬美さん、三人は中に入りなさい」
 先生は私達三人の名前を読み上げました。
 私は不安な気持ちを胸の中に抱きながら、重い腰を上げて、二人と一緒に保健室に入りました。



▲ BACKNEXT ▼



この小説は、完全なフィクションであり、実在の人物、
団体等と何の関係もありません。
この小説へのご意見、感想をお寄せください。
感想メールはcopyright下のアドレスまで


NEXTBACK TO NOVELS INDEX


18's Summer : 官能小説、恥辱小説とイラストの部屋